第32話 でっかいハサミで停電。コントロールルームに侵入せよ! がんばれ。
ビビエルは暗い地下道を気付かれないように慎重に進んでいた。
「送電線の大元はそこから100メートル先にある。見つからないように気を付けて」
インカムからはニーナの声がする。
ビビエルがしばらく進むと、どこからか物音が聞こえてきた。
どうやら地下にも警備員が巡回しているようだ。
「はっ!」
ビビエルは咄嗟に物陰に隠れて警備員が居なくなるのを待った。
だが、警備員はビビエルの方へと近づいてくる。
警備員がビビエルのすぐそばまで来たのを見計らって、彼女は小型の麻酔銃で警備員を眠らせた。
「いっちょあがり~だよ」
そのままビビエルはさらに奥へと進んでいく。
「なんだか不気味だなあ……」
地下道は広々とはしていたものの、あまり整備されておらず岩のような壁がむき出しになっており、どこからか流れてきた水で濡れていた。
ビビエルがしばらく歩いたが人通りは全く無く、地下の警備員の数は少ないようだ。
彼女はそのまま誰にも見つかること無く送電線のある場所までたどり着いた。
壁を太い線が3本伝っており、それが合流して1本の線につながっていた。
停電を起こすにはこの合流部分を切断する必要がある。
「お姉ちゃん、リンカ、着いたよ」
ビビエルはインカムでニーナとリンカに報告した。
「わかった。慎重にやって。リンカはどう?」
ニーナが答えた。
「はい! 私はいつでも大丈夫です!」
「慎重……? 慎重ってどうやったらいいんだろ……。ん~、分かんないよ……。もう普通に切るからね~?」
ビビエルはそう言ってカバンから巨大なハサミを取り出した。
「わかった」
ニーナがそう答えてビビエルがハサミを開いた。
「じゃあ、行きまーす」
そう言った瞬間、ビビエルがふと横を見ると、スナック菓子を食べている警備員が固まってこちらを見ていた。
警備員はすぐにスナック菓子を投げ捨て、銃を取り出してビビエルに向けた。
「だ、誰だお前!」
警備員はビビエルに聞いた。
「あ、怪しいものじゃないよ~」
「じゃあその手に持ってるでっかいハサミは何だ! でかすぎるだろ! それじゃ片手で持てないだろ!」
「で、でっかくなっちゃった」
ビビエルは咄嗟に上手い答えが言えず、警備員は銃を発砲してきた。
ビビエルはその瞬間、腕時計型の装置を操作すると彼女の目の前に光のシールドが出現して銃弾から身を守った。
そして彼女はカバンから巨大な光線銃を取り出して、警備員に向かって撃った。
警備員はビームが当たると固まって動けなくなり、そのまま後ろに倒れた。
「ふう、危ない危ない」
ビビエルはそう言うと再びハサミを取り出し、すぐに送電線を切った。
すると地下道を照らしていたライトが順番に消えていき、一瞬だけ真っ暗になった。
だがその後、非常用のライトが点灯して少しだけ明るくなった。
「はい、今切ったから。リンカは急いで! お願いね」
「分かりました!」
リンカは応えた。
ビビエルは倒した警備員が持っていたタブレットを拾い上げて、コントロールルームの位置を探った。
「お姉ちゃん? コントロールルームの位置が見取り図と変わってるんだけど!」
「わかった。リンカが開錠するまでにたどり着ける?」
「めちゃくちゃ遠いよ~! なんで~!?」
「仕方ない。走って」
「も~!! なんでこうなるの~~!!」
ビビエルはタブレットを投げ捨て、コントロールルームに向かって走り出した。
その頃リンカは建物内に侵入しようとしていた。
夜空の下、停電で暗くなった建物の裏口付近には幸いにも誰も居ない為リンカは見つかることなく作業ができそうだ。
入り口には頑丈なドアが設置され、無理やり突破すればアラームが鳴ってしまう。
扉のすぐ横にパスワードを入力するためのボタンが1~9まで並んでいる。
リンカはそこにビビエルからもらったパスワード解除装置、通称ブルートフォーサーを取り付けた。
ブルートフォーサーはその機械から生えた足でパスワードを自動的に入力し始めた。
「すごい、なんだか虫みたい」
リンカがしばらく待っていると、ピピッという電子音と共に扉が開いた。
「あ! 開きました! よかった~」
「リンカ、急いで。時間は残り10分しかない」
リンカはニーナからせかされる。
「わ、分かりました!」
リンカが建物内に入ると中は停電状態で、地下同様に非常用のライトが付いていたが廊下はかなり暗く、目を凝らさなければ何も見えないほどだ。
リンカは音を立てないようにしながらもできるだけ急いで先に進んだ。
「目標は最上階の一番奥。階段は真っ直ぐ進んで扉を抜けたところにある。頑張って」
「分かりました!」
ニーナからの情報を元にリンカは進んでいく。
リンカは順調にパスワードを解除しながら3つの扉を抜け、階段までたどり着いた。
「よし! 登ります!」
リンカは時間がない為、急いで階段を駆け上がった。
「わっ!!」
すると踊り場で他の警備員とぶつかってしまった。
「も、もうしわけありません!」
リンカはとりあえず敬礼して謝った。
リンカは警備員の制服を着ていた上かなり暗かったので、警備員はリンカが侵入者だとはまだ気付いていないようだ。
リンカは敬礼のままちょっとずつ後ろに下がって距離を取った。
「う~ん? お前誰だ? こんなチビな女いたかな?」
警備員はそう言いながらリンカに近づいてくるが、リンカは彼が近づいて来た分だけ後ろに下がって距離を取った。
「居ます居ます! ずっと居ます!」
「だったらなんで逃げるんだ?」
リンカは近づいてくる警備員からしばらく逃げ続けた。
「い、いや……。あ、あなたが臭いからです!」
「なんだと!? 臭い? そんなはずはない! 俺は4年連続ミスター無臭王に選ばれた男だぞ? それを知らないとは、やっぱり怪しいな! お前、IDを見せろ!」
警備員は銃を取り出してリンカに向けた。
「うーんと……。うーんと」
リンカは色々と考えたが、時間もなく対処法が思いつかなかったので、思い切り警備員に向かって右フックを食らわせた。
そのまま倒れて気絶した警備員を端に寄せてリンカは逃げた。
「ごめんなさーい」
リンカは急いで階段を駆け上がった。
リンカは最上階にたどり着き、施錠管理室と書かれた扉の前に立った。
リンカはここに入ってコントロールルームを開錠する必要がある。
「ニーナさん、ここカードキーがないと開かないみたいです!」
施錠管理室に続くその扉には、パスワード入力キーだけでなくカードキーのスキャナーが取り付けられており、両方解除しなければ入れないようになっていた。
「どこかにカードキーはない? 探して」
ニーナの言う通り、リンカはカードを探したが見当たるはずはない。
どこか他の部屋にあるかもしれないと思い部屋を1つ1つ覗いていくと、人のいる部屋を見つけた。
そこは警備員の休憩室になっているようだ。
中では2人の警備員がトランプをしながらお菓子を食べている。その2人がいる机の上にカードキーが無造作に置かれていた。
2人は会話に夢中なようで、どうにかすれば気付かれないようにカードを奪えそうだ。
「ニーナさん、私一か八かでやってみます」
「待って、危険すぎる。作戦を考える」
「大丈夫ですニーナさん、私に任せてくださいっ」
「ダメだったらどうする?」
「その時はその時です!」
そう言ってリンカは部屋の中に入った。
部屋の中の2人はすぐに気づいてリンカの方を見たが、リンカは瞬時に逆方向を向いて顔を見られないようにした。
「誰だ?」
「ハッハッハ。気にしないでくれ。私は偵察にだけさ。君たちが真面目に仕事をやってるかを見るためにね。どうやら真面目にやってるみたいじゃないか。感心感心。ハッハッハ」
リンカは声を低くしながら後ろ向きでそう言った。
「俺達トランプしながらおかし食べてるだけだけど」
「いいじゃないか。お菓子はおいしいんだ。おいしいものは偉い。そう言うことだ。ハッハッハ。続けてくれ」
リンカは彼らに背中を向けたまま移動し、備品チェックを装って棚のものをチェックし始めた。
警備員達はリンカを怪しんだが、再びトランプを始めた。
リンカは背中を向けたまま警備員達に近づいて言った。
「ハッハッハ。楽しそうだね。私も混ぜてくれないかい?」
「いや~、だからお前誰だよ! こっち向けよ!」
「ハッハッハ。私は恥ずかしがり屋なんだよ~」
リンカはそう言いながら机に近づき、2人が見ていない隙にカードキーを取った。
「おっと。もうこんな時間か。いけないいけない。会議に遅れてしまう。じゃあ、君たちトランプを楽しめよ~」
リンカはそう言って外へ出ようとした。
「おい、ちょっと待て」
リンカは警備員に止められた。
「な、なにかな? 私は急いでるんだが」
「これ、持ってけよ」
警備員はリンカにお菓子をくれた。
「あ、ありがとうありがとう。じゃあ、またね~」
リンカはそのまま部屋から出た。
「どうなった?」
ニーナがリンカに聞いたが、リンカはしっかりとカードキーを手に入れていた。
「私、盗みの才能があるのかもしれないです」
リンカはカードキーを使って施錠管理室に入ると、そこには巨大なパネルがあり大量のボタンが並んでいた。
説明書きも特になく、それぞれアルファベットと数字で番号が振ってあるだけだ。
「ニーナさん……。これ、わかんないです……」
リンカは何も分からずお手上げ状態だ。
「わかった。ちょっとビビエルに調べてもらう」
ニーナが答えた。
その頃ビビエルは、両手に麻酔銃を持ち猛ダッシュをしながら次々と現れる警備員達を撃ちまくっていた。
奥に進めば進むほど警備員は増えていく。
「も~!! どんだけ居るんだよー!」
ビビエルは息を乱しながらも走り続けた。
時間は9分8分と減っていき、もう残りは後3分しかなかった。
ビビエルは時間内にたどり着かなければ、電気が復活するためコントロールルームへの侵入も難しくなる。




