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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第三章 王国
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第79話 ブラックウォール邸侵入作戦!

 そして彼らは翌日も同じようにパン屋に盗みに入った。


「ちょっと、ルアル! 張り切りすぎよ! もっと慎重に」


 アルルはルアルに言った。


「だって僕もお姉ちゃんみたいにかっこよく盗みたいんだもん」


 ルアルはそう言ってアルルよりも先に店の中へ入ってしまう。


 ルアルはすぐに袋を広げると、棚にあったパンを次々袋の中に入れていく。


「わあ、これもいいなあ~。おいしそう!」


 そんな事を言いながら選んでいるルアルをアルルは呼び止めた。


「ルアル! 何してるの! 早く逃げるよ!」


 アルルはルアルの手を引いたが、ルアルは動かなかった。


「だってこっちのも食べたいんだもん。ちょっと待ってね」


「バカ! 見つかるでしょう!」


 アルルがそう言ってルアルの手を引き、店を出ようとしたが彼女が危惧していた通り店主が入ってきたことで彼女たちは見つかってしまう。


「なにやってるんだ! お前達!」


 店主は叫んですぐにアルルとルアルの腕を掴む。


「ちょっと! 放して!! 放してよ!」


 アルルは店主の足を何度も蹴ったが店主は力強く握ったままで手を離す様子は無かった。


「うちのパンが減っていることにはずいぶん前から気付いていた。犯人がお前らみたいなガキだったとはな!」


 店主はそう言って2人を椅子に座らせた。


「絶対に逃げられないように縛ってやる」


 彼はそう言って2人の手足を縛った。


「い、痛い……」


 そんな事を言うルアルにも構わず彼はロープをきつく縛った。


「お前達、そこで待ってろよ。今すぐ王国警察に連絡してやる。覚悟しろよ? あいつらは子供相手でもアウトサイドの人間には容赦しないからな」


 店主はそう言って部屋を出ていった。


「お姉ちゃん……僕のせいで……ごめんなさい……」


 ルアルは今にも泣きだしそうだ。


「大丈夫よルアル。お姉ちゃんは忍者なんだからこんな紐、今に引きちぎってあげるから」


 アルルは必死に足を動かしてロープを解こうとしたが、かなりきつく縛られているせいで全く動かせる余裕がなかった。


 だが彼女は諦めず体を前後に振って椅子を倒した。そしてなんとかそこから抜け出そうともがいた。


 しばらく彼女は続けたが、どうやっても抜け出すことができない。


 すると部屋に入ってくる誰かの足音がした。


 倒れたままのアルルが椅子の隙間から覗くと店主ではなく別の男の足だった。


「あんた! 弟に手を出したらタダじゃなすまないから! 今度は盗みじゃなくて殺しでもいいのよ!」


 アルルは声を震わせながらも必死になって叫んだ。


 男はアルルに向かって近づいてくる。


 アルルはどうすることもできずただ目を瞑って弟の無事を祈った。


 だが気が付いた時には彼女の拘束は解かれていた。


 アルルは手足が自由になっている事に気づくと、すぐに飛び上がって身構えた。

 

 彼女の目の前には拘束を解かれたルアルと学園の制服を着た男が立っていた。


「ど、どうなってるの……?」

 

 そんなアルルの疑問に男は答えた。


「俺がお前を助けた」


「どうして私を?」


「どうしてって、ただの気まぐれだ。まあ俺も幼い頃からこっぴどくいじめられてたからな。同情したのかもな」


 男は言った。


「そう。それはよかった。助けてくれてありがとう。でも残念だけど、私達には何もあなたに返せるものはない」


 アルルはルアルの手を引いて引き寄せた。


「お姉ちゃん」


 ルアルはアルルの傍に寄った。


「じゃあ、私達は行くから」


 アルルはそう言って店を後にしようとした。


「いいや。返せるものはある」


 男は言った。


「何?」


「俺は今日学園を辞めてここにやって来た。俺には目的があってな。それはこの国の頂点に立つこと。王になることだ」


 いきなり突拍子もない事を言い始める男をアルルは懐疑的な目で見た。


 だが男の目には一切曇りがなく、まさに真剣そのものだった。


「それが私達と関係あるの?」


 アルルは聞いた。


「まだ分からないか? お前達にその手伝いをして欲しい」


「何故私達に?」


「俺はたった一人で学園を抜け出して来たんだぞ。今は猫の手も子供の手も借りたいって所だ。それにお前達はなかなか見込みがあるようだったからな。侵入の手際が実に良かった。入った後の詰めが甘いがな」


「ずっと見てたの?」


「まあな」

 

 アルルはルアルの方を見た。


 このまま危険な盗みを続けていてもいつかまたこうやって掴まる日が来る。


 そうなれば次は無いかもしれない。


 だったらこの男についていった方がいいのではないか。


 彼女はそう考えた。


「分かった。あなたに協力する」


 アルルは男に手を差し出した。


「私の名前はアルル。こっちは弟のルアル」


 男はアルルの手を取って答えた。


「俺の名前はウェイン・ブラッド。よろしく」


 そして2人は握手をし、仲間になった。


 彼らは共にウェインの目的の為に日々行動をした。


 アルル達は盗みを働いていた時代とは違い、ある程度の食事にありつくことも出来た。


 ウェインの目的は3種類のフラグメントオーブを集めること。


 その強大な力があれば国を乗っ取ることなど容易にできると彼は言っていた。


 彼らはその在処を探して日々情報を集めていた。


 そしてその仲間に学園からやって来たリリィも加わることで、彼らはオーブへと日々近づいて行っていた。


 そんなある日。アルルが嬉しそうにウェインの部屋に入って来ると彼の元へと駆け寄ってきた。


「ウェイン!!」


「どうしたアルル」


「かなり古い情報ではあるけど、支配者のオーブがある場所が分かった」


 普段はあまり表情を変えないウェインもその時は少し驚いた顔をした。


「どこだ。教えてくれ」


「セントラルにある、ブラックウォール邸だよ」


「なるほどな、確かにブラックウォール家はかなり古くからある名家だ。行ってみる価値はあるかもしれない」


「ねえねえ、じゃあ行ってみようよ! もうずっと情報探ししかしてないしさ~」


 ルアルが言った。


「そうだな……。少し下調べは必要だが、行ってみよう」


 ウェインが答えた。


「やった~!」


 ルアルは飛び上がって喜んだ。


「リリィは来るの?」


 アルルは聞いた。


「リリィは今学園の方で頑張ってもらってるからな、今回は俺達だけでやる」


「分かった」


 そうして3人はブラックウォール邸に侵入する作戦を立て、決行当日を迎えた。


 彼らは夜の闇に紛れ、アウトサイドからセントラルの壁を乗り越えて中に入ると盗んだ車でブラックウォール邸まで向かった。


「でっか~い」


 目的のブラックウォール邸はセントラルの外れの目立たない場所にあった。


 だがその建物自体は視界を埋め尽くすほど巨大な上、壁は一面黒に塗られており緑に囲まれた森の中で明らかに目立っていた。


「これほど豪華な建物を立てるほどの金持ちだ。流石に正面突破は厳しいだろう。裏口から侵入する」


 ウェインはそう言って2人を連れて屋敷の裏手に回った。


 少し様子を伺う為、3人が中を覗くとそこには数人の子供達が居た。


 子供達は何やら黒いローブを羽織り、床に魔法陣を描いていた。


「こんな夜中に子供がお絵描きか? 思った通りここは普通の家ではないようだな。気をつけろ」


 ウェインはそう言いながらもそのまま裏口の方へと近づくと、鍵を破壊して中に入った。


「オーブがどこにあるかわかるの?」


 アルルが聞いた。


「当たり前だ。俺の調査によればオーブがあるのは2階の一番奥の部屋だ。大事なものは全てそこに保管してあるらしい。それがブラックウォール家の決まりだ」


「ふーん」


 3人はそのまま音を立てないように廊下を進むと、2階へと上がる階段のある広間へと出た。


 だがそこでは何人かの子供達がはしゃいで走り回っていた。


 3人はすぐに物陰に隠れた。


「こんなに人間が動き回っているとは予想外だったな」


「ど、どうするの?」


「安心しろ。簡単に追い払ってやる」


 ウェインはそう言って思い切り足を踏み鳴らした。


「ちょ、ちょっとなにやってるの!」


 慌て始めるアルルをよそに、ウェインはもう一度足を踏み鳴らした。


 突然暗闇から聞こえてきた大きな音に子供たちは怯えて逃げ出してしまう。


「大人を呼ばれたらどうするの?」


 アルルは心配そうに言ったがウェインは自信満々に答えた。


「なあに。心配することはない。大人は子供の言う事など信じない」


 彼はそう言って堂々と階段の方へ向かって行った。


 3人はそのまま階段を上がって、オーブがあるという2階の一番奥の部屋までたどり着く。


「この部屋だな」


 その部屋の扉は明らかに他の部屋よりも分厚く、その表面には薔薇の模様の装飾が施されており特別な部屋だという事は伺えた。

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