第93話 ロンド絶体絶命
「あ~、もうそんなに泣くな」
ロンドはあまりに泣き喚く少女に動揺しながらも、深く被っていた帽子を取って顔を見せた。
「ほら、これでどうだ? 少しは怖くなくなったか?」
少女はロンドの顔を見るとようやく落ち着き始めて涙も収まってきた。
「うん。へんなかお……」
少女は涙を拭うとそう言った。
「へ、変な顔だと……!?」
ロンドはそう呟いたが必死に怒りを抑えて続けた。
「で、どうしたんだ? 親とはぐれたのか?」
「そう。お母さんが……。お母さんと来てたのに居なくなった……」
少女はそう言いながらまた泣きそうになってしまう。
「おいおいもう泣くな。俺が見つけてやるから。な?」
ロンドはそう言って少女を抱え上げた。
「わっわあっ!」
少女が驚くのも束の間、ロンドは少女を肩の上に乗せた。
「どうだ? これでよく見えるだろ」
「う、うん」
少女はあまりの高さに少し怖がっていたが、それよりでも母親を探したいという気持ちが勝ったのか辺りを見回し始めた。
「居たか?」
「うーん……。いない……わかんない」
母親の姿が見えない事に落ち込んだ少女は再び俯いてしまう。
「よし分かった」
ロンドはそう言いながら人混みに向かって歩き始めた。
背の高い彼が近づくと人々は彼を避けていき、道が出来た。
「わ、わあ。すごい」
彼は人々に構うことなくそのまま進んでいく。
「それでどの辺ではぐれたんだ?」
ロンドが聞いた。
「うーん……分かんない……」
「ふ~ん。そうか。だったら、闇雲に探すしかないな~……。そうだ。お前、母親に向かって叫んでみろよ。声が聞こえれば向こうが見つけてくれるかもしれないだろ?」
「で、でも、こんなに人がいるのに……」
「なんだ? 恥ずかしいのか? じゃあお前はこのままずっと母親とはぐれたままでいいのか? もう二度と会えないかもしれないぞ?」
ロンドのその脅しを聞いて少女は再び泣きそうな顔になった。
「もう泣くな! 泣くくらいだったらそのエネルギーを使って思い切り叫ぶんだ。そうすればすぐに見つかるさ」
ロンドのその言葉に少女は涙を拭って覚悟を決めた。
「分かった」
今にもこぼれそうな涙を瞳に溜めながら、少女は思い切り息を吸うと腹のそこから出した大声で叫んだ。
「おかあさあああああああああああああん!!!!」
「おおっ、中々いい声が出るじゃないか。よし。もう一度だ」
「うんっ!」
少女は思った以上に大きな声を出せたことに笑みを浮かべて頷いた。
「おかあさああああああああああああああん!!!!」
少女がもう一度叫ぶとその声を聞いたのか、彼女の母親が人混みをかき分けて向かってくるのが見えた。
「マイ!!!!」
母親は叫びながら少女の元へと近づいていき、ロンドの肩から飛び降りた彼女を抱きとめた。
「すみません。ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございました」
そう言って母親はロンドに頭を下げた。
「俺はなんにもしてないさ。こいつが自力で叫んで見つけたんだ」
ロンドは言った。
少女はロンドの服を掴み、彼を見上げて笑顔で言った。
「ありがとう」
そしてその親子はロンドの元を去っていった。
「一件落着、だがこっちは絶体絶命か……」
ロンドは目立ちすぎたせいで駆け付けた警備員に囲まれてしまっていた。
「ベン・ロンドだな! お前をこの場で拘束する」
ロンドを囲む警備員達は彼に向かって銃を向けてきた。
「ニーナ。すまない。警備員達に見つかってしまった」
ロンドはインカムでニーナに状況を伝えた。




