第95話 洗脳解除はできたのか
一方その頃ニーナはいまだ警備員に追いかけられながらバイクを走らせていた。
「アルル、ルアル。そろそろ学園部隊を動かす準備をしておいて」
ニーナはアルルとルアルに連絡した。
彼らはその頃、司令官の姿に変身したまま部下たちに肩を叩かせていた。
「お姉ちゃん! ニーナが準備してだって!」
いつまでもお菓子を食べているアルルに向かってルアルが怒り気味に言った。
「ああ、ごめんごめん。あまりにマッサージが気持ちよくて」
アルルはそう言いながら立ち上がって咳ばらいをすると、声を整えてから叫んだ。
「セントラルシティ中心のビル群に不審人物を見つけたとの報告が入った! 学園魔術部隊、今すぐ出動準備に入れ!」
そう叫ぶアルルに部下たちは複雑そうな表情をする。
「すみません、司令官。学園魔術部隊はすでに出動しています」
「なに!? なんだって!? どういうことだ!!」
「はい。仲間が数人やられたとのことで、緊急を要する事態でしたのですでに出動させています」
「なあんで私に報告しないのだ!! このアホ!!」
アルルは部下をグーで殴った。
「すみませんっ……。一応報告はしたのですが……」
「お姉ちゃんもしかしてお菓子とマッサージに夢中で聞いてなかったんじゃ……」
ルアルは呆れた様子で言った。
「馬鹿野郎!! 今すぐ全員連れ戻せ!!」
アルルは威厳を示そうと机を叩く。
「そ、それはできません! 仲間が緊急事態なんです! 見捨てるわけにはいきません」
「何言ってるんだ!! 司令官命令だ!! やれ!! やって!! お願い!!」
「ダメです! そんなことをしたら規律違反になってしまいます」
「くっそ~……」
「ごめんニーナ、もうすでに出動しちゃったみたい……」
ルアルは小声でニーナに連絡した。
「分かった。しょうがない。ロンドにも伝える」
ニーナはルアルからの通信を切ると、すぐにロンドへと連絡した。
「ロンド。聞こえる?」
「ああ!? なんだ! 今忙しんだ!」
ロンドは走りながら答えた。
「学園部隊がもうすぐ来ちゃう。急いで」
「十分急いでるって!! これ以上どうやって急げと……」
「外を見て!! 学園部隊が近づいてきてる!!」
既に屋上で待機をしていたクリスが叫んだ。
屋上からはこちらへ近づいてくる学園部隊が遠くに見えた。
「ロンドさん!! 急いでください!!」
ピッカーはインカムに向かって叫んだ。
「わかった!! わかったから!!」
ロンドは上を見上げた。
まだ屋上までは10階近くある。
もう一度海賊旋風歌を使うにも体力が限界近い。
そこで彼は階段を出て21階のフロアに出た。
エレベーターを確認すると表示は1階。
21階に上がってくるまで待っていると警備員達に追いつかれてしまう。
そこでロンドは窓の外を見た。
そこには何やらワイヤーが垂れ下がっておりゆらゆらと揺れていた。
「でかした!!」
ロンドはそう叫びながら窓に近づいた。
だがそこで警備員に追いつかれ、ロンドは窓の傍まで追い詰められてしまう。
「ロンド!! 今度こそ捕まえるぞ!!」
警備員は再びロンドに銃を向けた。
「そうか? 無理だと思うがな。残念ながらお前らとはここでおさらばだ」
彼は振り返ってそう言うと、そのまま窓を突き破って外に飛び出した。
「なにっ!?」
警備員は急いで割れた窓に近づき、下を覗き込んだ。
するとすぐ下にゆっくりと上がってくるロンドが居た。
彼は作業用のゴンドラに乗っていたのだ。
「あばよ」
ロンドは覗き込んできた警備員2人の服を掴むと思い切り後ろに向かって投げ飛ばした。
「う、うあああああああ!!!!」
警備員達は吹き荒れる風に乗ってそのままどこかへと飛んで行ってしまった。
ロンドは怯える作業員を21階に下ろして、最高速度で屋上まで上がっていった。
遠くに見える学園部隊はまだビル付近には到着していない。
ロンドはついに屋上に降り立って装置を設置した。
「ロンド、設置完了だ」
ロンドがインカムに向かってそう言うと、全員の安堵の声が聞こえてきた。
ロンドが装置の接地作業をしている間に学園部隊はもうビルの真下まで来ていた。
「ロンド、クリス、ピッカー、フォックス、トラップ。全員装置を起動して」
「了解!!」
ニーナの呼びかけで全員が一斉に装置を起動した。
奇妙な音が辺り一帯に鳴り響き、下に居た人々は一斉に上を見上げた。
学園部隊の面々はその音に何か反応しているようで頭を抑えながらもだえ苦しんでいた。
「やった!! なんか効いてるみたいだよ!!」
「よし! 全員出力を上げろ!」
ロンドが叫んで海賊団の面々は同時に出力を上げた。
一方その頃アルルは依然として偉そうな態度を取って部下にマッサージをさせていた。
「あ~そこそこ。うん、気持ちい」
「アルル、ルアル。もう大丈夫。引き上げていい」
ニーナからの引き上げ指示が出たが、アルルはその居心地の良さになかなか動こうとしなかった。
「う~ん、あと5分……」
「お姉ちゃん! 早く行かないとまずいよ!」
だがそんなやりとりをしているアルルとルアルの元に人影が近づいてきていた。
そんなことは露知らずアルルはゆったりと過ごしていると、突然部下のマッサージの手が止まった。
「ちょっと、まだ終わってないよ。手を止めないで」
アルルはそう言いながら部下を見た。
すると彼は何やらかしこまって敬礼をしていた。
アルルは彼の目線の先を見て驚いた。
「あなたは……っ!!」
そこに立っていたのはビビエルだった。
ビビエルは司令官に変身したアルルとルアルに向かって光線銃を撃った。
「うああああああっ!!」
彼らは吹き飛ばされて変化の術が解けてしまった。
「ニーナ、こちら問題発生! 支給応援を……!」
そんな通信がニーナの元に入った。
「どうしたの? 聞こえる? 応答して」
ニーナはアルルとルアルに呼びかけたが通信が途中で切れてしまい、彼らからの返事はない。
「海賊団は今すぐ洗脳が解けた生徒たちを連れて船に逃げて」
ニーナはロンド達にそう伝えるとアルルとルアルの元に急行した。
「分かった!」
ロンドたちはそう言って屋上を後にしようとしたが異変がおきた。
「あ、あれはなんだ……」
遠くの空に無数の飛行物体が見えたのだ。
それらは全て高速でこちらに向かって飛行しているドローンだった。
「全員装置から離れろ!!!!」
ロンドは叫んだ。




