第57話 フラグメントオーブ vs エレメンタルジェム
「実は〜いままで黙ってたけど~。私、これぜ~んぶ一気に使えるの♡」
リリィはニヤリと笑みを見せた。
「どういうことだ……?」
「ふふふ♡ 見てて♡ こういうこと♡」
リリィは3つのジェムの力を一気に解放した。
炎と電撃と冷気が彼女の周りを取り囲み、その力でアランの水のムチは切断され消滅した。
「炎、氷、雷。全ての力を司る者たちよ。その大いなる力で我が肉体に無限の力を……」
リリィを取り巻く炎と電撃と冷気はさらに強さを増し、アランも近づくことさえできなかった。
「アクセス!!」
リリィがそう叫ぶと、強い光と共に炎、電撃、冷気は一気に収まってリリィは姿を見せた。
彼女の衣装は炎の赤、雷の黄色、氷の水色がそれぞれアクセントとして入ったものに変わっており、そのステッキも炎、雷、氷の全てのモチーフを取り込んだものになっていた。
彼女は全ての力を身に纏ってアランに近づいた。
「ふふふ♡ どう~? この姿になったのは久しぶりなんだけど」
リリィは言った。
「ほ〜う……。ちょっとこれはやばいかも」
アランはリリィから距離を取って言った。
「ちょっと、お兄ちゃん!? がんばってよ!」
クリスが叫んだ。
「まあ、待ってろ。いま作戦を考え中だ。いい作戦をきっと思いつく気がする」
「気がする!?」
「ふふふ♡ 思いつく前に殺しちゃうから!」
リリィはそう言って高速移動でアランに近づく。
だがアランは水の膜を張ってリリィの攻撃を受け流した。
「私の攻撃を弾いた!?」
「僕は君に勝てない。でも、残念だが君も僕に勝てない」
アランはそう言って水の玉をリリィに向かって撃った。
リリィはそれに直撃して倒れた。
だが彼女はすぐに起き上がってアランに攻撃を仕掛ける。
彼女の力は次第に強さを増していき、周りにも被害を及ぼし始めた。
見物に来ていた住民たちはみな逃げ出してしまった。
「俺達も逃げたいよ~!!」
フォックスはギロチン台に固定されたまま叫んだ。
「こうなったら……ぜんぶ壊してやる!!」
リリィはゆっくりと空中に浮かび上がって辺りに炎や雷、冷気をまき散らし始めた。
ギロチン台に固定された皆に攻撃が及ばないようにアランは水の膜を張って守った。
アランは何度かリリィに攻撃を仕掛けたが、リリィの力は確実にアランの力を凌駕しており、もはや攻撃が全く通用しなかった。
「アランさん! 私のフラグメントオーブを取ってきてください! 私も戦えます!」
リンカが叫んだ。
「お前のじゃない! あれはロンドさんのだ!」
フォックスが言った。
「うーん。確かに。味方は多いほうが良いからな。ちょっと待ってろ」
アランはそう言うと、水のムチを伸ばしてどこからかリンカのメリケンサックを持ってきた。
「ほら、愛しのメリケンサックだ。でも、そのギロチン台のロックは簡単には外せないぞ?」
アランはリンカにメリケンサックを渡した。
「わかってます。だからこれが必要だったんです」
リンカはメリケンサックを掴むと、赤いオーラを放ち始めた。
「はあああああああああああっ!!」
彼女が全身から強い光を出すと、彼女を拘束していたギロチン台が砕け散った。
「な、なんでぇ!?」
魔術で強力にロックされているはずのギロチン台を破壊したリンカにフォックスが驚いた。
そうしてリンカは水の膜の外に出たが、すぐにリリィからの攻撃が飛んできて退却する。
「困ったな、これじゃあ一向に近づけないぞ」
アランが言った。
「私のオーブの力でなんとかなりませんかね」
リンカが言った。
「いいや。無理だ。流石に君の力でもリリィには及ばない。記憶を取り戻したときの君は強かったのにな~」
アランは残念そうに言った。
「大体君の魔力値は6のはずだぞ。なんでそんな君にオーブが使えるんだ?」
アランはそう言いながら双眼鏡のような装置を使ってリンカを見た。
「え〜っと、今の魔力値は……85!? いつの間にか上がってないか?」
「わ、分かんないです。故障ですかね?」
「これは電気ではなく魔力で動く装置だ。機械と違ってそう簡単に故障なんかしない。でも一体どうなってるんだ……?」
そう言いながらアランはその装置でリリィを見た。
「ああ、残念ながら彼女の魔力値は120だ。どう考えても勝ち目はない」
アランが言った。
「で、でも! いつまでもここに居ればサイファーが来ちゃいます。だからもうやるしかないんですよ!」
リンカはそう言って飛び出して行ってしまった。
「ま、待て!!」
アランが止めるがリンカは聞かない。
リリィの攻撃は際限なく激しさを増していき、アランは次第に皆を守る事以外に余裕が無くなってきた。
辺りに生えていた木々や民家の一部は燃え上がり、一部は凍結していた。
そんな状態の中、リンカはリリィに向かって叫んだ。
「リリィさん!! 私が相手です!!」
「あははは! いいよ!! リンカちゃん!! 私を止めて!!」
リリィは叫んだ。
リンカは大きく飛び上がってリリィに向かってパンチをした。
だが、リンカはリリィの雷をまともにくらい、そのまま地面に落ちた。
「まだまだっ!!」
リンカは再び飛び上がってリリィの元へ向かう。
だが今度はリリィに近づく前に撃ち落とされた。
「おい、リンカ!! もうやめるんだ!」
アランが叫んだが、リンカの耳には届かないようだ。
「いま止めなきゃ行けないんです!!」
リンカはそう言って再び飛び上がる。
「うおおおおおおお!!」
リンカは再びリリィに攻撃を仕掛けるが、またもやカウンター攻撃を食らって地面に落ちた。
アランが張っていた水のシールドは次第にリリィの力に押され、次第にギロチン台の方へと近づいていた。
「お、おい!! 大丈夫なんだろうな! これ!! 大丈夫じゃなかったら怒るよ!?」
フォックスが叫んだ。
「うるさいな、静かにしてくれ。今必死にやってるんだ」
アランはそう言うが、シールドはかなりギロチン台まで近づいて来ている。
アランが必死にシールドを押しても、リリィの圧倒的な力に押し返されてしまった。
シールドはもうロンドたちの顔から数センチというところまで迫っていた。
「わあああ!! わああああ!! やばいやばい!!」
シールドはどんどん彼らの顔に近づいていき、フォックスが叫んだ。
ロンドたちは息を呑んで祈った。
リリィは地面に降りてきて地面にステッキを刺すとリンカの首を掴み上げた。
そして彼女に電気を流しながら氷の炎を纏った拳でリンカを殴った。
「うあああああああああああああ!!!!」
その間もステッキからエネルギーは放たれ続け、アランのシールドを押していた。
「ふ~ふふふ♡ 私の邪魔ばかりしてくれたね~!」
リリィは笑顔でリンカを殴った。
一方、ロンドたちに近づいていたシールドはスピードは落ちたものの、ゆっくりと確実に彼らに迫ってきていた。
「わああはっはっはっは……。こんどこそ、もうほんとに死ぬんだ……。嫌だ~~~~!!!!」
「リンカ! オーブはもっと体に近づけて使え! お前の場合、オーブから引き出せる力が強すぎて体とのバランスが取れないんだ」
ロンドが叫んでリンカに言った。
「か、体に近づける……? でもどうやって……」
リンカは考える暇もなく、再びリリィに電気を流された。
「うあああああああああああああああ!!!!」
とうとうリリィはリンカのメリケンサックを奪ってしまい、オーブを取り外した。
オーブは大きくなってリリィの手の中に収まった。
「わあ、きれいだね。これが強者のオーブか~」
リリィはうっとりとした表情でオーブを見つめながら言った。
「これでサイファーにまた褒められちゃうな~♡」
リリィが自画自賛をする中、リンカはロンドに言われた言葉を考えた。
体に近づけるにはどうしたらいいか。
手足の短いリンカの格闘スタイルでは、出来るだけ拳を遠くに伸ばすという事を意識している為、確実に体からオーブの距離は遠くなってしまう。
かといって格闘スタイルを変えればいつもの力を発揮することはできない。
「く、クソッ!!」
アランは皆を守るのに必死でリンカを助けに行くことができない。
「おい、俺だけでもいいからどうにかして開放しろ! アラン! リンカが死ぬぞ!!」
ロンドが叫んだ。
「そんなことできたらしてるよ!!」
そんなやりとりをしている中、リンカが思いもよらない行動をとった。
「な、なに!?」
リンカはリリィの持っていたオーブに思い切りかぶりついた。
そして彼女はそのままオーブを飲み込んでしまった。
「た、食べたァ!?!?」
アランは思わず叫んだ。
お腹すいたなあ




