第61話 エリオの信念
「うわっ!!」
リンカは突然出てきた数人の生徒に囲まれて魔法攻撃を受けた。
リンカは避ける暇も無く攻撃を受けてしまう。
生徒達は一斉に手のひらをリンカに向けて再び攻撃を仕掛けようとしてきた。
リンカは身を守る体勢をとった。
だが次の瞬間、生徒達は全員一斉に倒れた。
倒れた生徒達の向こう側には麻酔銃を構えたニーナが立っていた。
「ニーナさん! ありがとうございます」
リンカはすぐに立ち上がった。
「リンカ、向こうをお願い」
ニーナは城の東側の方向を指してリンカを誘導した。
「はいっ」
リンカは言われた通り東側に向かった。
その後もニーナは城の前で拳銃のような見た目の麻酔銃を両手に持って生徒達を倒していった。
「おいガキ! 派手に暴れるじゃねえか」
ニーナは戦っているうちにいつの間にか数人の男達に囲まれてしまった。
「俺たちはガキにも容赦しねえぞ!」
1人の男はそう叫んで大きな鉄パイプでニーナに殴りかかってきたが、彼女はそれを素手で受け取るめるとそのまま彼の腹を銃で撃ち抜いた。
「うあっ!!」
「なにっ!!」
ニーナの強さに驚いた他の男達が怯んで足を止めている隙に彼女は回し蹴りをして彼らを全員倒した。
そして倒れた彼らを躊躇なく麻酔銃で撃った。
リンカもそんなニーナに負けじとサイファー軍団を次々倒していた。
「はあっ!!」
彼女の元に10人以上の男達が走って近づいてくるが、彼女が地面を殴るとその衝撃で地面が割れて彼らは吹き飛んだ。
さらに彼女は割れた地面の中から巨大な岩を取り出して持ち上げると敵に向かって投げつけた。
そんな彼女に恐れを成して敵が逃げていく隙に彼女は住民達を逃した。
だがすぐに他の敵がリンカの元にやってきて襲いかかってくる。
彼女はそんな彼らをエネルギー波を放って追い返した。
リンカはそのまま次々にやってくる敵を薙ぎ倒していっていた。
ただそんな中、1人だけ背の低い少女がこちらへ歩いてくるのが分かった。
リンカにはその正体が一目で分かった。
「エリオさん……」
リンカはそう呟きながら襲いかかってくる大男達を突き飛ばした。
「リンカさん。ごきげんいかが?」
エリオは複雑そうな表情でリンカに挨拶をした。
「エリオさん、本当にサイファーの側についたの?」
「あの時言いましたでしょう? わたくしはいつだってお兄様の味方ですわ」
2人は見合ったまましばらく黙っていた。
「ミルさんは、元気ですか?」
エリオが聞いた。
「うん。元気だよ。でも私が戦いに出る時、複雑そうな顔してた。私がエリオさんと会うって分かってたのかな」
エリオはそのまま黙って何も答えない。
「私たち、戦わなくちゃだめなんですか?」
リンカが聞いた。
「ええ。そうですわ……。あの約束、覚えていますか? わたくしはお兄様と共に正しくない道に落ちてしまいました。だからあなたが止めてください」
彼女はそう言って水色に輝く宝石を取り出した。
「そ、それって……! 壊れたはずじゃ!」
エリオが持っていたのはリリィと共に砕け散ったはずの氷のエレメンタルジェムだった。
「お兄様が直してくれました。わたくしのお姉様になるはずだったリリィ様の形見ですわ」
エリオはそう言ってジェムを起動させようとした。
「だ、だめっ!」
リンカが叫ぶがエリオは躊躇なく呪文を口にした。
「アクセス」
彼女のその言葉と共に彼女は冷気に包まれ、氷の魔法少女へとエリオは変身した。
「わたくしは、お兄様に忠誠を誓いました。あなた相手でも容赦はしません」
エリオはそう言ってリンカに向かって攻撃を仕掛けてきた。
リンカはその攻撃を受け止めようとするが、受け取めきれずに吹き飛ばされた。
「エリオさん、あなたはいい人です! 私は……あなたとは戦いたくない……」
リンカはそう言ってエリオには攻撃をしないが、エリオの方は容赦なくリンカに向かって攻撃をする。
「わたくしだって……」
エリオはそう言いながらも攻撃を続ける。
「じゃあ、なんでこんなこと!!」
リンカはエリオの持っている杖を受け止めて言った。
「お兄様は……。お兄様にとってわたくしはたった1人の家族なんです。だからわたくしだけは彼を裏切れません。裏切っちゃだめなんです」
そう言ってエリオはリンカに向かって冷気を浴びせると、彼女の足が凍りついた。
「そんなことない! お兄さんが間違ってるならエリオさんが正しい方向に導いてあげればいいんだよ!」
動けなくなったリンカにエリオはゆっくり近づいた。
「ごめんなさい。わたくしは、悪い人間なんです」
エリオはそう言いながら目を瞑ってサイファーとの出来事を思い出した。
数年ぶりに再開したサイファーはもはやエリオの知っている兄ではなかった。
だが、再開した時彼は一言だけエリオに『ただいま』と言った。
その一言を言った一瞬だけ彼はサイファーではなくエリオの知っている兄の顔に戻ったのが分かった。
だからエリオはそんなサイファーにもついて行こうと決心したのだった。
エリオはリンカに杖を向けた。
「アイス……ストーム」
エリオがそう呟くと、強い冷気と暴風がリンカを襲って彼女は吹き飛ばされて倒れた。
「うああああああああっ!!!!」
リンカは倒れた。
エリオはリンカの飛んでいった方に向かってゆっくりと近づいていく。
「わたくしはあなたを本気で殺す覚悟ができていますわ。だから、あなたも本気を出さなければ、死にますよ」
エリオがそう言ってリンカに近づいたが、すでにそこにはリンカは居なかった。
エリオは突然後ろに気配を感じて振り向くと、そこにリンカが立っていた。
リンカはそのままエリオを殴って突き飛ばした。
「わかりました。エリオさんがその気なら、私は全力であなたを止めます」
リンカはそう言って拳を握ると、彼女は赤いオーラに包まれた。
「ええ。そうしてください」
エリオは口から血を流しながら起き上がり、冷たい目でリンカを見た。
「おりゃああああああああああ!!!!」
リンカは雄叫びを上げながらエリオに向かって殴りかかった。
だがエリオは冷気の力でリンカの攻撃を受け止める。
2人の力がぶつかって辺りに衝撃が広がった。
「わたくしは勝ちます。お兄様のために」
「私だって負けられません!! エリオさんのために!!」
2人は一歩も引かず、力のぶつけ合いを続けた。
◇
その頃、ニーナはいつの間にか姿を消したサイファーを探していた。
「サイファーは見つかったか?」
アランが通信でニーナに聞いた。
「だめ。どこにも居ない」
「ちゃんと見張ってろって言っただろ〜。4人も居て何やってんだ〜? こっちは1人だってのに」
「そんなこと言ってない」
「とにかく、見つけたら連絡してくれ。ソウルハンターもついでにな」
「見えない人間は探しようがない」
「わかってるって。とにかくビビエルのことも急かしといてくれ。彼女は見てないとすぐにサボるからな」
そう言ってアランは通信を切った。
ニーナはそのままサイファーの捜索に戻ったが、突然城の方から爆発音が聞こえた。
「ビビエル!」
ニーナはそう言って城の方に向かって走り出した。
城の入り口には大きな穴が空いて兵士が何人も倒れていた。
「何が起きた?」
ニーナが聞いた。
「あ、あいつが……。サイファーが……」
ニーナはその言葉を聞いてすぐに城の中へ飛び込んだ。
城の中からは負傷した兵士たちが次々と逃げ出てきていたが、そこにビビエルの姿は見当たらなかった。
ニーナは瓦礫の山をどかしながら階段を登り、ビビエルがいるはずの2階へと向かった。
2階もかなり荒らされており、ほとんどの部屋のドアが吹き飛ばされていた。
「ビビエル……どこ?」
ニーナは小さな声でビビエルに呼びかけたが、もちろん返事はない。
彼女はサイファーに見つからないように隠れながら長い廊下を進んだ。
ニーナはなんとかビビエルがいるはずの応接室にたどり着いたがそこに彼女はいなかった。
「ビビエル?」
ニーナが呼びかけながら応接室の奥の扉を開けた。
「あ?」
そこに立っていたのはサイファーだった。
サイファーはニーナに気づくと一瞬で彼女を吹き飛ばして壁に押し付けた。
「ああ、いい所に獲物が来てくれた。お前はニーナ・イェール。俺が今2番目に殺したい人間だ」
サイファーはニーナの首を締めながら言った。
「なぜ? リリィを殺されたから?」
「そうだよ。よくわかったなぁ。さすがは元生徒会長。頭だけはお利口さんなんだなあ」
「なぜリリィを仲間にした?」
「なぜって? 恋愛に理由なんか必要か?」
ニーナはそんな会話でサイファーの気を引きながら気づかれないように拳銃に手をかけた。
だが、サイファーはそんな彼女に動きに気づいており、ニーナの腕を掴んだ。
「残念だったなあ。俺を殺したかったか? それは無理な話だな。アッハッハッハッハ!」
高笑いをするサイファーだが、突然横から打ち込まれた光線銃によって吹き飛ばされてしまう。
「お姉ちゃん!!」
銃を撃ったのはビビエルだった。
ビビエルはニーナに近づき、彼女の手を引いて城から逃げようとした。
だが、サイファーの力で出口を瓦礫で塞がれてしまい、出ることができない。
「姉妹揃って殺せるのはこっちとしても好都合だ。覚悟しろ、ビビエル・イェール!!!!」
サイファーはそう叫んで、2人を力で壁に叩きつけた。
彼のオーブの力でニーナとビビエルは体を操られて、自分で自分の首を締めた。
暑い夏こそアイスを食べよう




