第88話 さよなら世界
ニーナ達は息を顰め、警備隊がどこかへ去ってくれることを祈った。
だが警備隊は一歩、二歩とゆっくり確実にこちらへ近づいてくる。
「おい、そっちは居たか?」
「うーん、居ないな」
そんな警備員達の会話がすぐ近くで聞こえてきた。
「この路地裏が怪しいな」
1人の警備員はそんなことを言いながらニーナ達の居る路地裏を覗いてきた。
ニーナ達は息を止めて必死に気配を消した。
「ん〜、居ないのか?」
警備員がそう言ってその場を去ろうとしたその時、突然ピピピピという電子音が鳴り始めた。
リンカの容体が悪化し、治療ポッドの警報音がなってしまったのだ。
「なんだ!?」
警備員は路地裏に入ってくると、とうとうニーナ達は見つかってしまった。
「おい! いたぞ!! こっちだ!!」
「くっそ〜! マナーモードつけといてよ〜!」
ルアルがそんな文句を言っているのも束の間、彼らは何人もの警備員達に囲まれ銃を向けられた。
「さあ大人しく降参しろ! この国はサイファーが乗っ取ったんだ。反逆者は速やかに処分される!」
警備員は銃を向けながらそう言った。
ニーナがゆっくりと立ち上がり、警備員の方へと歩いて行く。
「おい! なんだ! こっちにくるな! う、撃つぞ!」
「あなたにそんなことはできない」
ニーナはそう言ってどんどん警備員に近づいていく。
「ほ、本当に撃つからな!! 後悔するなよ!?」
警備員はそう言って銃を撃とうと安全装置を外した。
だが彼は突然その場に倒れた。
「な、なに? どうなったの?」
ミル達は何が起こったのかとニーナや警備員達の方を確認した。
彼らを囲んでいた警備員達は全員倒れて気絶している。
そしてそのすぐ後ろから長い棒を持った大男が歩いてきた。
「海賊だ!」
ミルが叫んだ。
「お前達危機一髪だったな。俺達に感謝しろよ」
そこに立っていたのはロンドだった。
「ロンド……どこから来たの?」
ニーナが聞いた。
「上を見ろ」
彼の言葉にその場にいた全員は上を見上げた。
そこにはただ青空が広がるばかりで何かがあるようには見えなかった。
「なんにもないじゃん」
ルアルがそう言ったのも束の間、突然上空で巨大な何かが光ったかと思うとそこに巨大な船が現れた。
「と、透明の術だ!!」
ロンド達の海賊船が透明化して上空に浮いていたのだ。
「いい船だろう? 改良したんだ。しばらくはお前達を匿ってやってもいい」
ロンドはそう言って空に向かって合図をした。
「よし、上げてくれ」
ロンドが言うと船から青い光が彼らの元へと放たれた。
「な、なに〜?」
ミルが言った。
「危ないから全員俺に捕まってろ」
「何が起きるの?」
ニーナが聞いた。
「乗船だ」
ロンドがそう言うと、全員が一気にその光を辿って船の中へと吸い込まれていった。




