第41話 海賊船に秘められたびっくりドッキリ秘密兵器! これにはアンナもびっくり。
「やった!! 本当に飛んだぞ!! ヒャッホーー!!」
ピッカーたちはお互いハイタッチして喜んでいたが、クリスとロンドは緊迫した表情で下を見ていた。
船の上昇はしばらく止まらず、雲の上に出た。
一面の美しい雲海と雲一つ無い青空が広がり、この世のものとは思えないほど美しい景色だ。
「すごい……」
トラップが唖然とした表情で言った。
「ろ、ロンドさん! 俺達、今壁よりも高い位置に居ますよ! このまま壁の向こう側に行けるんじゃないですか!?」
ピッカーが言ったがロンドは首を横に振った。
「空から向こう側に行こうとした奴なんて今まで何人も居た。だがだれも向こう側の世界を知らない。何故なら全員死んだからだ」
「でもどうして?」
クリスが聞いた。
「いいか? あの壁は生きてる。俺たちを食おうと今にも狙ってるんだぞ? その上なんか通ったらどうなると思う?」
4人は壁の方を見て息を呑んだ。
「俺達なんかピーナッツみたいに食われちまうぞ!」
ロンドが叫ぶ。
「いやだ!! ピスタチオがいい!!」
フォックスが言った。
「いいや、ピーナッツだ!!」
「でも、じゃあどうやって壁の向こうに行くつもりなんですか?」
「考え中だ……。インフィニティシールドさえあればな……」
ロンドがそう言った瞬間、船が大きく揺れた。
船体を鋭い爪の生えた光輝く一本の腕が掴んでいた。
アンナの腕だ。
腕は下から伸びてきており、2本、3本と船体を掴む手はどんどん増えていく。
船はアンナの手に掴まれるたびに大きく揺れた。
「全員配置に付け!! 腕をちぎってしまえ!!」
「はいっ!!」
クリス達は船体に取り付けられた4つのエネルギー砲の前に立ち、アンナの腕に向かって撃ち始めた。
ロンドも斧を用意してアンナの腕を切っていった。
「ろ、ロンドさん!! いくら切ってもキリがありません!!」
切っても切っても次々伸びてくるアンナの腕に皆は苦戦していた。
ロンドのフラグメントオーブの力でも結果は同じだった。
「うるさい! 黙って仕事しろ!!」
それでも皆は諦めず攻撃を続けた。
「お……オエ……。船酔いした」
船の揺れはどんどん強くなり、墜落する恐れもあった。クリスの作った反重力装置のお陰で何とか持ちこたえている状況だった。
だがやはりそれにも限界があった。
アンナの腕が次のターゲットを見つけたのだ。彼女はその反重力装置を狙い始めた。
そしてアンナの手が船底を突き破り、それが運悪く重力装置に当たったことで装置が破壊されてしまった。
船を支えていた力を一つ失ったことで船体は大きく傾いた。
「お前ら掴まれ~~!!」
船はまるで沈没するかのように雲の中へと沈んでいく。
このままでは墜落も免れない。
「私、装置を直してくる!!」
クリスはそう言って傾いた甲板をよじ登りながら船内に入っていった。
「気をつけろ! クリス! 狙いはお前なんだぞ!」
ロンドが叫んだ。
「だったらそんなところに突っ立ってないで手伝ってよ!」
クリスがそう言うと、ロンドも船内に乗り込んだ。
広々とした食堂と、各々のベッドがある乗務員室を抜けて後部のエンジンルームへとたどり着いた。
装置のケーブルが切れて完全に機能していない状態だった。
窓から外を眺めると船がどんどん落ちていくのが分かった。
「おい、急げよ? 墜落しちまうぞ」
「分かってるよ! だから来たんでしょ?」
クリスはそう言ってテキパキとケーブルをつなぎ始めた。
だがそんな中、突然船底を突き破ってアンナの腕が中へと入ってきた。
その腕はロンドの首を掴む。
「ロンド!!」
クリスは何とか助けようとしたが、ロンドは止めた。
「自分の事くらい自分で守れる! お前は修理に専念しろ!」
「でも……」
「早くしろ!! 全員死ぬぞ?」
ロンドは持っていた斧で腕を切った。
だが腕はどんどん底を突き破って生えてくる。
別の反重力装置に直撃するのも時間の問題だった。
「ろ、ロンドさん! ヤバイです!! 下見てください!!」
無線から聞こえてきたフォックスの声にロンドは船底に開いた穴から下を覗いた。
そこからは数百から数千本の腕が下から伸びてくる様子が見えた。
あれが船底を突き破ればこの船は一溜まりもない。
ロンドはクリスの修理の様子をただ見守り、間に合うことを祈るしかできなかった。
甲板ではフォックスがピッカーに泣きついていた。
「ああ~!! 俺たちもう死ぬんだ~!! もっとアニメ見とけばよかった~!! 不摂生もたくさんすればよかった~!!」
「いつもしてただろ!」
騒いでいる2人と違い、トラップは達観した表情で空を見上げていた。
「俺は幸せだ。ロンド海賊団に入れて、一度でも空を飛べたんだ。悔いはない」
「バカ! 何言ってるの! この私が居る限り、あんた達は死なせないから」
クリスは無線に向かって叫んだ。
「聞いてたのか……」
「おい、もうやばいぞ! パラシュートを準備して船を飛び降りる覚悟をしろ!!」
ロンドは言った。
「その手があったか!」
ピッカーたちは言われた通り、パラシュートを背中に背負って後はただ祈った。
ロンドが再び下を覗くと、アンナの腕はもうすぐそこに迫っていた。
「もうだめだ! 飛び降りろ!!」
ロンドがそう叫んだのでピッカーたちは甲板から飛び降りようとしたが、アンナの腕が船を取り囲んでそれを阻止した。
「な、なんでぇ~!!」
フォックスが再び泣き始めるとクリスが叫んだ。
「出来たっ!!!!」
クリスはケーブルをつなぎ終えると、反重力装置の電源を入れた。
船体は再び大きく揺れて猛スピードで上昇していった。
雲の上を抜けると、アンナから逃げるように前方に向かって進み始めた。
「やったぞ~~!!!!」
ピッカーが舵を切りながら叫んだ。
フォックスは鳴きながらトラップに抱き着いた。
「やったね!!」
エンジンルームにいたロンドとクリスはハイタッチする。
船はしばらく何事もなく進んだが、双眼鏡で下を見ていたトラップが何かの陰を見つけた。
「雲の中に何かいる……。あれはなんだ?」
その影は何か大きな翼の生えた生物のようだ。
だが、鳥にしては大きすぎる。
「あれは……!」
雲から出てきたのは翼の生えた人間だった。
その正体は……。
「アンナだ!!」
ピッカーが大きく舵を切って船体は180度ぐるりと大きく回転した。
ロンドたちの海賊船はなかなかの速度を誇っていたが、アンナのスピードには叶わず、あっという間に追いつかれてしまった。
ロンドとクリスは慌てて甲板に出たが時すでに遅く、既に船の目の前にアンナが居た。
アンナは大きく翼を広げて海賊船の前方に立ちはだかった。
船はゆっくりとスピードを落として止まる。
アンナは白く輝く翼を羽ばたかせてそのまま空中に浮かんでいる。
「あたしから逃げられるとでも思ったのか?」
アンナは言った。
「ああ。思ったね。俺たちはこの海賊船を最強の要塞に仕上げたんだ」
ロンドたち5人は自信満々な表情を浮かべた。
「それでこのザマか……。なんだか泣けてくるな」
アンナはニヤニヤしながら言った。
「いいや。これで終わりなんかじゃない。まだ俺達にはお前に見せてないびっくりドッキリ秘密兵器が3つもあるんだ!!」
「3つ? そんなにあったっけ?」
「アッハッハッハ! おもしろい! じゃあ見せてみろよ! そんなもの簡単に突破してやるよ」
ロンドは4人に合図をすると、4人はそれぞれ配置について準備を始めた。
「びっくりドッキリ秘密兵器その1! 吸着式シールドだ!!」
ロンドがそう叫ぶと、船の周りを泡のような膜が包み込んで彼らを守った。
「ふ~ん。こんなものがあたしに通用すると思ったのか?」
アンナはそう言って、光の腕を数本伸ばしてシールドを突き破ろうとしたが、シールドに弾かれてしまう。
「なにっ!? あたしの攻撃で破れないだと……。人間が作ったシールドごときにっ……」
「当然の結果だ。これはお前の事を一番傍で見てきて、誰よりもお前を知り尽くしているこのクリスによってチューニングされたシールドだ。そう簡単に壊されるはずがない」
クリスは自信満々な表情を浮かべ、両手を腰にあてて胸を張った。
「俺も手伝ったんだからな!」
フォックスも後ろで胸を張った。
「クソッ!!」
アンナは悔しそうな表情を見せた。




