第62話 透明人間アダムはお風呂覗きをする悪いやつなのか? けしからん
「ほ〜らほ〜ら。よかったなぁ2人一緒に仲良く死ねて。今頃アランは寂しく1人で苦しんでるだろうな」
サイファーが言った。
「あ、アランが……?」
「ああそうだ。今頃あいつの元にはアランが向かってる」
「そんな……」
「俺は完璧主義なんだよ。念入りに計画を練って一切のミスも許さない。お前ら1人たりとも逃したりはしない」
サイファーはニーナ達に近づいていった。
「じゃあこれは予想できてた……?」
ビビエルはそう言いながら服を捲って腰元に取り付けられた機械を見せた。
機械のモニタには時間が表示されており、その時間は次第に減っていっていた。
「ま、まさか!?」
「そうだよ……。そのまさか。私たちを殺せばこの城もろとも吹き飛ばしちゃうから」
ビビエルが言った。
「こ、この小娘がァ!!」
サイファーはビビエルに襲いかかって爆弾に触れようとしたが、ビビエルが止めた。
「あんたが触ると一発で爆発するようになってるから。死にたくなければ、早く私たちを解放して」
「雑魚が……調子に乗りやがって!!!!」
サイファーは壁を思い切り殴って破壊した。
それと同時に、サイファーの力によって壁に押し付けられていたニーナとビビエルは解放された。
「はあはあはあ」
2人は呼吸を乱しながらもゆっくり立ち上がった。
「何をやってるんだ! いいからさっさと止めろ!!」
サイファーが叫んだが、ビビエルは爆弾を止める様子はない。
「ビビエル、早くしないと」
流石のニーナも焦り始めてビビエルを急かす。
「おい、まさか偽物じゃないだろうな?」
サイファーがビビエルの胸ぐらを掴んで言った。
「だったらどうするの?」
「どうなるか、言わなくてもわかるだろう?」
サイファーは静かに睨みつけた。
彼らが睨み合っている間にも爆弾のカウントダウンは刻々と進んでいく。
「残念だけど、これは偽物じゃない。でも1つだけ嘘をついた」
「嘘だと?」
「この城もろとも吹き飛ばすってのは嘘だよ。吹き飛ぶのは、あんただけだから」
ビビエルがそう言うと、爆弾のカウントが0になり、辺り一面に爆風が広がった。
だが彼女の言う通り、その爆風はニーナもビビエルも、城の壁さえもすり抜けたが、サイファーだけは吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
強い爆風に叩きつけられたサイファーはそのまま壁を突き破った。
そしてそのまま崩れてきた天井の下敷きになってしまった。
「どうなってる……?」
ニーナが言った。
「これは私が開発した、その名も限定爆弾だよ。ターゲットになった人間以外には全く被害を及ぼさない優れもの」
ビビエルは自慢げに言った。
「サイファーはどうなった……?」
ニーナはゆっくりと銃を構えながらサイファーを下敷きにした瓦礫に近づいた。
「お姉ちゃん、気をつけて」
ビビエルがそう言った瞬間、瓦礫の中からサイファーの手が出てきた。
ニーナはその腕に向かって拳銃を撃った。
銃弾はその腕に直撃したがサイファーは動じず、そのまま瓦礫を押しのけて外へとゆっくり這い出てきた。
「おい、おい、おい。無駄な足掻きはよせよ」
サイファーはそう言いながらゆっくりと立ち上がった。
その胸に壁に埋まっていた鉄筋が刺さったまま彼はゆっくりニーナ達に近づいてくる。
「ふ、不死身なの!?」
ビビエルが言った。
「俺はこれまで何人もの命を吸い取ってきた。だから1回殺されたくらいじゃ死ねないなァ」
サイファーは笑いながら胸に刺さった鉄筋を引き抜いた。
「じゃあ、もう一度死んで」
ニーナはそう言って数発の銃弾をサイファーに浴びせると彼は倒れた。
そのままニーナはビビエルの腕を引いて、窓の方へと向かった。
「お、お姉ちゃん、こんな高いところから飛べないよ」
窓の外は10メートル近くの高さがあり、普通に飛び降りれば怪我をしてしまうだろう。
「大丈夫。掴まって」
ニーナはそう言って強引にビビエルを引っ張って窓の外から飛び出した。
「う、うわあああっ!!」
彼女達はそのまま落下するかと思われたが、ニーナが城の屋上にフックをひっかけ、そのまま振り子のように孤を描きながら地面に着地した。
「あ、ああああああ!! 死ぬかと思ったよ!」
ビビエルは叫んだ。
「隠れて」
ニーナはビビエルの手を引いて木の影に隠れた。
サイファーはもう彼女達への興味を失ったようで追いかけてくることはなかった。
だが、彼は城の屋上に出て叫んだ。
「この城は俺たちが貰ったァ!! もうこの国は俺たちのものだ!!」
サイファーのその言葉に城の前にいたサイファーの軍団が歓喜の叫びを上げた。
「お姉ちゃん、これを早くアランに届けて」
ビビエルはゴーグルをニーナに渡して言った。
「あなたはどうする?」
ニーナが聞いた。
「私はミルを追いかける。先に逃しておいたんだけど、ちょっと心配だから」
「分かった」
ニーナがそう言うとビビエルは走ってミルの元へと向かって行った。
ニーナはそんなビビエルの背中に向かって一言呟いた。
「どうか、死なないで」
◇
その頃、上空にいるアランは空飛ぶ箒に乗って王様の飛行艇を追いかけていた。
彼はかなりの上空を飛んでおり、もう雲がすぐ上にある。
「あったぞ!」
アランは飛行艇を見つけるとスピードを上げて追いかけた。
そんなアランの元に上からぽたぽたと水滴が落ちてきた。
突然の雨だ。
「なんだ〜? 運が悪いなあ」
アランはそんな独り言を言いながらも雨に打たれつつ進んだ。
しばらく飛行を続けていたアランだったが、遠くの方から何かが雨水を弾きながらやってくるのが見えた。
「お? ビビエルか?」
アランはそう言って目を凝らしたがよく見えない。
だが、明らかにビビエルではなさそうだ。
それはどんどんとスピードを上げてアランに近づいてくる。
すぐ側まで来てもスピードを落とさず、アランはぶつかりそうになったので急いで避けた。
「な、なんだ!?」
何かが来たことは分かったが辺りを見回しても何も見当たらない。
雲の上かと思って上を見上げるも、何かがある様子はない。
「何かがあるが、何も見えない。だとしたら……答えは1つだな」
その何かはもう一度アランを襲ったが、彼はギリギリで避けた。
「君の名前はアダム、またの名をソウルハンター、だろう? 君はかくれんぼがお好きなようだが、残念ながら僕は嫌いだ。さっさと正体を表せ」
アランが叫んだ。
「俺のことをよく知っているようだな。アラン・ブラックウォール」
低い声でどこからか返事が聞こえてきた。
「僕は君のような人間が大好物なんだよ。実に興味深いね。透明になれる人間はそう多くはない。そんな人間が大勢居たら、安心してお風呂にも入れないからな」
「残念だが、あまり長く話している時間はない。お前のことはこの場で殺させてもらう」
どこからか剣を鞘から抜くような音が聞こえた。
「アクセス……」
アランも水の力を身に纏って攻撃体勢に入った。
「サイファーの命と俺自身の信念により、アラン・ブラックウォール。お前を今ここで殺害する」
見えないアダムはそう言ってアランの元へと飛んできた。
「残念だったな。アダム。今日はあいにくの雨だ。透明人間にとっては最悪の天気とは思わないか? さっきから君の動きが丸見えだからな!」
アランはアダムに向かって水のムチを伸ばして拘束した。
「うっ!!」
アダムは一瞬怯んだが、すぐに剣で水のムチを切り落とし、アランに向かって飛びかかった。
アランは自分の体の周りに水の膜を貼ると、それを一気に広げてアダムを弾き返した。




