第98話 電撃! スピード対決!
「ビビエル……」
ニーナは呟いた。
ビビエルはニーナ達の元へ近づいてくると彼女たちに銃を向けた。
「お姉ちゃん。降参して」
ビビエルはそう呟き、2人はしばらく見つめ合った。
ニーナは黙ってポケットの銃に手を掛けたが、ビビエルはすかさずその手を目掛けて撃ち、そのまま彼女の銃は飛んで行ってしまう。
「今のうちだったら殺さないでおいてあげる」
「殺す? あなたは何故サイファーの側に付いたか忘れたの? 仲間が死ぬのが見たくないからでしょ?」
「そうだよ。でもこの数か月で私も変わったんだよ」
ビビエルはそう言いながらベルトに手を懸けた。
彼女はベルトを起動するとその体から電撃を放ち始める。
そして瞬時に移動してルアルを人質に取った。
「ルアル!!」
「さあ、あなた達の拠点の場所を教えて。教えてくれたらこの子を開放してあげる」
ビビエルはルアルに銃口を押し付ける。
「ビビエル。あなたはそんな人間じゃない。サイファーに騙されてるだけ。ルアルを解放して」
「いいや。この状況でサイファーに逆らうお姉ちゃん達の方が間違ってる。彼に勝てる人間なんてこの世にいないんだよ。分かるでしょ? そんな状況で戦っても傷つくだけだって、まだ分からないの?」
「それでも私は諦めたくない」
「だったら、やっぱり私達は敵同士。早く拠点の場所を教えて」
2人はそのまましばらく黙って見つめ合った。
だがその2人の沈黙をルアルが破った。
「忍者を舐めないで。このまま大人しく捕まってると思ったら大間違いだよ」
ルアルはそう言ってビビエルの腕に思い切り噛みついた。
「痛っ!!」
ビビエルは突然の痛みにルアルから手を離してしまい、ルアルはそのまま地面に倒れた。
「べ~」
ルアルはビビエルに向かって煽るように舌を見せた。
だがその瞬間、ビビエルはルアルに再び銃を向けるとそのまま躊躇なく彼を撃った。
銃声が人通りの少ない静かな通りに響き渡る。
撃たれたルアルはゆっくりと体を傾けていき、倒れたまま動かなくなった。
ニーナもアルルもしばらく何が起きたのか分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「ニーナ!! 持ってきた……よ?」
そんな声を挙げながらどこからかやってきたクリスが駆け寄ってきたが、倒れたルアルの様子を見て口を塞いだ。
「これで分かった? 私が敵だってこと。そして言う事を聞かなければ次はあなた達がこうなるって事」
ビビエルはルアルを指さしながら言った。
ニーナはそんなビビエルに怒りが抑えきれず、思わず掴みかかった。
アルルは現実を受け入れられず、その場で泣き崩れた。
「ビビエル。あなた、自分のしたこと分かってる?」
「分かってるよ。私は自分の意志で、彼を撃った」
「何故? その必要はなかった。そんなことしなくてもルアルを捕まえることくらい簡単にできたはず」
「私はサイファーに信用されてない。だからお姉ちゃん達を追い詰めて有用な情報を得る必要があるの。こうすればお姉ちゃんも私に従う気になるでしょ?」
「残念だけどあなたは大きな選択ミスをした。これで私が従うと思ったなら、逆効果」
ニーナはクリスに向かって手を伸ばした。
「クリス、投げて」
クリスは黙って頷き、手に持っていたベルトをニーナに向かって投げた。
「私のおさがりのベルトだね。でも、私のはもっとグレードアップしてる。そんなんじゃ私に勝てないよ?」
ニーナはベルトをキャッチするとすぐに腰に巻いて起動させた。
ニーナの放つ電撃とビビエルの放つ電撃がぶつかり合う。
「残念だけど、メカニックはあなただけじゃない」
ニーナはそう言ってベルトのギアを上げた。
「ふふっ。スピード勝負だね」
ニーナはそのまま高速移動でビビエルから離れたが、ビビエルはそれと同じ速度で追いかけてくる。
ニーナはビビエルに向かって手を突き出し、電撃を放った。
「甘いね!」
ビビエルはそう言うと一瞬だけさらに速度を上げニーナの攻撃を避けてしまった。
「どう? これがグレードアップした私の力」
自慢げに言うビビエルだったがニーナも負けていなかった。
「グレードアップしたのは自分だけとは思わないで」
ニーナはそう言って地面に手を付けると、彼女の手から放たれた電撃が地面を這うように進んでそのままビビエルに直撃する。
ビビエルはその衝撃によって吹き飛ばされてしまった。
だが彼女は倒れた直後、すぐに起き上がると再び高速移動によって姿を消した。
ニーナも彼女に続いて高速移動で後を追う。
2人は高速で揺れ動く世界の中で殴りあった。
「私はあなたの事だけはずっと信じてた。あなただけは私について来てくれるって。だけど間違ってた」
ニーナは言った。
「もうお姉ちゃんが知ってる私は居ない。私はサイファーの元で変わったの。もう後戻りはできない」
そう言ってビビエルはニーナを殴り飛ばした。
「うあっ!!」
ニーナは地面に倒れてしまう。
そしてビビエルはルアルの傍にいたアルルを突き飛ばすと、そのままルアルを抱え上げた。
「今日の所はこれで見逃してあげる。私も忙しいからね。それに、この子の遺体を持っていけばサイファーも少しは私の事を信用してくれるかもしれないし」
「そんな事させるか!!」
アルルはそう言いながらクナイでビビエルに切りかかったが、ビビエルは瞬時に移動してその攻撃を避けた。
「じゃあね。お姉ちゃん。次会うときは私に勝てるといいね」
そう言ってビビエルはそのまま消えてしまった。
残されたアルル、ニーナ、クリスの3人はただ茫然と立ち尽くし、それぞれに湧き上がってくる感情を必死に堪えた。




