第56話 カウントダウン。死亡。チーン。
「よ~しよし。えらいよみんな♡」
リリィは静かになった住民たちに向かって言った。
「ああ……。やっぱり俺たちは死ぬんだな……。いやだああああああ!!」
フォックスが叫んだ。
「ああ……さすがに今回はお前と同じ気持ちだよ……。俺もいやだあああああ!!」
ピッカーも一緒になって叫んだ。
「クソックソッ!!」
ロンドは必死になってギロチン台から抜け出そうとするもリリィの魔術によってロックされており、全く動かない。
「ミル、ごめんなさい……。こんなことに巻き込んで」
リンカがミルに謝った。
「リンカちゃんのせいじゃないよ。むしろ、私と友達になってくれてありがとう」
ミルが言った。
「私こそありがとう、ミル」
「ビビエル、こんなことになるなら無理にでもあなたをシナプスから離れさせるべきだった」
ニーナがビビエルに言った。
「いんだよ、お姉ちゃん。私はずっとお姉ちゃんと一緒に居られた方が良かったから……」
ビビエルが言った。
ニーナは返事が出来ずにしばらく黙ってアランの方を見た。
アランは依然として気絶したままギロチン台に固定されてる。
「はいはいはい、みんな~♡ そろそろ始めるよ~!」
リリィが言った。
「ああああああああああ~~~~!!!!!!」
フォックスは合掌をして叫びながら尿を漏らした。
「あんまり焦らしちゃうのもかわいそうだから、一気に行っちゃうね♡」
リリィはそう言ってギロチン台のスイッチに手をかけた。
「じゃあ、一緒に~! カウントダウンおねがいしま~す♡ 10! 9! 8! 7!」
リリィがカウントダウンを始めると住民たちも不安そうな面持ちでリンカ達を見守った。
「3、2、1、ゼロ~~~~!!!!」
リリィはそう言ってスイッチを押すとギロチンのロックが一斉に外れた。
「ギャアアアアアアアアアア!!!!」
辺りにフォックスの叫び声が響き渡った。
だがしばらく経っても誰の首もはねられなかった。
「ど、どういうこと!?」
リリィがギロチン台を確認すると、全ての刃が空中で浮いていた。
「偉大なるサイファーに使える魔術師リリィ。君にここで1つ問題を出そう。魔術師が物を宙に浮かせるとき、どういう仕組みになってるか知ってるか?」
見物していた住民たちの中からフードを被った1人の男が出てきた。
「だ、誰!? あなたがやったの? 私言ったよね? 私に逆らうならサイファーに逆らうことになるんだよ? わかってる?」
「はい、残念。時間切れで不正解だ。こんな基本問題に答えられないなんて、君は本当に魔術師か? 答えは単純だ。重力と逆の方向に魔力による力が働いているんだ」
男は言った。
「う、うるさい! ごちゃごちゃ言うな! 私は魔法少女だ!!」
リリィはそう言って電撃をその男に浴びせたが、男は防御魔法で攻撃を防ぐとフードを取って顔を見せた。
「お兄ちゃん!!」
クリスが叫んだ。
そこに立っていたのはアランだった。
「ど、どういうこと!?」
リリィがギロチン台に固定したはずのアランの方を見ると、そこに居たのはただの人形だった。
「ただの人形と本物の僕を見間違ったのはなんでか分かるか?」
アランが言った。
「魔法だよ」
「は~!? 調子に乗らないで!! あなたのことは知ってるよ。優秀な魔術師なんだってね。でもね、それでも私には勝てないよ?」
リリィが言った。
「ああ、確かに君は強い。エレメンタルジェムを3つも使いこなすとは恐れ入ったよ。だから僕は君に勝つ方法を探したんだ。そして、見つけた」
「見つけたって……何を?」
「これだよ」
アランは首から下げていたペンダントを外して見せた。
そこには青々と輝く雫のような形の宝石がつけられていた。
「そ、それは……!」
「そうだ。水のエレメンタルジェムだ」
「な、なんであなたが!?」
アランはリリィの質問には答えずに呪文を唱え始めた。
「天と、地と、海。全ての魔力の源よ。その大いなる力で我が肉体に水の力を宿せ……」
アランの呪文に反応して宝石は輝きを増し、その光が彼を包み込む。
「あなたには変身すらさせないから!!」
リリィはそう叫んで自らも雷の魔法少女に変身し、アランに電撃を浴びせた。
「アクセス!!」
アランのその叫びと共にジェムから飛び出した水が渦を巻いて彼の体を包み込んだ。
そしてその渦がリリィの電撃からアランを守った。
水が消えてアランが現れると、彼の衣装も変わっていた。
黒いコートから白いコートに変わり所々青いアクセントが入ってる。
そして彼は水をムチのように操り、リリィに向かって伸ばすとリリィの付けていたベルトを奪った。
「か、返せ!! 私の!!」
リリィが叫んだ。
「何言ってるんだ? これはビビエルが作ったんだろ? じゃあ僕のものだ」
アランが言った。
リリィは怒りながらアランに向かってステッキで攻撃するがそれを全てアランは避けた。
さらにアランは水を再びムチのように使ってリリィを引き寄せるて彼女を殴った。
「リリィ、君は僕には勝てない」
アランが言った。
「うるさいっ!」
リリィはアランに攻撃をして距離を取った。そしてアランの持っていたベルトに向かって攻撃した。
その攻撃によってベルトは破壊され火花を散らした。
「アハハハ! そのベルトができなきゃあなたにも何もできないでしょ? なんたって私は3つもジェムを持ってるんだから!」
リリィはそう言って氷の魔法少女に変身すると、アランの手足を凍らせた。
だが、アランは一瞬でその氷を砕いてリリィに攻撃を浴びせた。
「うわっ!!」
リリィは倒れた。
アランはそのまま水の力でリリィの手足を縛って拘束した。
そしてゆっくりとリリィに近づいて言った。
「君は確かに3つのエレメンタルジェムをうまく扱っている。3つを使いこなすのには相当な訓練が必要だっただろう。だが、1つ1つの詰めが甘い。1つのジェムに関して見れば初心者に毛が生えた程度だな」
「は~!? バカにしないで! あなたはこういうのが趣味なの? 残念だけど私はサイファーにしか体は差し出さないよ」
リリィはそっぽを向いて言った。
「残念だが僕は君なんかに興味はない」
アランが言った。
「じゃあ、サイファーはどう? 彼には興味あるの?」
「まあ、興味がないといえば嘘になるな」
「そっか~♡ じゃあよかったね。だってもうすぐサイファーが来るんだもん」
「なんだと……?」
アランは一瞬怯んで後ずさりする。
「あれ? ビビっちゃってるんだ~♡ かわいいとこもあるじゃん。だったらさ~、もう1つ教えてあげるね♡」
リリィはそう言って3つのジェムをアランに見せた。
「それがなんだ? 僕にくれるのか?」
アランが言ったが、リリィは首を横に振った。
ギロチンって痛いのかな




