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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
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第28話 犯人は何故2人を殺したか?

「そんなことよりだ。リンカ! 君はこれで分かっただろ? シナプスは悪の組織なんだ。分かったらシナプスを辞めるんだ」


「うーん。確かにアンナって人が悪そうなことは分かりました。でも、ビビエルさんやニーナさんは良い人です! 間違いありません!」


「分かってないなあ、全然分かってない! そういう問題じゃないんだよ。分かるか? 例えどんなにいい人間でも条件さえ揃えばどんな悪事だって働くんだ」


「うーん。分かりません」


「はあ……。これだから素人は……」


「じゃあ、こういうのはどうですか? 私はシナプスに残ります。でもこれからはあなたのスパイとして働きます。それでもし本当にシナプスが悪い組織だって分かったらすぐに裏切ります!」


「スパイ~?」


「そうです! アランさんはアンナって人を倒してクリスちゃんを助けたいんですよね? その気持ちは私も同じです。私はそのお手伝いをします。なので、私はあなたのスパイです!」


「君はアホか! いきなりやって来たシナプスの人間にスパイなんて任せられるか! 二重スパイの可能性だってあるだろう? 僕は疑い深いんだ。こう見えてもね」


「いいえ。任せられます! 私は今日シナプスに入ったばかりです。そんな人間にシナプスが二重スパイなんて頼むと思いますか?」


「言われてみれば……そうだな?」


「ね、いいですよね? 私はあなたのために働きます。掃除係じゃなくて、スパイとして!」


「ふーん」


 アランはそう言いながらリンカの周りを回りながら彼女を見た。


「弱そう。却下」


「え!?」


「お前絶対弱いだろ! チビだし? アンナにかかればお前なんか、一瞬でぺしゃんこだ」


 アランは手をパンと叩いて見せた。


「そうですか……。じゃあ私の力を見せればいいんですね?」


「力? なんだ? 僕と腕相撲でもするつもりか? 言っておくが僕は強いぞ。昔は剣道を習っていたこともある」


 アランがあれこれ言っているのを遮り、リンカは思い切り床に向かってパンチした。


 建物全体が大きく揺れ、何冊もの本が本棚から落ちた。パンチした床には大きな穴が開いてしまった。


 アランは驚いてまたタブレットを床に落とした。


「どうですか? これが私の力です」


「そ、そうか。ふーん。まあまあだな。まあ及第点といった所だろう。よろしい。君を僕のスパイとして雇ってやろう。だが、給料は安いぞ?」


「ありがとうございます!」


 リンカは嬉しそうに言って、アランが落としたタブレットを拾い上げて彼に渡した。


「じゃあ、そろそろ教えてくださいよ。サイファーが殺人を犯した目的はなんだったんですか?」


「ああ。これだな……。この遺体に掛けられているのは入れ替え魔法だ」


 アランは2回目に殺された2人の被害者の写真を見せてきた。

 

 腹部辺りに魔法陣が刻まれている。


「入れ替え魔法?」


「入れ替え魔法には、必ずペアとなる魔法陣が存在する。魔力を送り込んで魔法陣を起動させると、それらの魔法陣によって魔術を掛けられた2人の人間の居場所が入れ替わるっていう仕組みだ。


だがこの2人の魔法陣はペアにはなっていない。


だからこの2人の遺体と他の誰か2人の居場所を入れ替えようとしてるってわけだな。


つまり、遺体をどこかに送り込んでそこへ侵入しようとしてるっていうのが僕の推理だ。しかも2人同時にな」


「なるほど……」


「で、遺体が運び込まれるのは……?」


「魔術品収集管理局です」


「ああ、なるほど。いい場所を選んだな~。魔術師なら誰もが入りたがる夢のような場所だ」


「そうなんですか?」


「あそこにはこの世のありとあらゆる危険な魔術品が集まっているんだ。まさに魔術の博物館ってとこだ」


「じゃあ、サイファーはその中の魔術品を狙っているって事なんですね」


「ああ、その通りだ。だがあそこに入るのは普通、不可能だ。何故ならあそこにはインフィニティシールドが張ってあるからな」


「インフィニティシールド?」


「絶対に破れない防御魔法さ。絶対に破れないということは、つまり絶対に破れないってことだ」


「何度も言わなくても分かります……」


「でもまさか遺体を使うなんてな……。入れ替え魔法は人間にしか掛けられない。だから遺体を使う必要があったんだ。そして、入れ替え魔法であればシールドを超えられる。流石はサイファーって所だな」


「サイファーを止める方法はないんですか?」


「遺体は今どこにある?」


「多分シナプスが管理してると思います」


「なるほどね」


 アランはタブレットを操作して遺体の場所を突き止めてニヤリと笑みを見せた。


「だったら1つサイファーを欺く方法がある」


「なんですか?」


「入れ替えられる前に入れ替えろ作戦だ」


 アランはどこからか飛んできた椅子に飛び乗って2階部分の本棚に飛んでいった。


「あったあった、これだ」


 アランは1冊の本をもってリンカの元へ降りてきた。


「なんですか?」


「オーバーライドだよ。奴の魔法を上書きしてしまうんだ」


「そんなことができるんですか?」


「ああ、簡単ではない。相当強力な魔力が必要だ。そこでだ……」


 アランは図書館の奥の倉庫に入っていって何か探し物を始めた。


 彼は大きな機械を引っ張り出してきて、リンカに見せた。


「こいつの出番だ」


 アランはその機械の埃を払った。


「なんですか? それ」


「魔力エンジンだ。これで強力な魔力を生み出せる。かなり古いタイプだが、まだ使える。燃料のガソリンがあればの話だが。ただ、丁度いいことにこの学園にはガソリンを沢山持ってるやつがいる」


「まさか、ニーナさんですか?」


「そうだ! 彼女は根っからのレトロマニアでね、未だにガソリンエンジンのバイクに乗っている。笑えるだろ?」


「いや、かっこいいと思います!」


「ふーん。まあいい、これを奴に渡せば何とかしてくれる」

 

 アランはエンジンを持ち上げようとしたがかなり重く、中々持ち上がらない。


「ありがとうございますっ」


 リンカがエンジンに手をかけると彼女は軽々と持ち上げてしまった。


「じゃあ、ニーナさんの所に行ってきます! 何か情報が得られそうだったらまた報告しに来ますねっ。スパイなんで!」


「ああ、行ってらっしゃい。期待しないで待ってる」


「そうだ! アランさんは魔術の専門家なんですよね? だったら、私に魔術師に勝つ方法を教えてくれませんか」


「おいおいおい、僕が魔術の専門家なのは間違いないが、君は格闘家だろ? 格闘技に関してはこれっぽっちも分からない。お手上げだ」


「いいんですっ。魔術だけ教えてもらえれば! 魔術を知れば魔術師にも勝てるようになるっておじいちゃんは言ってました。おじいちゃんも実はこの学園で学んでいたみたいなんです」


「ほう。木崎源十郎の言う事なんだったら間違いないだろうな」


「知ってたんですね、私のおじいちゃんが木崎源十郎だってこと」


「言っただろ? 僕は疑い深い。君の事も隅々まで調べてある」


「それで、教えてくれますか? 魔術の事。私がシナプスに入ったってことは多分これから戦うことになります。今のままじゃ、私負けてしまう気がするんです。だから、お願いしますっ」


 リンカは頭を下げた。


「わかった、そこまで言うんだったらいいだろう。僕が直々に魔術を教えてやろう。僕は君の雇い主だからな」


「ありがとうございますっ! じゃあまた来ますっ!」


 リンカはそう言って駆け足で図書館を出ていった。


「慌ただしい奴だ。でも、嫌いじゃない」


    ◇


 リンカはシナプスのオフィスに戻って魔力エンジンをニーナとビビエルの2人に見せた。


「またずいぶん古い機械だねぇ。動くのかなあ」


 ビビエルはエンジンを眺めながら言った。


「ガソリンを持ってきた。使って。もちろんお代は貰う」


 ニーナがガソリンを持ってきてくれた。


「やっぱお姉ちゃんはケチだな~」


 ビビエルはガソリンを少しエンジンに注ぎ込み、エンジンについているロープを思い切り引っ張った。


 エンジンは一瞬だけ震えて音を出したがすぐに止まって動く気配はない。


「う~んこりゃ駄目だね。流石にこれだけ古いとねえ……。完全に壊れちゃってるよ」


 ビビエルが言った。


「ビビエル、直せる?」


 ニーナが無表情のままビビエルに聞いた。


「あったりまえでしょ~? こんなのちょちょいのちょい……とはいかないけど、簡単だよ!」


「ビビエルさんって機械得意なんですか?」

 

 リンカが興味津々な様子で聞いた。


「得意も何も、アランが学園で一番の魔術師なら、私は学園で一番のエンジニアだよ?」


「ビビエルさん、すごい!」


 ビビエルはどこからか巨大な工具箱を取り出すと、あらゆる道具を使いながらエンジンを分解していった。


「2人とも、アランからの情報を元にこれからの作戦を立てたから聞いて」


 ニーナが言った。


「まずこの遺体の受け渡しがあるのが3日後。ビビエルはそれまでにエンジンを直して。そして、遺体に施された魔術の上書きをする。遺体が管理局に運ばれるのが3日後の夜。私達は遺体が運び込まれる時間を見計らって、入れ替え魔法で管理局に侵入する」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「私たちが侵入するんですか……? でもなんで?」


「そう。サイファーが管理局から盗み出そうとしているのは、恐らくフラグメントオーブ」


「フラグメントオーブってなんですか?」


「この世界で一番強力な魔術アイテムだよ」


 ビビエルが答えた。


「フラグメントオーブは3色存在する。赤が強者のオーブ、青が支配者のオーブ、そして緑が知恵者のオーブと呼ばれてる。どれも強力な力を持っていて危険。サイファーに奪われるわけにはいかない」


「そんなにですか?」


 リンカが聞いた。


「そうだよ、リンカ! 20年前のサイファーは支配者のオーブを使って王国を乗っ取ったんだから」


「だから、今度はサイファーに手に入れられる前に私達が手に入れる。フラグメントオーブが手に入れば、サイファーに対抗する強力な武器にもなる。それに管理局はやっぱり怪しい。局長の男が子供を誘拐しているという話もある。そんな人間がフラグメントオーブを持っているのは危険」


「それに! こっちも動けば今回の事件の犯人も動くかもしれないからね!」


 ビビエルが付け加えた。


「なるほど……それで侵入するってわけなんですね……。だったら、私にやらせてくれませんか?」


「リンカ、ダメだよ! 危険すぎる」


「でも、結局はこの中の誰かがやるんですよね? だったら私がやります! 私、力には自信があるんです」


 リンカは力こぶを作って見せた。


「わかった……。じゃあ私も行く! 遺体は2人分あるでしょ?」


 ビビエルがニーナに聞いた。


「大丈夫。2人まで侵入できる。私は警備隊と協力して犯人の動向を探る」


 ニーナは言った。


「でも結局1回目の事件がなんで起こったかが分からないんだよね~……」


 ビビエルはぶつぶつと呟きながらまた魔力エンジンをいじり始めた。


「じゃあ、私またアランさんの所に行ってきますね!」


「行くって何しに?」


「3日後に戦う為の修業です!」


 リンカはそう言ってオフィスを出ていった。

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