第92話 ビル侵入作戦
「おいお前らぁ!! 今すぐ今から言う事を全警備隊へ伝えろ!」
司令官に変装した2人が司令室へと入るなりアルルは叫んだ。
中に居た部下たちは慌てて通信の準備を行い、彼女の指示を待った。
「いつでも連絡できます!」
部下にそう言われたアルルは満足げな表情を見せた。
「よ~し。ではとりあえず全部隊、城に急行して守りを固めさせろ。敵に不穏な動きがあったからだ。ただし、学園魔術部隊だけはバックアップとして残すためにそのまま待機だ。いいな?」
「わ、わかりました!」
そう言って部下は全隊員に向かって通信を始めた。
「全隊員に告ぐ。敵に不穏な動きあり。学園魔術部隊を除く全隊は城の警備にあたるように」
「リンカ、うまく誘導出来たよ」
ルアルはこっそりとニーナに通信で報告した。
「ありがとう。海賊団の調子はどう?」
ニーナはそのまま海賊団に繋いで状況の確認を行った。
「こちら海賊団。今日はかなり人通りが多い。人込みに紛れて全員上手くビルに近づいてる」
そう答えたのはロンド。
彼ら海賊団が向かうのは、ほとんどの店が営業不可能になったこの街でほぼ唯一機能しているショッピングビル群だ。
その影響で休日は人で溢れかえる。
「言っとくけど、簡単じゃなかったからな! 人が多い分警備員も沢山だ! こっちは必死に隠れながら進んでんだよ」
フォックスの文句が通信に流れてきた。
「よかった。そのまま見つからないように進んで。じゃあ頑張って」
そう言ってニーナの通信は切れた。
「まあ確かに簡単じゃないな……」
ロンドは目の前に居る警備員を見て顔を隠しながら呟いた。
彼が目指すのは西側にある30階建てのビルだ。
その中にはこれでもかと言わんばかりに店が詰め込まれている。
食料などはサイファーの支配下において基本的に配給制となってしまった為、このビルには娯楽のための店が多く入っている。
「あれに上るのか……」
ロンドは目の前にそびえ立つ巨大なビルを見上げて呟いた。
そんな時、ふと彼の目に1人の少女が目に留まった。
少女は片手に人形を抱え、1人で立ち尽くしたまま大泣きしていた。
道行く人々はそんな彼女に目もくれず、見て見ぬふりをして素通りしていく。
彼女のことが気になったロンドだが計画を遂行するため、目立つ行動をするわけにはいかない。
「こちらクリス。無事にビルの中に入った」
「トラップだ。俺も中に入った」
「ピッカーも侵入成功」
続々と仲間たちからの報告がインカムから聞こえてくる。
彼も仲間に後れを取るわけにはいかない。
だから彼も皆と同じようにその少女の傍を素通りしようとした。
だが店に入る直前、彼は足を止めてしまった。
「なにをやってるんだ俺は……。急がないといけないってのに」
彼はそんなことを言いながらそのまま踵を返し逆方向に歩き出した。
「1分だけだ……。1分経ったらすぐに逃げるからな……」
彼はそんな事を呟きながら少女に近づいた。
「おいお前。親はどうした? 何で泣いてるんだ?」
少女は突然現れた大男に話しかけられた恐怖からか、さらに大声で泣き始めてしまった。




