第34話 久しぶりだね。アーミー登場。
ビビエルは無数の人形たちから浴びせられる攻撃を全てシールドで受け止め、戦車を1台1台順番に爆弾を仕掛けて爆破していった。
そして両手に構えた光線銃で人形達を焼いて処理していく。
「何体居たって私は倒せないよ!」
そう言いながらビビエルは光線銃を乱射した。
「あれ……。ないなあ。どこに行ったんだろ……」
リンカは最上階に残って瓦礫を投げ飛ばしながらオーブを探していた。
だが、いくら探してもどこにも見当たらない。
「リンカ……リ……カ。……える?」
ニーナからの通信が途切れ途切れになって聞こえてきた。
「ニーナさん? どうしたんですか? おーい。ニーナさん」
リンカが呼びかけるが、ニーナからの応答は全く聞こえなくなってしまった。
それでも彼女が何度もニーナに呼びかけていると、突然こんな声が聞こえた。
「フフッ。君が探してるのはこれ?」
リンカはその声に聞き覚えがあった。
まさかと思い顔を上げるとやはりそこに居たのはリンカが知っている人物だった。
「アーミー……!」
リンカはその場で固まってしまった。
彼の顔を見たことでリンカの脳裏にハヤトの兄が死んだ日の光景が再び蘇る。
アーミーは次の瞬間、手に持ったフラグメントオーブからリンカに向かって青い光を放ち、その攻撃を受けたリンカは吹き飛ばされて地上まで真っ逆さまに落ちていった。
「いった~~!!」
リンカは頭から着地して痛がった。
リンカを追って地上まで降りてきたアーミーはその手にフラグメントオーブを持ってリンカの事を見つめていた。
「久しぶりだね。木崎リンカ。元気だった? フフッ。相変わらず頑丈だね」
最上階から落下したのにも関わらずリンカはほぼ無傷だった。
「大丈夫!? リンカ!」
戻ってきたビビエルが言った。
リンカは何も答えずアーミーの事を睨みつけたまま立ち上がった。
ビビエルが人形たちの攻撃からリンカをシールドで守る。
「攻撃、やめッッ!!」
アーミーがオーブを空に掲げてそう叫ぶと人形達の動きが一瞬で止まった。
辺りは急に静かになり、夜の虫の音だけが聞こえてくる。
「君達はこのオーブを奪いに来たのかい?」
アーミーが聞いた。
「そうだよ! あんたなんかが持ってるより私達がもってたほうがよっぽどマシだと思ってね!」
ビビエルが言った。
「ふ~ん。面白いね。フフッ。簡単に奪えると思った?」
「あったりまえでしょ。今からだって簡単に奪えるよっ!」
ビビエルはそう言って光線銃をアーミーに向かって数発撃ったが、簡単に弾かれてしまう。
「何? それだけ?」
アーミーが言った。
ビビエルは一瞬驚いて一歩足を下げる。
「困るんだよね。最近僕のコレクションを狙う人間が多くて。この前もアンナにこのインフィニティシールドを譲ってくれと頼まれてね。海賊さんが欲しがってるんだって。フフッ。笑っちゃうよね。海賊だって」
アーミーは手に持った球体型の装置を見せながら言った。
「子供達は……」
リンカがようやく口を開いた。
「子供達はどうしたんですか」
「子供達? 何の事?」
「あの日、あなたがハヤトのお兄さんを殺した日、あそこにいた子供達です!!」
「ああ、あの時のね。実はね~、彼らはアンナに売っちゃったんだ。フフッ。だからその後のことは知らないよ。まあお陰でこんなに大きな建物を建てられたけど。でも今は後悔してる」
「誘拐したことをですか?」
「いいや。僕のコレクションは1つも欠けてはならない。全てが大事なコレクションなんだよ。フフッ。譲るなんて絶対に許しちゃいけない」
「遺体を欲しがったのもコレクションの為?」
「もちろん。僕って子供好きでしょ? 魔術も好きでしょ? フフッ。魔術の掛けられた子供の遺体なんて。欲しいに決まってるじゃん」
リンカもビビエルも口を閉じた。
冷たい夜風が吹く。
「大丈夫。安心して。今日から君たちも僕のコレクションに仲間入りさせてあげる。フフッ」
アーミーはオーブを上に投げて、拳を高く突き上げた。
オーブは落ちてくる間にみるみる小さくなっていき、アーミーの指輪にぴったり収まるサイズになって窪みにはまった。
攻撃が来ることを察したビビエルはアーミーに向かって再び光線銃を再び何発か撃ったが、全て弾き返されビビエルに直撃した。
シールドを出すのが遅れたビビエルはそのまま吹き飛ばされて倒れた。
「ビビエルさん!」
ビビエルの事を心配したリンカだが、その隙にアーミーはリンカにも攻撃を仕掛け、攻撃を受けたリンカはビビエル同様に吹き飛ばされた。
「リンカ! 大丈夫?」
立ち上がってリンカの元に駆け寄るビビエル。
「私は、大丈夫です!」
リンカもすぐに立ち上がってビビエルに無事を知らせた。
「じゃあもうそろそろいいかな? みんなうずうずしてるみたい」
気付けば人形たちが次々集まってきてリンカ達を取り囲んでいた。
リンカは拳を、ビビエルは銃を構えて攻撃態勢に入った。
「さあ、みんな……。やれエエエエエエエエッ!!!!」
アーミーが叫んだ。
「リンカ、私達もやるよ!」
「はい! ビビエルさん」
2人は背中合わせになって人形たちと戦った。
ビビエルは光線銃を打ち、リンカは回し蹴りやパンチで人形の顔面を砕いていった。
だが、顔が壊れた程度では動じない人形は何度も立ち上がって襲い掛かってくる。
「何回生き返るの~!! キリがないよ~!」
ビビエルは何度銃撃っても蘇ってくる人形達に苦戦していた。
それはリンカも同様。
「私達このままじゃ……」
「おーい、君達僕と戦うまでもなく負けちゃうの? 期待外れだなあ。また目の前で誰かを死なせることになるよ? フフッ」
リンカはアーミーのその言葉に一瞬手が止まってしまった。
その瞬間人形が撃ってきた銃弾に当たってリンカは倒れてしまう。
「だ、大丈夫!? リンカちゃん!」
ビビエルは人形達に攻撃をしながらもリンカに言った。
「は、はいっ! ごめんなさいっ!」
リンカはすぐに立ち上がってビビエルに襲い掛かる人形たちを殴った。
「リンカ、なんだか元気ないね」
ビビエルが言った。
「え! こんな時に何言ってるんですかっ」
「いつものリンカだったら、私絶対負けません! って言ってあの男に怒ってる所だよ」
「あの人は、アーミーは、私が昔負けた相手なんです!」
「ふーん。だから、怖いんだ? また負けるのが」
「そ、そうじゃありません!」
「いいや。そうだよ。じゃあ、今リンカの頭の中に浮かんでること当ててあげようか? その日自分が負けた時の光景でしょ」
リンカは黙って答えない。
「リンカ、自分の事ばかり考えてたら人は救えない。自分が勝つか負けるかじゃない。誰を救うか救わないかで考えなきゃ」
「誰かを救う……」
「リンカ、言ってたよね。みんなを助けたい、もう誰も失いたくないって」
リンカの頭の中から負けた日の光景がいつの間にか消え、みんなの顔が浮かんできた。
リンカが戦う決心をしたきっかけを作ってくれた、エリオ。
リンカと共に戦う準備をしてくれた、ミルとアラン。
リンカが一番守りたい家族、ハヤト。
そして、リンカを強くしてくれた、源十郎。
「私、みんなの期待に答えたいです。みんなを助けたいです。だから、絶対に負けられないんです」
リンカは言った。
そしてビビエルが爆弾を投げ、近くにいた人形たちが一掃された。
「そうだよ。その意気だよ。だって、リンカは木崎源十郎の娘でしょ?」
「はいっ!!」
リンカは人形達の方へ向かって無謀にも突っ込んでいった。
リンカはすぐに取り囲まれてしまう。
「私、今度は絶対に負けませんから。あなたを倒して、ハヤトのお兄さんの無念を晴らして見せます!!」
リンカはアーミーに向かって指を指し、宣戦布告をした。
「見ててください。おじいちゃんからもらった必殺技ですっ……。あの時にはなかった力……」
彼女はそう言って地面を強く蹴り飛び上がった。
「水泡流……スパイラルデストラクション!!」
彼女は空中で両手を開き、物凄いスピードで回転を始めた。
その回転によって段々と強い風が吹き始め、しばらくすると立っているのもやっとの暴風に変わった。
人形たちはしばらくその風に耐えたが、風はどんどん強くなっていき、最後には耐えられなくなって回転しながら宙に浮かんでいった。
「な、なんだと……」
その暴風は人形達だけで無く、砂や砂利、壊れた戦車の破片や瓦礫までも巻き込んで、もはや近づくことすらできない恐ろしい竜巻と化した。
アーミーやビビエルは建物の柱に掴まり、竜巻に巻き込まれないように必死に耐えた。
「リンカ! その調子だよ!」
ビビエルは柱に掴まりながらもリンカを応援している。
人形達は渦に乗ってその中心であるリンカの元へと吸い込まれていく。
そしてリンカの高速回転に巻き込まれて人形は次々と破壊されていった。




