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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
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第25話 エリオの家でパーティー楽しいな。リンカの決断。

 その頃、生徒会室ではニーナが何者かと電話で話していた。


「また生徒が2人殺された。まだ誰がやったのかは分からない」


 ニーナが電話相手に伝えた。


「お前も珍しく苦戦してるな? 3人も殺されるなんてな。サイファーもそろそろ本格的に動きだしたか」


「私も先手を打ちたい。情報があったら教えて欲しい。特に、あの遺体を欲しがってる人間について。あなたはその人を知ってる?」


「もちろん知ってるさ。あたしがあいつを偉くさせてやったんだ。お前には一つだけヒントをやるよ。ヒントは1単語。ドールハウス」


「遊ばないで。ちゃんと教えて」


「おいおい、それじゃあ面白くないだろ? あたしは謎解きが大好きなんだよ。ま、精々がんばりな~」


「待って。もうちょっと……」


 ニーナのその言葉も届かず、そのまま電話は切れてしまった。


 スピーカーからは単調な電子音が流れ、ニーナは携帯電話をゆっくりと耳から離した。


    ◇


 リンカ、ミル、エリオの3人は塔の上でサンドイッチを食べていた。


「今朝リンカが起きる前にこっそり作ったんだ~」


 ミルはランチボックスから取り出したサンドイッチをリンカとエリオに渡した。


「すっご~い! ミルは料理が上手なんだね~」


「これって料理って言うんですの……? でもまあ、ありがとうございます……」


「エリオちゃんがありがとうって言った!」


 ミルが驚いて声を上げた。


「わ、わたくしはサンドイッチに感謝しただけですわ。決してあなたに感謝したわけじゃありません!」


「もう、素直じゃないなあ」


「お~いし~~」


 そんな二人のやりとりも気にすることなく、リンカはバクバクとサンドイッチを両手に持って頬張った。


 勢いよく食事を進めるリンカを横目に、エリオは少しずつサンドイッチを齧った。


「エリオちゃん、食欲無いの?」


 あまり食事が進んでいないエリオにミルが聞いた。


「いいえ、そんなことありませんわ」


 ミルの言葉にエリオは思い出したかのようにサンドイッチを急いで食べ進めた。


 だがその勢いもすぐに止まる。


 また小さくゆっくりとサンドイッチを齧りながらエリオは呟いた。


「わたくし、これからあのクラスでやっていけるんでしょうか」


「エリオちゃん、珍しく落ち込んでるね」


「本当は今日、ペギーさんとロージーさんを呼んで寮でパーティをする予定だったんですわ。料理も沢山用意してもらったんですが、無駄になってしまいますわね……」


「なんで? 無駄にすることないじゃん」


 リンカが言った。


「え?」


「私達が行くよ? そのパーティ! ね、ミル?」


「パーティー! 行きた~い」


「ほんと……ですか?」


「うん。友達でしょ~?」


「ペギーさんとロージーさんにも謝りに行こうよ。許してくれるかは分からないけど……」


「いいえ。それはできませんわ」


「なんで?」


「お兄様の件がはっきりするまでは、彼女達とは距離を取ろうと思っています。そうじゃないとまた彼女たちを傷つけてしまうだけだと思うんです」


「ふーん。エリオちゃんって意外と優しいんだ」


「ま、まあそうですわ。貴族の心の広さってやつですわ」

 

 エリオは少し涙ぐみながらも胸を張って答えた。


「じゃあ、さっそく家に帰ってパーティーの準備しようよ!」


「き、気が早くありませんか?」


 エリオはそう言ったがリンカとミルはやる気満々だった。


「夜は短いからね~! よし行こう~」


 リンカとミルはそう言って立ち上がると、エリオの手を引いて塔を飛び出して行った。


    ◇


 3人はそれぞれの寮に帰って準備した後、エリオの部屋に集まっていた。


 すでに日は暮れており、窓の外には星空が広がっていた。


「ど、どう? 似合うかな?」


 リンカはエリオの使用人にドレスの着付けをしてもらい、ミルに見せた。


「リンカちゃんかわいい~! 私はどうかな~? かっこいい?」


 ミルはタキシード姿で髪をワックスで固めて登場した。


「うんうん、似合ってると思う!」


「一度来てみたかったんだ~。タキシード」


「でも、なんで?」


「だって響きがいいじゃん、タキシード。チアシードみたいで」


「そ、そうかな……?」


「でも、リンカちゃんなんか様になってるね~。本当のお嬢様みたいだよ~」


「こんなの初めて着たんだけどね……」


 部屋で騒ぐ二人の元に支度を済ませたエリオが現れた。


 彼女は煌びやかな純白のドレスを身に纏い、滑らかな黒髪をなびかせていた。


「お2人共、料理の準備ができましたわ。行きましょう?」


「ワ~オ」


「やっぱり本家は違うね~」


 二人はエリオに見とれながらも彼女の後について行き、大きな扉を開けた。


 扉の向こうは広々とした客間で、天井にはいくつものシャンデリア吊るされている。


 そして何よりも、長いテーブルの上に並べられた沢山の豪華な料理が二人の目に止まった。


「す、すごい!」


「今日はビュッフェスタイルにしてみましたの」


 エリオは自慢げに言った。


「これ、全部食べていいの!?」


 リンカは今にもよだれを垂らしそうな勢いで目を輝かせながら聞いた。


「ま、まあ、好きなものを取って召し上がって」


「ありがとう!! エリオさん!」


 リンカはエリオの手を取って感謝した。


 そのままリンカはテーブルに向かって走っていくと料理を次々に取り始めた。


「ここもエリオちゃんの部屋なの~?」


 ミルがエリオに聞いた。


「そうですわよ?」


「A棟の寮はすごいんだね~」


 ミルは感心した。


 リンカが物凄いスピードで料理を平らげていく横で、ミルとエリオは2人で座ってゆっくりと食事を楽しんだ。


「どれもすごくおいしいよ~! 流石ミルちゃんだね~」


「そんなことありませんわ~。今日は~、うん。まあまあですわね」


 エリオはそんなことを言いながらも手を止めること無く食べ続けた。


「リンカちゃんずっと食べてるよ~すごいなあ」


 リンカはテーブルから離れることなく次々と料理を手に取っていく。


「あれは野獣か何かですか……?」


 リンカのあまりの食いっぷりにエリオも感心している。


「リンカちゃーんこっちで一緒に食べようよ」


 ミルがリンカに呼びかけるが、食事に夢中のリンカには聞こえていないようだ。


「もう料理全部無くなってしまうんじゃないですの……?」


「え!? もう無いんですか!? ガリも!?」


 リンカは何やらシェフと話している。


「あ、そうだ。今日みんなで遊ぼうと思って持ってきたんだけど」


 そう言ってミルはカバンから木の箱のようなものを取り出した。


「ミル~、料理全部無くなっちゃった~」


 リンカは落ち込んだ様子でミルとエリオの元へとやって来た。


「早すぎませんか!? 自分の分は取っておいてよかったですわ……」


 エリオはそう言ってリンカに自分の分まで取られないように急いで料理を平らげた。


「ちょうどよかった。リンカちゃんも一緒にやろうよ」


「やるって、何を?」


「相性診断だよ」


 ミルが持っていた木の箱を開くと、箱が1枚のボードに変わった。


 そのボードには手を置くプレートが二つ取り付けてあり、ボードの中心には水晶玉の半球のようなものが埋め込まれていた。


「相性診断?」


 エリオが聞いた。


「ここに手を置くと、手を置いた2人の相性に応じて何か物がでてくるんだ~」


「うーん、どういうこと?」


「まあまあ、一回やってみようよ。やってみたら分かるよ」


 そう言ってミルがボードに手を置いた。


「じゃあ、私もやる!」

 

 リンカももう一方のボードに手を置くと、ボードに描かれたラインが光り始めた。


 ラインは手を置いたプレートから中心の水晶玉に向かって伸びており、光がラインに沿って進んでいく。


 二人の手から出た光が水晶玉に到達した時、水晶が一瞬だけ一際強い光を放った。


 すると上から何かが落ちてきてリンカの頭に当たった。


「痛っ!」


 リンカの頭に当ったそれはそのままリンカの手の中に入った。


「これは~?」


「それは木彫りの熊だね」


「これは相性は良いのか悪いのかどっちなの……?」


「え~と、木彫りの熊は~」


 そう言いながらミルは本を取り出してページをめくり始めた。


「あった。木彫りの熊は、相性が良くなる希望アリ! ラッキーアイテムは鮭って書いてあるよ」


「やったね! 鮭買わなきゃ!」


「わ、わたくしにもやらせてください!」


 今度はエリオが名乗り出た。


「よ~し、じゃあリンカちゃんとエリオちゃんでやってみてよ」

 

 リンカとエリオは先ほどと同じように手のひらをボードの上に乗せた。


 すると再び水晶玉が光り始め、また何かが上から落ちてきた。


「これは……?」


「割れた鏡だね」


「割れた鏡……割れた鏡……。あれ~? 本には載ってないなあ……」


「うーん、ちょっとなんか不吉だね……」

 

 リンカは気まずそうに言った。


「だ、大丈夫ですわよ。大体わたくし、こんなの全然信じてませんから! 占いなんて迷信ですわ」


 エリオが慌てて言った。


「そ、そうだね! そうだよね~?」


「え~、私は信じてほしいけどな~」


 ミルは残念そうだ。


「とりあえず一旦相性診断はおしまいです! ちょっと外で食後のコーヒーでも飲みませんか?」


 エリオが2人を誘った。


「私、コーヒー苦手なんだ。できればコーラが良いな~。あ、でも炭酸苦手だから炭酸抜きで」


「ざ、残念ながらそんなものはありません。紅茶を用意させますわ。リンカさんはコーヒーでよろしいですか?」


「はい! お願いします」


 3人はテラスに出て夜の空を眺めながら、コーヒーや紅茶を飲んだ。


「はあ……。やっぱりコーヒーは落ち着きますわね」


「私、コーヒーなんて初めて飲んだかも……。結構苦い~」

 

 リンカはコーヒーを選んだことを少し後悔した。


「まったく。あなた達はまだまだお子様ですわね」


「エリオさんは大人だな~」


「そういうエリオちゃんもなんかお兄ちゃん大好きって感じで子供っぽくなかった?」


 ミルがエリオに言った。


「そういえば。エリオさんのお兄さんってどんな人?」


 リンカがエリオに聞いた。


「ずっとわたくしの心の支えだった人ですわ」


「もしお兄さんがサイファーだったとしてもついて行くって言ってたみたいだけど」


「ええ。わたくしたち兄弟は幼い頃に両親を亡くし、今の王であるジョセフに引き取られてその子のトーマスと共に暮らしてきましたわ。


まあ、当然と言えば当然なのですが、王の子であるトーマスと比べてわたくし達兄弟の扱いは酷いもので、何か理由をつけて食事を取らせてもらえない事などはよくありましたわ」


「ひどい!」


「そんな時、お兄様が調理室から食料を盗んで来てくださり、私に与えてくれました。とてもうれしかったですわ。


でもある時、お兄様が食料を盗んだことがジョセフ王に知られてしまい、お兄様は部屋に閉じ込められてしまいましたの。


一週間後にようやくお兄様が出てきたときにはひどく痩せていらっしゃって、わたくしは悲しかったですわ。


でもその後、それ以上に悲しい事実を知ってしまいましたの。お兄様はわたくしも盗んだ食料を食べたという事実を頑なに明かさず、何度聞かれても、何をされても黙っていたそうなのです。


恐らく暴力的な事もされたに違いありませんが、お兄様はわたくしの事を一切話さなかったのですわ。


それを聞いてわたくし思いましたわ。わたくしだけはこれから一生何があってもこの人を絶対に裏切ってはいけないと」


「エリオちゃん……辛かったね……」


 ミルはそう言ってエリオを抱きしめた。


「だから、もしお兄さんがサイファーでも裏切れないってことなんだね」


「そうですわ」


「エリオさん。実は私、シナプスっていう組織に入らないかって誘われてるんだ」


 リンカは立ち上がって言った。


「シナプス……ですか?」


「そう。サイファーを倒すためにできた組織なんだって」


「そうだったんですね」


「もし私がシナプスに入って、お兄さんが本当にサイファーだったらエリオさんはどうする?」


「もちろん、わたくしはあなたの敵になりますわ」


「そうだよね」


「でも、わたくしはそれでいいと思います。わたくしやお兄様が間違ったことをしていたなら、最後はあなたが止めてください。わたくしにはお兄様を裏切ることはできません。でも、あなたならわたくし達を止めることがきっとできると、そんな気がします」


「エリオさん……」


「知っての通り、わたくしは良い人間ではありません。恐らくお兄様も他人から見ればそうなのかもしれません。ですが、あなたは違います。あなたは良い人間ですわ。そして、これからも良い人間であり続けるべきです。なぜならあなたには力があるから。わたくしの代わりにその力で多くの人を救ってください」


 その言葉を聞いて、リンカの頭の中にはハヤトの兄やサイファーの被害者たちのこと、そして亡くなった祖父の顔が浮かんできた。


「分かりました!! エリオさん! 私、シナプスに入ります!」


「ええ。その意気ですわ」


「私、多分今まで怖かったんです。負けるのが。でもエリオさんの話を聞いて、私も頑張らなきゃって思いました!」


「よかったね~。リンカちゃん」


「うん。私、何があってもみんなを助けます! そしてこれからも、絶対に負けません!」


「敵ながら応援してますわ」


「ってもう完全に敵みたいになってるけど! 本当にお兄さんはサイファーなの?」


「実は以前から薄々そうなんじゃないかと思ってましたの。お兄様はわたくしに何も言わずに居なくなってしまいましたわ。でも、お兄様は居なくなる直前によくこう言ってましたの。エリオ、俺はいずれこの国の頂点に立つ。その時まで待っていてくれ。とね」


「そっか……。分かったよ。でも、もし敵になったら容赦はしないよ」


 リンカはエリオに向かって拳を突き出した。


「怖いですわね。でも、私も負けませんわ」


 3人は笑いあって、そのまま夜を明かした。


 だがリンカは笑いながらも心の中でこう思っていた。


 エリオの兄がサイファーではありませんように。

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