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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
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第26話 リンカ、シナプスに加入! 事件の捜査開始

 翌朝、リンカは学園の中を駆け回りやっとのことでニーナを見つけた。


「ニーナさん!」


 リンカはニーナに駆け寄った。


「リンカ?」


 全速力で走っていたリンカはぜえぜえと息を切らしながら、ニーナに向かって言った。


「私、シナプスに入ります!」


「ちょ、ちょっとリンカ! どういうこと?」


 ニーナと一緒にいたビビエルが言った。


「ビビエルさん、私、シナプスに入ります!」


「それはもう聞いたよ~! 何があったの?」


「私、みんなを助けたいんです。もうこれ以上被害者も増やしたくない。私にできることがあればやらせてください!」


「ありがとう。私は是非リンカに入って欲しい」


 ニーナがそう言ったが、ビビエルが止めた。


「ダメだよ! リンカ、どれだけ危険か分かってる? 生憎だけど、リンカは巻き込めない」


「ビビエルさん、行かせてください! 私、もう誰も失いたくないんです」


「だったら、尚更ダメだよ。私達と関わったら余計危険が増えて、きっといつか誰かを失うことになる」


「いいえ。ビビエルさん。私がシナプスに入っても入らなくても、きっと亡くなる人はでてきます。私が入ることでそんな人が少しでも減るんだったら私はやりたいんです!」


「シナプスに入らなかったら知ることもなかったような辛い思いをするかもよ? それでもいいの?」


「はい! 知らずに誰かが辛い思いをするよりも、私にそれを救うチャンスがあった方が私は良いと思ってます。それになにより……私は絶対負けませんから!」


「わ……分かった! リンカがそこまで言うんだったら……」


「ありがとうございますっ」


「でも1つだけ! 約束して?」


「なんですか?」


「無茶はしない事。逃げて助かることがあれば逃げること。分かった?」


「わ、わかりました……」


「いい? 言ったからね!」


「これを守ってくれないと……私が辛い思いをするんだから」


 ビビエルはリンカに聞こえないようにボソッと言った。


「じゃあ、リンカこっちに来て」


 ニーナがそう言ってリンカを案内する。


 やって来たのは学園の奥の奥。図書館とは反対側に位置するその場所にニーナは立った。


「私の手を取って」


 ニーナは言った。


「え? どういうことですか? ここ、何もないですけど」


 リンカの言う通り、辺りには草木が生えているだけで、何か建物がある気配すらない。


「ほら、リンカ早く~」


 ビビエルがリンカの反対側の手を取り、リンカはもう片方の手でニーナの手を取った。


「目を瞑って」


 リンカは言われた通り目を瞑る。


「お姉ちゃん、合言葉を」


 ビビエルがそう言うと、ニーナが目を瞑ったまま合言葉を言った。


「パンダの名前、音重ねがち」


 ニーナが合言葉を言うと、リンカの体が一瞬だけ暖かい光に包まれたような感覚になった。


「もう目を開けて大丈夫」


 目を開けると、リンカは別の場所に移動していた。

 

 そこは巨大なアーチ型の空間が広がり、両脇に何台ものコンピューターや見たこともない機械、そして魔術に関連する道具が所狭しと並べられていた。


「リンカ~! シナプスにようこそ!」


 壁には大きくSynapseの文字が描かれていた。


「ここが、シナプス……」


 リンカが言葉を失っていると、ニーナがタブレット端末をリンカに渡してきた。


「今回の事件の資料。早速読んで。時間がない」


「は、はいっ」


「亡くなった3人には特に共通点は無くってね、何の為にこんな事をやったんだろうかと思ったんだけど、2回目の事件はそれが分かりそうなんだよ!」


 ビビエルが言った。


「これを見て」


 ニーナがリンカの後ろからタブレットを操作して、リンカに画像を見せた。


「なんだか大きい建物ですね」


「ここは魔術品収集管理局。魔術に関する危険な物を安全に保管するという目的で動いている機関らしい。でも公的な機関じゃない。国からも独立していて、個人が勝手に運営してる」


「でも、なんでここなんですか?」


「2回目の事件でトーマス王子に遺体を欲しがっている人物がいるから渡してほしいと圧をかけられた。その人物が誰かを探していたら、ここにたどり着いた」


「でもお姉ちゃん、どうやってそれが分かったのか全然教えてくれないじゃん」


「それは秘密」


「ずっとそれなんだもん」


「でもなんで遺体なんて欲しがるんでしょう」


「あの遺体には強力な魔術が掛けられていたからね。そういうのを欲しがる変わった人が世の中にはいるんだよ~」


「そうなんですね……」


「でも犯人が何を狙って殺人を犯したかっていう所にまでは繋がらないんだよね~。どんな魔術が掛けられていたかさえ分かれば、何か見えてきそうなんだけどな~」


「防御魔法が邪魔をして遺体の分析が進まない」


「じゃあ、例えば魔術の専門家に聞いてみるっていうのはどうでしょう! 学園になら分かる人が1人くらい居るかも!」


「居るには居るんだけどねぇ……」


「リンカ、あなたにお願いがある」


「なんですか?」


「この学園にはあらゆる魔術に詳しい男が1人だけいる。彼に協力を求めて来てほしい」


「私がですか?」


「そう」


「でもなんで……? それって誰なんですか?」


「アラン・ブラックウォール」


「あ、アランさんってあの図書館の!?」


「そう。あなたに接触しておいてもらう為にもあそこへ行ってもらった」


「確かアランさんってシナプスの事すごい恨んでいたような」


「そうなんだよ~! なんでか知らないけどさ~! ほんと男って意味不明だよね~」


 ビビエルが言った。


「でも、分かりましたっ! 私、やってみます!」


「ありがとう。これはあなたにしかできない。お願い。タブレットに情報は入ってる。がんばって」


「はいっ! じゃあ、さっそく行ってきまーす! って、どうやってここから出ればいいんですか?」


「リンカ、目を瞑って?」


 リンカは言われた通り、目を瞑る。


「そして、もう一度同じように合言葉を唱える。合言葉って覚えてるー?」


 ビビエルがリンカに聞いた。


「う~んと、確か……パンダの名前、音重ねがち!」


「でしたっけ?」


 リンカがそう聞いたが返事は返ってこない。


「わっ!」

 

 リンカが目を開けると、いつのまにか元の場所に戻ってきていた。


「早く行かなきゃ!」


 リンカは急いで図書館へと向かった。


「ごめんくださ~い」


 リンカは図書館に入るなり、大声でアランを呼んだ。


「おい、こは家じゃないんだぞ? 神聖な図書館だ! 騒いでるのは一体誰だ?」


 スーッと宙に浮いた椅子と共にアランが降りてきた。今日は逆さまじゃないようだ。


 アランは椅子から降りてリンカを歓迎した。


「おー! リンカじゃないか。探してたんだ! もう埃が溜まってきてて、埃ってのは一体どこからやってきてるんだ? 世界最大の謎だな」


「あ、あの~すいません。今日は掃除に来たわけじゃないんです」


「なんだ~、もう掃除に飽きたのか? 飽き性はよくないぞ。いいか? 何に対してもとにかく続けることだ。わかるか? 続けられる人間にだけ見えてくる明日があるんだよ」


「ち、違うんですっ! これ、見てください!」


 リンカはアランにタブレットを差し出し、アランはそれを覗いた。


「ずいぶん悪趣味な画像だな……。ほうほう。ああ。でも、これは面白い。非常に興味深いな。かなり強力な魔術で遺体に魔法陣が描かれている。これはまさに、そう! 魔法のアートだ! いや、実に芸術的だ。こんなものどこで手に入れた?」


 そう言いながらタブレット内の写真を次々と見ていくアランだったが、あることに気が付きタブレットを落としてしまった。


「おい! これは……? どういうことだ?」


 アランはタブレットを再び拾い上げ、タブレット内に表示されていたシナプスのマークを指さした。


「私、シナプスに入ったんです! それで、今回の事件をアランさんに協力してほしいというお願いに……」


 リンカはそこまで言ってアランに止められた。


「ああ、みなまで言うな。聞きたくない。知ってるだろう? 僕がシナプス大っ嫌いだってことを!」

 

 アランは耳をふさぎながら言った。


「し、知ってましたけど、でもどうしてなんですか? シナプスはサイファーと戦う正義の組織のはずです。私のおじいちゃんが所属してたくらいなんですから」


「違う! 分かってない、君はなんにもわかっちゃいない。シナプスは悪魔だ! いや、悪魔よりももっと悪い……悪悪魔だ!」


「どうして? ちゃんと説明してくれないと納得できません!」


「僕が悪いって言ってるから悪いんだ! これで十分だろう?」


「ダメです!」


「それはどうしても?」


「ど~~しても、ダメです!」


「ほんとにほんとにどうしても?」


「ほんとにほんとにどうしてもダメです! 納得いきません。ニーナさんたちは良い人です!」


「あ~~、わかったわかった、降参だ」


 アランはそう言って降参のポーズを取った。


「君がそこまで言うのなら話してやってもいいだろう。でももし、僕の話を聞いて君もシナプスを嫌いになったら即刻辞めてもらう! あんな組織に人が増えること自体間違ってる!」


「わ、分かりました」


「いいか、確かにシナプスは元々いい組織だった。でもそれは昔の話だ」


「どのくらい昔ですか?」


「う~ん、ひいふうみいよ……。とにかく! 結構昔だ」


 アランは指で数を数えながら答えた。


「いい組織だったシナプスもある1人の人物の登場によって状況はガラリと変わった」


「1人の……人物」


「そう、それがアンナ・ブラックウォール。僕の母親だった女だ」

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