第67話 アランにチャンス到来! 湖のバトル!
その頃、地上で走っていたアランはビルの屋上まで上ってなんとか飛行艇に戻ろうとしていた。
「ああっ、箒が恋しいよ!」
彼はそんな事を言いながらビルの屋上の貯水タンクの上に登った。
彼は落ちていた板の上に乗って貯水タンクに手を着いた。
「僕が水の魔術師って所、そろそろ見せつけてやろうかな」
彼がそう言うと、突然貯水タンクが振動を始めた。
彼は板の上に立って飛行艇の方向を確認した。
そして次の瞬間、タンクが破裂して水が飛び出した。
「ヒャッホ〜!」
飛び出した水は飛行艇に向かって一直線に飛んでいく。
アランは板の上に乗ってその波に乗った。
「どうだ! かっこいいだろう! これが海のない世界のサーフィンだ! って誰も見てないな? はずかし」
アランはそんなことを言いながら飛行艇に向かって行く。
そしてすぐ近くまで近づくと、飛び上がって飛行艇の機体の上に乗った。
「綺麗な着地だったな。70点」
彼はアダムが開けた穴に近づいて中を覗いた。
「どうなったかな」
飛行艇の中には何人もの人間が横たわっている。
「これはまずいな」
彼がそう言ったのも束の間、突然船内から緑色の光が放たれて彼は吹き飛ばされた。
彼はなんとか機体に掴まって再び立ち上がると、目の前には緑色のオーラを放ったアダムがいた。
「まさか、オーブを手に入れたか?」
「よく気づいたな」
アダムが言った。
「おいおい、勘弁してくれよ……。あれは王を殺さないと手に入らないはずだ。王を殺したのか?」
「一度殺して蘇らせた」
アダムは淡々と言った。
「うーん。それはさすがに予想できなかった」
アダムは剣を背中の鞘に仕舞うと、ゆっくりと腕を上げて手のひらをアランに向けた。
「残念だが、お前のことは容赦無く殺すぞ?」
彼はアランに向かってエネルギー波を放った。
アランはギリギリの所で避けながらアダムに攻撃を仕掛けたが、いとも簡単に止められた。
続いてアダムは剣を抜きアランに向かって振りおろしてくるが、アランは再び避ける。
「逃げてばかりではいずれ死ぬだけだぞ。早く諦めろ」
アダムはそう言いながらアランを追い詰める。
「分かってるけど、逃げるってやめられないんだよね」
アランはそう言いながらアダムの攻撃を避け続けた。
だが、突然機体が大きく揺れてアランは振り落とされそうになった。
彼は羽根に掴まって耐えたが、機体はまだ揺れている。
「なんだなんだ? 今度は何が起きてるんだ?」
「操縦士を殺した。この飛行機はこのまま墜落する」
アダムは羽根に掴まっているアランに向かって剣を向けた。
「なんだって!? 一番怒らせてはいけないのは運転手だってよく言うだろう? それを殺すなんて言語道断だぞ!」
アダムはアランの手を思い切り踏んだ。
「痛っ!!」
「黙れ。俺の邪魔をする人間は全員殺す」
「ふーん。じゃあ、早く僕を殺してみたらどうだ?」
アランはそう言って手を離すとそのまま真っ逆さまに落ちて行った。
「自ら死を選ぶとはな……」
アダムが言った。
「よ〜く下を見てみろ! ここは湖だ」
アランはそう言いながら背中から湖に飛び込んだ。
「なにっ!?」
アダムはアランの後を追って飛び降りる。
彼は水の中に潜ってアランを探した。
「どこへ行った……?」
しばらく泳いでいたアダムだったが突然何かに手足を掴まれた。
水流がまるで蛇のように彼の手足に巻きついてきたのだ。
「君は僕が水の魔術師だってことをもう忘れたのか?」
そんな声がどこからか聞こえてくる。
アダムは必死にもがきながら剣を取り出すと、巻きついてくる水流を切って水上に出た。
「ハァハァハァ……」
息を上げるアダムに向かってアランが水上を歩いてゆっくり近づいてくる。
「こ〜んなに水があるんだ。もう何だってできる。水の家でも建ててみようか……」
アダムは再び両手を水に掴まれてそのまま水から引き上げられた。
アダムの身動きを封じた状態でアランは彼に近づいた。
そしてアランはアダムの胸に手を当てた。
「形勢逆転、だな。今はもういつでも君を殺せる状態だ。でも僕は殺さない。なぜだかわかるか?」
「腰抜けだからだ」
「そうじゃない。正義のヒーローだからだ。正義のヒーローは慈悲の心を持ってる。そうだろ?」
「いいや違うな」
アダムは言った。
「なんだ? ヒーローの僕に嫉妬か? 見苦しいぞ」
「違う……。お前はヒーローにはなれない」
「なぜだ? 君が悪役で僕が倒したんだからもうヒーローだろ?」
「お前はここで俺に殺されるからだ」
アダムはそう言ってアランの拘束を剣も使わずに解いた。
それどころか彼も水の上を歩いてアランに近づいてきた。
「ど、どういうことだ?」
「為政者のオーブの力を知っているか?」
「さあ?」
「あらゆるエネルギーを操る力だ」
アダムは剣を抜くと彼の周りに水が渦を撒き始めた。
「まさか!? 僕の力をパクったな!! 気に入ってたのに!」
アランはそう言いながら逃げるが、アダムが放った水流に巻き込まれて湖に落ちた。
すぐに水上に出ようとするが、再びアダムによってさらに深い所へと引き摺り込まれた
アランはアダムの拘束を振り切ると、自らの周りに空気の層を作って湖の底に立った。
アダムも同じようにしてアランに近づいてきた。
「いつまで逃げ回るつもりだ。逃げて何になる? 誰も助けには来ないぞ」
アダムが言った。
「逃げるのは良いことだ。考える時間が生まれる。だから僕は必死に考えてるんだ、何か君を倒す秘策はないかってね」
「それで、何か思い付いたのか?」
「いいや、全く」
アダムはアランの首を掴んだ。
「コピーはオリジナルを上回ることはない、それがセオリーだろ……?」
アランは首を掴まれながら言った。
「この場合は違う。俺の使っている力はコピーなどではない。お前の力そのものだ」
アダムはアランから吸収したエネルギーを一気に放った。
アランは水中で吹き飛ばされ、水飛沫とともに湖面に出た。
アダムも水から上り、剣を構えてアランに襲いかかってきた。
アランは水の盾を作ってアダムの攻撃を受けた。
「しぶとい奴め」
アダムはいらつきながら言った。
「ああそうだ。僕はしぶといだけが取り柄の人間だ。そう簡単に殺されてたまるか」
「秘策は思い付いたのか?」
「残念だがまだだ。君が邪魔するからね。騒音は思考の邪魔をする。だから図書館では静かにしないといけないってルールがあるんだ」
「だったらお前が思いつく前に殺してやるよ……。俺にはお前にはない秘策があるからな」
アダムはそう言って剣の柄の部分に取り付けられたレバーを横に引いた。
すると剣が青白く光り始める。
「秘策だと!? まさか……」
アダムは水を浮かせて自分の体の周りに渦を作りながら剣を構えた。
そしてもう3回立て続けにレバーを引いた。
すると、剣の中からふわりふわりと青白い透明な光が3つ、渦に乗ってくるくると回り始めた。
その光はしばらく回るとだんだんと人の形に変わっていた。
「ゆ、幽霊だ!!」
アランがそう叫んで逃げようとしたが、飛んできた幽霊に手足を掴まれた。
凍りつくほど冷たい手にアランは震え上がった。
「お前もこいつらの仲間になるんだ」
アダムはそのまま切りかかってきたが、アランは幽霊の腕を振り払って避けた。
「なんだ? まだ足りないか?」
アダムは再びレバーを5回引いて新たに5体の幽霊を召喚した。
「や、やばい!」
アランは逃げ回るが、合計8体の幽霊とアダムが襲いかかってきて、とうとう逃げきれなくなった。
アダムの放った水流によって彼は突き飛ばされる。
「さあ、お前もそろそろ終わりだ」
アダムと幽霊達がアランを取り囲み、アダムの操る水流によってアランの体は拘束された。
「ああ、流石に大ピンチかもな」
とほほ……。




