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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第三章 王国
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第76話 悪魔召喚!! ででででたぁ~!!

 ニーナとミルはそのまま外に出て、街の様子を伺った。


 学園にほど近いセントラルシティのとある通りに彼女たちが潜伏している建物はある。


 通りに出ると、何人もの黒い腕章をつけた者たちが見回りをしていた。


 彼らは皆アウトサイドで集められたサイファーの手下たちだ。


「どうしよう。こんなにいたら見つかっちゃうよ~」

 

 ミルは言った。


「大丈夫。これがあるから」


 ニーナは自分の腰に付けたベルトを指さして言った。


 2人がしばらく様子を伺っていると、1人の女がどこかへ走って行くのが見えた。


 ニーナ達同様に見回りをしていた者たちもそれに気づいたようで、彼女はすぐにサイファーの手下たちに掴まってしまう。


「やめてくださいっ。放してくださいっ!」


「放すものか。どこへ逃げようとしたんだ? この腕章をつけていない人間は全員敵だ。お前はこれから城に連行する」


 女を捕まえた男はそう言った。


「ニーナちゃん、どうしよう!」


 ミルがそう言って横を見ると、そこに居たはずのニーナはもう居なかった。


「その手をどけて」


 ミルが気づいた時にはニーナは男の傍まで移動しており、電撃を帯びた拳でその男を突き飛ばした。


「うわっ!!」


 近くにいたサイファーの手下たちはそれに気づくと、ニーナに襲い掛かったが彼女は高速移動で攻撃を避けながら全員を拳で叩きのめした。


「す、すごい……」


 そのまま一瞬で全員を倒してしまったニーナは女の元に近づいて言った。


「大丈夫? 帰る場所はある?」


「あ、ありがとうございますっ! 大丈夫です。この近くなので」


 女はニーナに頭を下げ、そのまま走ってどこかへ消えていった。


「すごいよ~。ニーナちゃん」


 ミルがニーナに言った。


「うん。これはすごいかも」


 ニーナはそう言って少し笑った。


 だがすぐに真剣な表情に戻るとミルの手を掴んで言った。


「じゃあちゃんと掴まってて。飛ばすから」


「え?」


 突然のニーナの言葉にミルが疑問を浮かべていると、ミルが準備する間もなくニーナはミルの腕を引いて途轍もないスピードで走り始めた。


「びゃ~~~~!!!!」


 ミルはほとんど引きずられるようにニーナについていった。


 ニーナはその体に電撃を帯びながら走るので、ミルは冷たい突風と同時にニーナの電撃によるしびれも定期的に感じることになった。


 彼女たちはしばらく走った後、ものの数十秒でアウトサイドへと続く橋までたどり着いた。


 そこにはサイファーの手下たちが10人以上で厳重な警備にあたっていた。


 そしてそのゲートでは固く閉ざされていた。


「ちょ、ちょっとスピード落として~! ぶつかっちゃうよ~?」


 ミルが叫んだがニーナはスピードを落とすどころかさらに加速した。


「このまま突っ切る」


「ぎゃ~!」


 ニーナはその言葉通りサイファーの手下を突き飛ばすと、ゲートをそのまま突き破って外に出た。


「し、しぬぅ……」


 もはやミルは完全に体力を使い果たしており、限界が近づいていた。


 彼女たちはようやくアウトサイドの街にまで到着していた。


「もうちょっとだから」


 ニーナはそう言って工場の立ち並ぶ街並みを抜けると、ついに出店が立ち並ぶドランクストリートまでたどり着いた。


「ついた」


 ニーナはそう言って急ブレーキを掛けて止まった。


 ミルはそのまま目をまわしてその場に倒れた。


「もうだめぇ~」


「大丈夫?」


 ニーナは言ったがミルはバツのポーズを作って意思を伝えた。


 この通りはニーナがリンカと初めて会った場所。


 リンカが働いていた店がある通りだ。


 ニーナはそのまま通りにある店の中を一軒ずつ覗いていった。


 辺りには全く人の気配はなく、もちろん店の中にも誰もいなかった。


 店内はどこも酷く荒らされており、飲み物や食料を盗んでいった形跡があった。


 リンカの務めていた店にも行ってみたが、状況は他の店と同じだった。


「ミル、ここはもうダメみたい」


 ニーナが言った。


「そ、そうなの~? みんな逃げちゃったのかな?」


「分からない……」


「それで、リンカちゃんの家ってどれ~?」


「リンカの家は、あの山の上」


 ニーナはそう言って再びミルの手を取った。


「えっ……。まさか……。ちょ、ちょっとまって~、ちょっとだけ休憩を~」


「大丈夫。我慢して」


 ニーナは命乞いをするミルにもお構いなしで彼女を引っ張って一瞬で山の上まで登った。


 ニーナはリンカの家である小屋の前まで来ると立ち止まった。


「お、おえ~……」


 ミルは気分が悪そうに草むらの近くでしゃがんだ。


 リンカの家は古びた木造の小屋だが、破壊されたような形跡はない。


 経年劣化による傷がある程度だ。


 ニーナはゆっくりと小屋に近づいて呼びかけた。


「丸地ハヤト……居る?」


 返事がない事を確認すると、彼女はそっと扉を開けて中に入った。


 鍵は掛かっていない。


 家の中は木の家具に囲まれ、暖かい雰囲気を保っていた。


 特に争った様子は無かったが、何か食事を作っている途中で抜け出したかのように切りかけの野菜と包丁がキッチンに置き去りにされていた。


 するとニーナはふと机の上に紙切れが一枚置かれていることに気が付いた。

 

 それはハヤトからリンカへの手紙だった。


 手紙にはこう記されていた。


「リンカさんへ もしここに来ているのなら、残念ながら僕はもうここにはいません。何も言わずに出て行ってしまってすみません。アウトサイドの通信網はほとんど破壊されてしまい、リンカさんに連絡を取る手段がありませんでした。今はただあなたの無事を願うばかりです。アウトサイドの街はサイファーの手下達に襲われました。なので僕も街の人たちを助けるためにこの家を後にします。僕はリンカさんみたいに強くはないけど、でも僕にできることでみんなを助けたいと思ってます。でも安心してください、稽古はちゃんと続けます。リンカさん、いつかまたこの家で会いましょう。その時をずっと待っています。 ハヤト」


 ニーナはその手紙に書かれていることを一通り読むとそっと折りたたんでポケットに仕舞ってリンカの家を出た。


「やっぱりいなかった……?」


 ミルの質問にニーナは頷いたが、手紙をミルに見せた。


「掴まったわけじゃない。ここから逃げた。手紙にそう書いてる」


「そうなんだ……。よかった……」


 ミルはそう言って、山の奥にあるブラックウォールを見上げた。


「あれが……ブラックウォールだね。こんなに近くで見るのは初めてだよ」


「私も」


 2人はそう言ってゆっくりとブラックウォールに向かって歩き始めた。


「もう平和は戻ってこないのかな?」


 ミルがそう呟いた。


「……。あなたのお母さんは無事?」


 ニーナが聞いた。


「うん。なんとか連絡が取れて、みんなで一緒に逃げたみたい」


「お母さんの元に行きたくはない?」


「行きたいよ。でも、それ以上に私はリンカちゃんの傍にいて一緒に戦いたいんだ」


「そう。あなたは強い」


「なんで? 弱いよ? 足手まといになってるし……。でも目の前で友達が殺されて、リンカちゃんも大けがをして……。私だけ逃げるわけにはいかないんだ」


「大丈夫。きっと、サイファーは倒せる」


「びゃっ!?」


 ニーナがミルの手を握ろうとすると、ミルは飛び上がって避けた。


「あはは……また高速移動で振り回されるのかと思っちゃった」


 ミルは言った。


 そんな話をしていると2人はブラックウォールのすぐ傍までたどり着いた。


「ここで何をすればいい?」


「ニーナちゃんはそこで見てて。ただもしも何かが襲い掛かってきたら戦わなくちゃいけないかもしれない」


 ミルはそう言って大きな布を壁の前の地面に広げた。


 そしてその布の上に何か粉を撒き、さらにその上から液体をかけた。


 そのままミルは布の前に座って目を閉じた。


「じゃあ、始めるよ」


 ミルはそう言って突然布に火をつけた。


 布は燃え上がったが、灰になることは無く燃え続けた。


 そしてその炎で魔法陣の形を描いた。


 何か鼻を突き刺すような鋭い匂いが辺りに漂った。


「この世のすべての知識を手に入れし大悪魔よ。今こそ我が問いに答える為、我らの前にその姿を現せ」


 ミルはそう言ってもう一度燃え盛る布に向かって粉を撒いた。


 すると炎は一瞬だけ高く燃え上がった。


「壁が……」


 ニーナが様子を見ていると、壁の一部が渦を巻いてこちら側に盛り上がってきているのが分かった。


「さあ、出てきて……悪魔さん」


 ミルは手を合わせて祈った。


 すると次の瞬間、壁から黒い塊が飛び出して布の中に飛び込んだ。


「出たぁ!!」


 何かが布にくるまったかと思うと、それはそのままゴロンゴロンと転がっていき、坂を駆け下りていった。


「ニーナちゃん、追いかけよう!」


 2人は急いでそれを追いかけた。


 その布にくるまった何かはそのまま下まで転がっていき、リンカの家の壁に激突した。

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