第82話 ドロン!!!!
そして彼女はベルトを操作して拳の中に力を溜めるとサイファーを殴り飛ばした。
サイファーはそのまま突き飛ばされ、壁を突き破って外に出た。
「まだまだ。私の力はこんなものじゃない」
ビビエルはそう言うとその手を熊に向けた。
「熊! あなたの力借りるよ!」
「え?」
ビビエルはその手からオーブのエネルギーを放つと、熊はたちまちビビエルの手の中に吸い込まれていった。
「な、なんだ!? やめてぇ~!」
熊の暗黒エネルギーはビビエルの体内に完全に吸収され、彼女は黒いオーラを放っていた。
「お姉ちゃん! 私がアランを蘇らせるから! 待っててね」
ビビエルはそう言って壁に開いた大きな穴から外へと飛び出した。
そして彼女は高速移動でサイファーに近づくともう一度彼を殴った。
サイファーは何とか杖で受け止めようとしたが、彼女の放つ暗黒エネルギーに押されてそのまま突き飛ばされた。
「みんなの恨みを……私が晴らす!!」
彼女はそう言いながら手を突き出すと、一瞬だけ暗黒エネルギーが彼女の手から飛び出し、サイファーにぶつかった後ブーメランのように再び戻ってきた。
彼女は続けざまにその暗黒エネルギーでサイファーを攻撃していった。
「くっ……!!」
あれだけ圧倒的な力を見せていたサイファーも防戦一方になり、ビビエルにも勝機が見えてきた。
そして今度はサイファーからコピーしたを使って車を浮かせるとそこに暗黒エネルギーを溜めてそのままサイファーに向かって投げつける。
「く、くそっ!!」
「私が!! アランを生き返らせるっ!!!!」
ビビエルはそう言って倒れたサイファーに駆け寄った。
彼の背中にはアランの魂が閉じ込められた剣がある。
「その剣もらった~!!」
「や、やめろ~!!!!」
ビビエルは叫びながら剣に手を伸ばした。
だがサイファーは突然立ち上がるとその杖でビビエルの腹を思い切り殴った。
「うっ……!!」
ビビエルは思わぬ不意打ちを食らい倒れてしまう。
ビビエルの攻撃によってサイファーはかなりのダメージを食らっていたはずだが彼はまるで無傷のような状態で彼女の目の前に立っていた。
「なん……で……」
「な~んちゃって。全部嘘だ」
彼はそういいながら倒れたビビエルを思い切り蹴った。
ビビエルはそのまま転がりながらサイファーから遠ざかっていく。
「アッハッハッハッハ! 俺に勝てると思ったか? いや悪い。あまりにお前が調子に乗るもんだから、つい負けるふりをしたくなってしまった」
サイファーは大笑いしながら杖を出した。
「俺の力は全てを操る力だ。俺に操れないものなど無いんだよ。分かるか? お前はどうやっても俺に勝てないんだ」
彼はそう言って天高く杖を突きあげた。
すると突然周りにあったビルの窓が次々に割れていき、中から人間が飛び出してきた。
「さあお前ら!! こいつを襲え!! ビビエル・イェールを……食ってしまえ!!」
彼がそう叫ぶとぞろぞろと出てきた人間たちがビビエルを取り囲む。
数十人か数百人か、おびただしい数の人間達に囲まれビビエルは身動きが取れなくなった。
「さあ殺してみろ、ビビエル・イェール!! こいつらはお前たちの大好きな罪も無い人間たちだぞ?」
サイファーが叫んだ。
「ど、どうしよう……」
ビビエルはどうすることもできず、そのまま近づいて来た人間たちに襲われてしまう。
「キャアアアアッ!!」
彼女はベルトだけは取られまいと彼らから必死に守った。
「助けて……。誰か……助けて!」
ビビエルがそう叫ぶと、突然どこからか声が聞こえてきた。
「俺をあいつの剣に向かって投げつけろ!」
ビビエルは周りを探すがその声の主はどこにも見当たらない。
幻聴かと思ったがその声はもう一度聞こえてきた。
「中だ! 俺はお前の中にいる熊だ!!」
声の主はそう言った。
「熊!? 投げつけるって……まさか……」
「早くしろ!! 死にたいのか!!」
「わ、わかったよ!」
ビビエルは襲ってくる人間たちを避けながら声に従って必死に手を突き出した。
「いっけぇええええ!!!! 悪魔ァ!!!!」
ビビエルがそう叫ぶと彼女の手から暗黒エネルギーが黒い帯となって飛び出した。
そして弧を描いてサイファーの元へ飛んでいくと、彼が背中に背負っていた剣にまとわりついた。
「な、何だ!?」
「剣を持ち帰る時間もないからここで蘇らせてやるよ。クマックマ~!! 悪魔を甘く見るとこうなるんだぞ!! 覚えてろ!!」
熊はそう言いながら剣の中へと入っていった。
「や、やめろ!!!!」
サイファーは思わず背中から剣を抜いたが時すでに遅く、剣の中から渦を巻いて暗黒エネルギーが飛び出してくるとサイファーを突き飛ばした。
「うわっ!!!!」
「クマックマックマ~!! 契約成立だ~!!」
熊がそんな声を出しながら暗黒エネルギーがぐるぐると回る。
そしてそれは次第に人間の形になっていった。
しばらくしてその真っ黒なエネルギーの光が消え、人間の肌の色に変わっていくと1人の男がそこに現れた。
その男を見てビビエルは思わず叫んだ。
「アラン!!!!」
復活したアランはすぐさま何か瓶のようなものを人混みに向かって投げた。
するとそこに集まっていた人間たちはたちまち大人しくなりそのまま倒れて眠りについた。
「僕が調合した睡眠薬だ。ちょっと今回は調整ミスだな。こりゃ効きすぎだ」
アランはその場にしゃがむと、眠ってしまった人間達の様子を見ながら言った。
「アラン!!!! よかった!!」
ビビエルは眠ってしまった人間達をかき分けてアランの元へ駆け寄った。
「君だけ睡眠薬が効かないとはな。流石はオーブの力だ」
「いいや。私の技術力のお陰だよ」
ビビエルは自慢げに言った。
「おい、楽しんでる所悪いが、俺の事を忘れてないか?」
サイファーが言った。
「悪い。君のことは後回しだ。ニーナが怪我をしている。彼女を早く治療しないと」
アランはそう言ってその場から去ろうとした。
「貴様、俺から逃げられると思うなァ!!!!」
サイファーはそう言って杖を振るとアランに向かって魔力エネルギーを放った。
だがアランはそれを片手で止めてしまう。
「な、なんだと!!」
「悪いが今急いでるんだ。邪魔しないでもらえるか?」
アランはそう呟いて拳を握ると、その体から放った暗黒エネルギーでサイファーを吹き飛ばした。
「す、すごい……」
アランは驚くビビエルを連れて王の間で倒れているニーナの元へ戻った。
ニーナはアランの姿を見るなり彼に抱きついた。
「アランっ!!」
「おいおい、足を怪我してるんだろ? 熱い歓迎だな」
ニーナは彼に抱き着いたまま涙を流した。
そして彼女は泣きながら呟いた。
「よかった……。ほんとによかった……。おかえり……」
「ただいま」
そうして彼らはニーナを連れて無事拠点へと戻った。
ニーナは足の骨が折れていたが、アランの調合薬のお陰で大事には至らなかった。
「よかった。お姉ちゃんが無事で」
ビビエルは言った。
「でも本当に生き返るなんて~。熊さんは中に居るの?」
ミルがアランに聞きながらコンコンとノックするように彼の胸を叩いた。
すると突然アランの背中から熊の顔だけが飛び出てきた。
「俺は熊じゃない! 悪魔だ!」
「な、なんだ!?」
自分の体に熊が住みついているのはアランにも想定外だったようで彼は驚いていた。
「はっはっは~! 知らなかったか? 俺の事」
熊は嬉しそうに言った。
「外の世界のことはぼんやりとしか分からなかったからな。だいたい君はなんだ? 僕の体から出て行ってもらえるか?」
「ちっちっち。違うな。これは俺の体だ。住みついているのはお前の方だ。俺はお前に体を提供する代わりに、お前の人間としての人生を半分貰うっていう契約になってるんだよな~。クマックマックマ~!」
熊は笑いながら言った。
「な、なんだって!?」
「ごめんなさいアラン。これしか方法がなかった」
ニーナが謝った。
「よろしくな~アラン!!」
「うるさい!! 君みたいな熊に僕の人生を半分もやってたまるか!」
「なんだと!? 契約を破るのか!? 人の体をもらっておいて! あ、人じゃない、熊か!」
アランと熊はそのまま喧嘩を始めた。
「アラン! そんな喧嘩している場合? 早くサイファーをどうにかしないと。残りのオーブはどっちもここにあるんだから。あいつは必ず狙ってくるよ」
ビビエルが言った。
「ああ。確かにそうだ……。君の言う通りだな。所で君はサイファーが今どこにいるのかわかるか?」
「ふふふ。もっちろ~ん」
ビビエルはそう言ってモニターを指さした。
「どさくさに紛れてサイファーに発信機をつけたからね~。偉いでしょ」
「ふ~ん。まあ君にしては大したもんだ」
「君にしてはって何~!? たまには褒めてくれたっていいじゃ~ん」
ビビエルは不満げな表情をした。




