第31話 潜入、魔術品収集管理局!
「今から計画を話すから、聞いて」
シナプスのオフィスに戻ってきてたリンカとビビエルにニーナが言った。
「はいっ。お願いします」
リンカは作戦が間近に近づいてきて緊張している様子だ。
「これが施設の見取り図だよ」
ビビエルが大きく印刷された見取り図を見せた。
「施設の中には至る所にセキュリティゲートがある。普段はゲートを通るには生体認証が必要。でも、停電してる時は4桁のパスワードだけで通れる」
「そこでこの子の出番ってわけだね!」
ビビエルは四角い箱のような機械を机の上に出した。箱の側面には9本の足が生えている。
「そう。まずはビビエルはカッターで地下にある送電線を切って。送電線が切れると電力が止まって停電状態になる。そこでリンカはこの機械を使ってパスワードを解除しながら中に侵入してほしい」
「これって何ですか?」
リンカがビビエルが出した機械を持ち上げて言った。
「これはブルートフォーサーだよ。私が作ったんだ~。パスワードを解除させるための機械!」
「なるほど~」
「1つ気を付けてほしいことがある。停電しても10分経つと予備電源が起動してまた電気が使えるようになる。だから、リンカは10分以内にオーブのある場所までたどり着いて欲しい」
「そんな! そんなの無茶だよ! どこにあるかも分からないオーブを10分で見つけるなんて……」
「そう。分かってる。だから助っ人を呼んだ」
「助っ人……?」
ニーナがリンカの後ろの方を見たので、リンカは後ろを振り返った。
「やっほ~、リンカちゃん。また会ったね」
そこに居たのはミルだった。
「ミル!?」
「そう。彼女ならきっとオーブの場所を占える。だから呼んだ」
「本当に!? ミル、そんなことできるの?」
「うーん、フラグメントオーブくらい強力なアイテムだったら魔力を辿ったら見えるかも~。やってみないと分からないけど」
「やってみて」
ニーナがミルに頼んだ。
「は~い」
ミルはそう言うと、机の上に赤いテーブルクロスを引いて大きな水晶玉を置いた。
「電気消して~?」
ミルがそう言うとニーナが電気を消した。
「電気消す必要ってあるの?」
ビビエルが聞いた。
「必要だよ~。だって雰囲気って大事でしょ?」
ミルは下から赤いライトで自分の顔を照らしながら言った。
「じゃあ、ちょっと集中するね」
ミルは目を瞑って両手を水晶玉に添えた。
「おおっ、それっぽい……」
ビビエルが言った。
「しっ、静かに!」
ミルは声を出したビビエルに注意した。
再びミルは目を瞑って集中し始めた。
暗闇の中、水晶玉がぼんやりと光り始めた。
「見える、見える。なんだか、青い光」
「青のフラグメントオーブだね! 支配者のオーブだ!」
ビビエルは興奮している。
「ずっと登って行ってる。高いところにあるかも」
「何階か突き止めて」
ニーナが言った。
「建物の一番高い所だ」
「最上階だね!?」
リンカが聞いた。
「最上階の……ずっとずっと奥。扉を何枚も超えた先。一番奥……」
ミルは目を閉じたまま、見取り図を指でなぞり始めた。
「一番奥の真ん中の部屋……。ここ!」
ミルは目を開け、見取り図を指さした。
「ここに一番強いエネルギーを感じる。多分フラグメントオーブはここにあるよ~」
「分かった。ありがとう」
ニーナがミルに礼を言った。
「リンカ」
ニーナがリンカを呼んだ。
「オーブのある部屋は他の部屋よりもセキュリティが厳しそう。だからコントロールルームに侵入してアラートが出ないようにして欲しい。そうすれば帰りも楽」
「コントロールルームですか?」
「コントロールルームは地下。だから送電線を切った後ビビエルが侵入して。リンカはビビエルがコントロールルームに入れるように、セキュリティロックの開錠をしてほしい。オーブのある部屋のすぐ近くに開錠するためのパネルがある。最初はそこに向かって」
ニーナが見取り図を指しながら指示した。
「分かりました!」
「ビビエルはリンカが開錠できたらコントロールルームに入って」
「分かった! お姉ちゃん」
「じゃあ、話はこれで終わり。準備はいい?」
リンカとビビエルは黙って頷いた。
「こっちに来て」
ニーナはリンカ達を別の部屋に誘導した。
その部屋には金属製のベッドが2台置いてあり、そには魔法陣が描かれていた。
さらに魔力エンジンがその2台のベッドに繋げられていた。
「ほら、魔力エンジン! 私が頑張って直したんだから」
ビビエルは自慢げに言った。
「2人とも荷物を持って横になって」
ニーナに言われた通り、ビビエルとリンカはそれぞれカバンに持ち物を入れ、ベッドの上に横になった。
「準備ができたら転送する」
「リンカちゃん、がんばれ~」
「ありがと、ミル」
別れを言ってリンカは横になった。
「よし、がんばるぞ」
ビビエルも横になって目を閉じた。
「じゃあ、転送する」
「えっ、もう!? ちょっと心の準備が!」
リンカがそう言ったがニーナは問答無用でエンジンを起動させ、轟音が鳴り響いた。
リンカ達は強い光を感じると共に視界が揺れ動くように感じた。
全身を冷たい空気に包まれたような感覚に陥り、寒気で震えた。
視界の揺れはどんどん激しくなっていき、ある時ピタリと止まった。
気付くとリンカは別の場所にいた。
辺りは真っ暗で下からは振動を感じる。
リンカはここが遺体を輸送中のトラックの中だと気付いた。
そして、リンカが居るのは遺体が入っていた箱の中。
腐敗防止のために冷却装置が設置され、震えるほど寒い。
すぐにここから脱出しなければ命にもかかわる。
リンカは試しに箱を思い切り蹴ってみた。
「なんだ!? 今のは」
すぐ傍で人の声が聞こえた。
「トラックの振動だよ。いちいち気にするなよな~」
トラックの荷台の中には2人の警備員が居て見張っているようだ。
リンカはもう一度蹴ってみた。
「やっぱりおかしいって! 中に何か動物が入ってるのかもしれない。開けてみよう」
「おい、やめとけって! 局長に殺されるぞ?」
箱の僅かな隙間から男が1人近づいてくるのが分かった。
彼は箱を覗き込み始めた。
「よく見えない……。何が入ってるのかも知らないしなあ……」
リンカはその瞬間、拳を思い切り突き上げ、箱を割りながら男にアッパーを食らわせ気絶させた。
「な、なんだ!?」
もう1人の男がリンカに銃を向けたが、そのままリンカはトラックの天井付いている棒に掴まり、回し蹴りを男に浴びせた。
2人とも気絶したことを確認すると、リンカは急いでもう1つの箱を開けた。
そこにはやはりビビエルが入っていた。
「ハァハァハァ……死ぬかと思った!! ありがとう!! リンカ!!」
ビビエルは震えながら箱から出てきた。
インカムからニーナの声が聞こえてきた。
「どう? うまく侵入できた?」
「だ、大失敗だよ! 死ぬところだったんだからね! 時間帯見計らって送ってよ!!」
ビビエルはニーナに怒鳴った。
「搬送時間が分からなかったから仕方ない。リンカは大丈夫?」
「はい、一応大丈夫です」
リンカは応えた。
トラックはしばらく進み、リンカ達は警備員の服を奪ってその服に着替えた。
「あはは……ダボダボですね」
リンカの着た服は全くサイズが合っていない。袖を中に折り曲げて何とかごまかした。
「リンカはやっぱりおチビさんだね」
ビビエルはそう言いながら、巨大な銃を取り出して構えた。
運転手が荷下ろしに来る所を襲おうという魂胆だ。
しばらくすると、トラックは施設内に入ったようで、ピタリと動かなくなった。
リンカとビビエルは見つめ合って頷いた。
そして荷台の扉が開いた瞬間、2人は外に飛び出して警備員達を一瞬で倒した。そしてそのまま彼らを荷台に押し込んで扉を閉めた。
「ふぅ~。やるね~。私達、いいコンビかも」
ビビエルはリンカとハイタッチした。
リンカ達が降り立ったのはまさに魔術品収集管理局だった。
上空にはドーム型にシールドが張ってあるのが肉眼でも確認できる。
森に囲まれた広大な土地に3棟並んだレンガ造りの不気味な建物がドームの下にそびえ立つ。
3棟はそれぞれ横につながっており、ヨの字の形に並んでいる。
「ここがそうなんですね……」
2人は建物を見上げて息を呑む。
「よし、リンカ! 私は地下に侵入してくるから、後は頼んだよ」
ビビエルはそう言ってリンカの肩を叩いた。
「任せてください! 絶対負けませんから!」
「うん、その意気だね」
ビビエルはそのまま走ってリンカの元を離れた。
「リンカはビビエルが送電線を切るまで入り口近くで待機してて」
インカムからニーナの声が聞こえる。
「はいっ。分かりました!」
リンカはそう言って、建物の入り口に近づくと傍にあった木の陰に隠れた。




