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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
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第29話 リンカの魔術修業! クイクイーン誕生か。

「アランさん、よろしくお願いしますっ!」


 リンカは早速図書館に来て、アランに魔術を教えてもらうことにした。


「僕に魔術を教わるからにはそれ相応の覚悟はしてもらうよ?」


「何をですか?」


「最強になることだ」


「もちろんですっ! その為に来たんですから!」


「よろしい。その意気だ。それで? 君はどれくらい魔術が使えるんだ? 僕に見せてくれ」


「魔術は使えませんっ」


「使えない? 少しもか? 物を浮かせたりとか、動かしたりもダメか?」


「はいっ! 1から教えてくださいっ!」


 リンカは頭を下げた。


「おいおい、よくそれで学園に来られたなあ。とんでもない度胸だ」


「ありがとうございますっ」


「褒めたんじゃない、今のは皮肉だ。そういえばこの前は魔力値6なんて言ってたが、あれもまさか本当か……?」


「はいっ! 本当です」


「はぁ~」


 アランはため息をつきながら顔を手で覆った。


「よし、わかった。今回ばかりはこの僕も本気でやる必要がありそうだな。ちょっと待ってろ」


 アランはそう言ってまた倉庫に入って何か物を探し始めた。


「あったあった! 流石にこれはまだ使えるだろう」


 アランは2つの金属製の腕輪を取り出して来てリンカに見せた。


「なんですか? それ」


「これは魔力増強リングさ! 簡単に言えば魔力エンジンの超小型版だ。小型なだけあって威力はかなり低いが、魔力値6の底辺魔術師を一般レベルくらいにすることはできるだろう。ちなみに大きな声では言えないが、これは俺が頼んでビビエルに作ってもらったんだ。喧嘩する前にな」


 アランは大きな声で言った。


「ビビエルさんすごーい」


 ビビエルに感心するリンカを横目に、アランはその2つのリングをリンカの両腕にはめた。


 リンカはリングをはめた瞬間、何かが全身に流れ込んで来るのを感じた。


「これで、私強くなったんですか?」


「まさか! そんなもので強くなれたら苦労はしない。それを渡したのはとりあえずは君の適性を見る為だ。魔術を知るには魔術を使えるようになるしかない。魔力値6だと一般的な魔術も使えない可能性が高いからな。ほら、この本を浮かせてみてくれ」


 アランは机の上の埃を払って一冊の本を置いた。


「わ、わかりました。やってみます!」


「そういえば君は魔術の道具は持ってるのか?」


「はいっ! こないだ買ったばかりの物が!」


 リンカはまだ使っていない新品のメリケンサックを取り出した。


「おお、メリケンサックか! 良い趣味だな~。気に入った」


 リンカはメリケンサックを右手で握ると、そのまま本に向かって拳を突き出した。


「本に向かって1点に集中するんだ。自分の全ての力を本を浮かせる方向にぶつけるように」


「集中……集中……」


 リンカは本に向かって意識を集中した。リンカは本に向かって思い切りパンチするところを想像した。


 すると突然リンカの右の拳が赤い光を放った。


 光はそのまま本に向かって飛んで行き、本はその衝撃で遠くに飛ばされた。


「うわっ!」


「ああ、こりゃ全然だめだな」


「だ、だめですか? もう一度やらせてください!」


「いいやだめだ。これは没収」


 アランはリンカの両腕にはめていた腕輪を回収した。


「正直言ってガッカリだ。期待外れだよ。君にはどうやら基礎の基礎から叩きこまないといけないみたいだ」


 アランは再び倉庫に戻り、木の杭とハンマーを持ってきて突然床に打ち込み始めた。


「な、何やってるんですか! 穴開いちゃいますよ!」


「床にパンチして大穴を開けた君には言われたくないね」


 アランはリンカを無視して杭を打ち続け、杭は床に深く突き刺さった。


「君にやってもらうことはただ1つだけだ。この杭の上に片手で逆立ちをする。以上」


 アランはそう言った。


「逆立ち? なんでですか?」


「口答えをするな。僕は君の師匠だ。そして君は弟子だ。弟子は師匠のいう事を黙って聞くもんだ。ベスト・キッドでもそうやってただろ?」


「そんな……」


「さあ、分かったらさっさとやるんだ。時間がないんだろう?」


「でも逆立ちするって、どれくらいの時間ですか?」


「そうだな~。まずは1時間くらいでいいだろう」


「い、1時間!?」


「なんだ? できないのか? がっかりだな~。できないなら今すぐやめてもらってもいいんだぞ」


「や、やりますっ! 私、強くなりたいんです!」


「ようし、だったらやってもらおう。その間、僕は読書でもしようかな」


 アランは近くにあった椅子に深く腰掛け、本を読み始めた。


「1時間片手立ち……。よし! やってやります!」


 リンカは杭に手をかけ、勢いよく体を上にあげた。


 数秒の間リンカは片手で杭の上に立っていたが、すぐにバランスを崩し倒れてしまった。


「1回目の記録は~、12秒だな。最初にしてはまあまあだな」


 アランは本を読みながら、どこからか出してきたストップウォッチをリンカに見せた。


「く、くやし~!」


 リンカはもう一度挑戦するがやはりすぐにバランスを崩してしまい、うまくいかない。


 それでもめげずにリンカは立ち上がりまた倒れてを繰り返していた。


 時間が経つ毎に体中の色んな場所が痛み始め、リンカはもうボロボロだった。


 リンカの記録は少しずつ伸びていったが伸びても数秒ずつで、1時間にはいつまでたっても届きそうにない。


「ハァハァハァ……もうだめだ~……」


「弱音を吐いていいのは死ぬ時だけだ。敵は弱音を吐いても許してはくれないぞ?」


 アランは厳しい言葉をリンカに投げかける。


「そんなあ……。おなかすいたよ~……」


 リンカが言った。


 その時、図書館の扉が開き誰かが入ってくる音がした。


「あ~。リンカちゃんいた~」


「え? ミル?」


 その声の主はミルだった。


「一緒にご飯食べようと思ったのに全然いないから探したんだよ~」


「おいおい、いつからここは子供のたまり場になったんだ?」


「あ~、あなたリンカちゃんが言ってた図書館に住んでる人だよね~。いっしょにご飯食べる? 私が作ったんだ~」


 ミルはアランに焼きそばの詰まった弁当箱を差し出した。


「おお!! 焼きそばかぁ!! 焼きそばは僕の大好物なんだ! ジューシーなお肉とソースの香り……。実にそそられるねえ。よし、いいだろう。君は食事係としてこの図書館の出入りを許可しよう。ところで君の名前は何て言うんだ?」


「ミルだよ~」


「よろしくミル。僕はアランだ」


 リンカは休憩に入り、ミルと一緒に焼きそばを食べ始めた。


 アランは食事は一人で取りたいと言って奥の部屋に消えていった。


「リンカちゃんがんばってるね」


 ミルが言った。


「でもこんなにボロボロになるとは思わなかったよ……。ミルは今日何してた?」


「新しい占いの研究だよ。物凄い占い思いついちゃった~」


「え! どんなの? 教えて!」


「それはね~、企業秘密だよ~」


「そんな~……」


「リンカちゃんはうまくいってる?」


「うーん……。見ての通り全然だね。あの杭の上に1時間片手で逆立ちしろって……」


「大変だね~」


「そうなんだ、なかなかうまくいかなくて……。どうしたらいいんだろう……」


 その時、リンカはふと本が落ちているのが目に入った。


 リンカが最初に吹き飛ばしてしまった本だ。


 その本は背表紙を上にする形で綺麗に立っていた。


 少しだけページが開き、表紙と裏表紙がぐにゃりと曲がった形でバランスを取っている。


 それを見てリンカは思った。


 まるで何かが本を下に押し付けているようだ。


「押し付ける……。そうか!!」


「どうしたの? いきなり」


「私、今までバランスを崩しそうになったら前後左右に体重を動かして無理やりバランスを取ろうとしてた! だけど違ったんだ。全身の力を下に向かって押し付ければよかったんだよ! 自分の体を意識するんじゃなくて杭の方を意識すればよかったんだ!」


「なんだか分からないけど凄そう~」


「ちょっと私、やってみる」


 リンカはそう言って杭の上に立った。


 そして足を大きく開き、下に向かって力が入るようにした。


「わあ、すごい! バランス取れてるよ~」


 ミルが興奮気味に言った。


 今まではすぐに体が揺れてしまっていたリンカだが、今度は体がしっかりと固定され非常に安定していた。


 リンカは集中して目を閉じ、時間が過ぎるのを待った。


 ミルは食後の紅茶を飲みながらリンカの様子を見守った。


 刻々と時間は過ぎていく。


 10分、20分。リンカは段々疲れてきて、汗を流し始めた。


 汗は彼女の頬を伝わって頭の上に向かって落ちていく。


「がんばれ!」


 ミルが見ていることもあってか、リンカの集中力は途切れなかった。


「杭に集中……。杭に集中……」


 時計の針はどんどん進んでいき、ついにあと1分の所まで来た。


「リンカちゃん! 後1分だよ~! がんばれ!」


 リンカには緊張が走り、深呼吸を始めた。


「あと10秒! 9……。8……。7……。6……。5……。4……。3……。2……。1……」


「ゼロ! わっ、わわっ!」


 リンカが最後のカウントをすると、一気に力が抜け、彼女はミルに向かって倒れて思い切りぶつかった。


「ご、ごめん! ミル!!」


 リンカは謝ったが、ミルは笑っていた。


「リンカちゃん! やったね~」


「うん、やった!! 私、やったよ!」


 リンカは満面の笑みで言った。

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