第35話 リンカ覚醒!vsアーミー。そして、さようなら。
全ての人形を破壊してしまったリンカは、回転しながら地上に降りて着地した。
風は段々収まっていき、ビビエルやアーミーも柱から手を離した。
「フフッ。見事だね。まさか全部倒しちゃうなんて。思ってなかったよ」
アーミーはリンカを称え、拍手をした。
「次はあなたの番です! アーミー!!」
リンカは力強く叫んだ。
「り、リンカ、落ち着いて」
あまりのリンカの興奮ぶりにビビエルが言った。
「フフッ。来なよ。僕を倒せるならね?」
アーミーはリンカを挑発するように言った。
「オリャアアアアアアアアア!!!!」
リンカは叫びながらアーミーに向かって走っていった。
その勢いに任せて彼女はアーミーにパンチを浴びせた。
だが、アーミーは防御魔法で簡単に弾く。
「フフッ。まだまだ。がんばって」
リンカは何度もアーミーにパンチを浴びせた。
だが、その中の一発もアーミーにダメージを与えることはできない。
「フンッ」
リンカの攻撃を全て弾いたアーミーはリンカに向かって魔術攻撃を仕掛けた。
青い光に包まれたリンカは吹き飛ばされてしまい、ビビエルの傍に落ちた。
「な……なんでっ……」
リンカは悔しそうに地面を殴った。
「人形たちを倒したときは感心したけど……。まあ所詮ガキだね。相手にならないよ。フフッ」
アーミーはリンカを嘲笑った。
「私は……強くなったんです……。あなたを倒す為に……この5年間ずっと修業をしてたんです……」
「それでこの程度? フフッ。笑えちゃうね」
アーミーはゆっくりリンカ達に近づいてくる。
「そうだよリンカ! 修業したんでしょ!? アランに魔術師に勝つ方法教えてもらったんじゃないの!?」
ビビエルが言った。
「そうですけど……。どうやって実戦に活かせばいいのかやっぱり分かんないんです……!」
リンカは俯きながら答えた。
「しっかりしてよリンカ! 思い出して! アランは絶対に何かヒントをくれてるはず。あいつはそういう奴だから!」
リンカはアランとの修業を思い出すため、深呼吸をした。
「思い出すよ……。私……」
目を瞑って記憶をたどっていき、リンカはこれまでの修業を追体験した。
そんな中、アランの言っていたある言葉が引っかかった。
「魔術の基本はエネルギーの集中。そして、武術の基本も同じ。体の持っている力をいかに最大限相手にぶつけるか」
「何をぶつぶつ言ってるんだい? 何をやったって僕には勝てっこないよ」
リンカは目を開け自分の右手を見つめた。
杭の上に何時間もついていた右手だ。
エネルギーを一点に集中させる……。
「もしかして……!」
リンカは拳を握りしめた。
「体が持っているエネルギーは人によって決まってる。そこに魔術も武術も関係ない。ってことは。私にも勝機があるってことですよね? アランさん!」
先ほどまで意気消沈していたリンカの目には自信が満ち溢れている。
「な、なんだい? 急に」
アランは少しだけリンカの自信に押され、後退りした。
「私は木崎源十郎の娘です。弱いはずがない。そうでしょ?」
リンカは左足を前に出して、右手を引いた。
「アランさん、私の新しい必殺技。試してみます」
リンカは拳を強く握った。
「なに言ってるの? 僕に勝てるわけがないでしょ……? フフッ。だから…………」
アーミーの目に青い光が灯った。
彼の目つきは鋭く変化し、リンカを睨みつけるような目で叫んだ。
「さっさと死ねエエエエ!!!!」
アーミーは叫び声と同時にリンカに向かって手を突き出し、青い光を放った。
だが、リンカもそれと同時に叫んだ。
「木崎流……マジックブレイク!!!!」
リンカはアーミーが放った光に向かって拳を突き出し、光を裂くようにしてパンチを浴びせた。
彼女の放った拳はアーミーの元までたどり着き、彼の防御魔法をも貫いて彼に初めてのダメージを与えた。
「なっ……なにっ……」
アーミーはリンカに殴られて倒れた。
「やったよ! リンカ!」
ビビエルは嬉しそうに言った。
「さあ! 反撃開始です!」
リンカはアーミーに向かって再び殴りかかり、アーミーは何も抵抗できず殴られる。
「ぐはっ!」
リンカはアーミーを何度も殴った。
「ハヤトの悲しみを、子供や兄弟、そして友人を奪われたみんなの悲しみをあなたは一度でも考えたことがありますか!?」
「あってたまるか! そんなもの! 僕は僕の好きなように生きる。他人は関係ない。それが僕のやり方だ!!」
アーミーはリンカに攻撃を仕掛けるが、簡単に避けられてしまう。
「あなたは裁かれるべきです。少なくとも、私はあなたを許しませんっ!!」
リンカはもう一度強くアーミーを殴った。
アーミーは吹き飛ばされ、地面に倒れた。
ビビエルがやってきてアーミーに向かって銃を向けた。
「降参してください。あなたの負けです」
リンカが言った。
「はあ~……」
アーミーは大の字になってため息をついた。
「なんだか前もこんなことがあった気がするな。フフッ。僕は魔剣で腹を貫かれ、一時は死にかけた。でも僕は勝ったんだ」
アーミーは腹の傷を見せながら言った。
「何が言いたいんですか?」
リンカが聞く。
「分からない? 君は頭も悪いんだね……。いいよ。教えてあげよう。きっと今度も僕が勝つってことだよ」
アーミーは目を閉じた。
何かが動き出し、地震のように揺れ始めた。
「な、何!?」
ビビエルが辺りを見回すが何か起きている様子はない。
「ビビエルさん、上!」
2人は空を見上げた。
この施設全体を囲っていたドーム状のシールドが段々小さくなってきていた。
アーミーが立ち上がっていった。
「フフッ。やっぱりこうなったでしょ? 今度もきっと僕の勝ちだ!!!!」
アーミーがそう叫ぶとシールドが一気に縮んでアーミーの体を包み込んだ。
「ウオオオオオオオオオ!!!!」
リンカがアーミーに向かって再び攻撃を仕掛けたが、今度は全く通用せず弾き飛ばされた。
ビビエルが光線銃でアーミーを何度も撃ったがそれも全く効いていないようだ。
「言っておくけど、僕はまだ何1つ君たちに本当の力を見せていない。どうせ君たちは死ぬからさ、お土産に見せてあげるよ。僕の力をね。フフッ」
アーミーは手を空に向かって突き上げた。
すると、辺りに落ちていた瓦礫の山がふわりふわりと浮き上がり、リンカ達に向かって飛んできた。
「リンカ、逃げるよ!」
瓦礫の1つがリンカに当たる直前でビビエルがリンカの手を引いて走り出した。
「あんなに大量の瓦礫を全部別々に操ってる……あれが支配者のオーブの力なの!?」
ビビエルは逃げながらもアーミーの攻撃を見て言った。
四方八方からまるで隕石のように瓦礫が飛んでくる。
ビビエルは光線銃で、リンカは拳で瓦礫を破壊しながら逃げた。
「でも、どこまで逃げるんですか!?」
リンカが聞いた。
「わ、わかんない!! 対策を思いつくまで!!」
落ちていた瓦礫だけでは足りなくなったのか、アーミーは建物を破壊してその破片を飛ばし始めた。
今までとは比べ物にならないほど巨大な破片がリンカ達の行く手を阻む。
「リンカ、こっち!」
ビビエルがリンカの手を引いて瓦礫を避けようとしたが、彼女たちが向かった方向にも瓦礫が飛んできた。
「ビビエルさん!!」
ビビエルは瓦礫の下敷きになってしまい、身動きが取れない。
「リンカ、逃げて!!」
ビビエルは瓦礫に埋もれながらも叫んだ。
アーミーはリンカ達に追いついて傍までやって来ると、魔術の力でリンカを壁に押し付けた。
「く……苦しいっ」
リンカは途轍もない力で押し付けられ、息もできなくなってしまった。
「り、リンカ……」
ビビエルは動けずどうすることもできない。
「フフッ。大人しく負けておけばよかったのにね。もうこれじゃ僕は君たちを殺さないと気が済まないよ。ごめんね」
アーミーは鋭い破片をオーブの力で浮かせると、そのままリンカの肩に突き刺した。
「っ!!」
リンカは息もできずあまりの痛みに声が出ない。
リンカは段々と意識が朦朧とし、視界がぼやけてきた。
アーミーは1本ずつ破片を拾い上げてリンカに突き刺していく。
リンカはその度に体をビクッと動かすが、もはや声は出なかった。
「あれ? 返事が聞こえないよ? おーい」
アーミーがリンカの顔を覗く。
リンカは力なく首を垂れ、下を向いていた。
「フフッ。あーあー、死んじゃったかな」
アーミーはそう言ってリンカに背中を向けた。
「リンカっ……リンカっ……」
ビビエルは瓦礫の下で静かに泣いた。
リンカの体はだらんと垂れ下がり、全く動かなくなっていた。
だが、右手の拳だけは違った。
彼女の拳はいまだに力強く握りしめられていた。
アーミーがリンカに背中を向けた、時リンカはチャンスを悟り最後の力を全て右手に込めてアーミーの後頭部にぶつけた。
「リンカ!!」
ビビエルはリンカが生きていたことを知って叫んだ。
「いってェエエエエエエエ!!!!」
アーミーは後頭部を強打され、痛みに叫びをあげたがすぐに振り返ってリンカの首を掴んだ。
「君だけは、君だけは僕がこの手で直接殺してやる!!」
アーミーは今までにないほど目を見開いて言った。
リンカは彼を本気で怒らせてしまったようだ。
だが、リンカはニヤリと笑みを浮かべた。
「この時を待ってたんです。アーミー」
リンカは自分の首を掴んでいるアーミーの手を掴んだ
アーミーが離れようとしてもリンカは強い力でアーミーの手を掴んで離さなかった。
「何をするつもりだ!?」
「魔術ですよ。アーミーさん」
リンカが掴んでいるアーミーの手には指輪がはめてあった。
支配者のオーブがはめ込まれた指輪だ。
リンカはそのオーブの力を使ってアーミーのシールド装置を破壊し、さらに瓦礫を浮かせて見せた。
「ま、まさか!? オーブの力は限られた魔術師にしか使いこなせないはずだ! なんでお前なんかに!!」
リンカは完全にオーブの力を使いこなしており、彼女の眼は青く光っていた。
「私、何となく感じてたんです。このオーブは私にも使えるって」
リンカはそう言いながらアーミーの体を後ろから締め上げて身動きが取れない状態にした。
瓦礫が宙に浮いたことでビビエルがようやく解放されて立ち上がった。
だがリンカはビビエルを下敷きにしていた瓦礫だけでなく、周りの瓦礫を全て浮かし始めた。
「リンカ、何するつもり……!?」
「ごめんなさい、ビビエルさん……。先に謝っておきます」
「ど、どういうこと!?」
「私はこの人だけには負けられないんです。ハヤトのお兄さんが死んだあの日、もう誰にも負けないって約束したんです」
「分かってるよ!! だから必死に戦ってるんじゃん」
「でも私の力もあまり残っていません、そしてビビエルさんも。だからきっとこのままだと私たちは負けてしまいます」
「どういうこと!? はっきり言ってよ」
「私が死んだらハヤトのこと守ってあげてくれませんか?」
「死ぬってどういうこと!?」
「ごめんなさい。私は死んでも負けられないんです……」
リンカは力なくそう言って、宙に浮いた全ての瓦礫を自分とアーミーに向かって落とした。
「リンカ!! ダメ~~~~ッ!!!!」
「やめろ~~~~!!!!!」
ビビエルとアーミーの叫び声が響き渡ったが、瓦礫は途轍もないスピードでリンカとアーミーに向かって降り注ぎ、彼らはその下敷きになった。




