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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
第二章 学園
24/124

第24話 緊急会議! ニーナの生徒会長解任まであと3日。けっこうピンチ。そして、ミル vs エリオ 決着。

 リンカ達が向かったのは巨大な会議室。

 

 既に多くの人物が集まっており、騒がしかった会場はニーナの登場に静まり返った。


「迅速な対応ありがとうございました。会長」


 ベッキーがニーナに言った。


「ちょっと~、私デートキャンセルしてまで来たんだからね。本当に重要な話なんだよねぇ、眼鏡ちゃん?」


 遅れてやってきたリリィがベッキーを問い詰めた。


「ええ。もちろん。また学園で殺人が起こったんです」


「それは知ってるよ~! でもこんなに大人数集めて会議する必要があるの~?」


「当たり前でしょう!? こんな短期間に3人も亡くなったんですよ! もう少し言葉を考えてください」


「ふ~ん」


「え~、皆さん。今回集まってもらったのは他でもありません。先日事件が起きたばかりであるにも関わらず、今回事件が再び起きてしまった事について会長にどう責任を取ってもらうか話し合うためです」


 ベッキーは集まった全員に向かって言った。


「責任!? ニーナちゃん辞めるって事!?」


 リリィが言った。


「もちろん条件によっては辞めてもらうことになるでしょうね。ここまで大事になったからにはさすがに誰かが責任を取らないと」


「でも、そこまでする必要ある? だって悪いのは殺人犯じゃん! ニーナちゃんはなんにも悪くないんだよ?」


「はぁ。呆れた。そんな事も分からないんですか? なんであなたのような人が副会長なんてやってるんでしょうか?」


「そりゃあ、私の方がかわいいからでしょ!」


「は~~!? 聞き捨てなりません!! 私だってこう見えても、よくかわいいって言って貰えます!!」


「ふ~~ん、誰に?」


「お、お兄ちゃんです」


「お兄ちゃんはノーカウントでしょ!! 私なんか、恋人がいるもんね! うらやましいか!! うらやましいだろ!」


「へっ、うらやましくなんてあるもんですか! 私のお兄ちゃんは世界一かっこいいんですから。他の男なんてゴミカスです! このゴミカスの彼女がァ!!」


「話が進まないから、そろそろ黙って」


 ニーナが口を開いた。


 リリィとベッキーは何人もの人間に見られていることに気づくと、恥ずかしそうにそのまま縮こまって椅子に座った。


「私の責任問題については後で話す。先にこの事件の話をさせて。知っての通り私は前回の事件を受けて警備員を増員した。


そしてこの学園には強力な結界が張られていて、外部からの侵入はとても難しい。


そんな状態で学園に侵入して人を殺すのはほぼ不可能。


でも、犯人はそれを我々に気づかれることなくやってのけた。どう考えても普通じゃない。


だから私は、犯人は学園内部の人間の可能性が高いと思った。


特に警備員に関する情報を手に入れられそうな生徒会の人間が怪しい。


だからその怪しい生徒会の人間とそれぞれの事件の第一発見者に今日は集まってもらった」


 ニーナのその言葉に会議室にいた全員が息を呑んだ。


 この中に殺人犯が居る可能性があるのだ。


「今後は警備員にここにいるメンバーの動向を特に注意して見てもらうことにした」


「も、もしかしてそれってデートにもついてくるってこと!? 最悪!」


「学園外なら問題ない。でも学園から出るときは手続きをして欲しい。不用意な出入りは控えて」


「こんな時にデートだなんて、不謹慎にもほどがあります。あなたが犯人なんじゃないですか?」


 ベッキーがリリィに言った。


「眼鏡ちゃんなんでそんな酷いこというの!?」


 リリィは怒った。


「警備員の監視対象にはもちろん会長も入ってますよね?」


 ベッキーはニーナに聞いた。


「私も入ってる。安心して」


「まあ、安心はできませんね。全部会長が指示を出してるんですから。私の指示でも一部の警備員は動くようにしてくれないと納得できません」


「分かった。そうするように手配する」


「それはどうも。あとは会長の処遇をどうするかですが、私も考えてみました。今日を除いてあと3日間、会長は事件を徹底的に調べてください。その間に犯人を見つけて事件の真相を解明することができなければ、あなたには生徒会長を辞めてもらうというのはどうでしょう?」


「3日!? どう考えても短すぎでしょ! 事件を解決したいというよりも眼鏡ちゃんが個人的にニーナちゃんを辞めさせたいだけにしか聞こえないけど~?」


 リリィが割って入り、ベッキーに言った。


「ええ、そう聞こえるでしょうね。だって彼女が辞めてしまったら、こんなポンコツの副会長しかいないんですもの。そうなれば、生徒会長の座はすぐに私に回ってきます」


「キィ~~!!!!」


 リリィは怒ってベッキーを威嚇した。


「で、どうなんですか? 会長? 私の要求を呑んでくださいますか?」


 ベッキーはニーナに問う。


 会議室にはしばらく沈黙と緊張の時間が流れた。


 会長が変わるということはこの会議室にいる全員に少なからず影響がある事だ。


 皆は息を呑んでニーナの返事を待った。


「分かった」


 ニーナはそう一言だけ言って立ち上がった。


「話すことは以上。みんなもう解散して大丈夫」


 そう言ってニーナは部屋から出ていこうとした。


「ちょ、ちょっと待ってください! 分かったってどういう意味ですか? そのままの意味で取って良いんですね!?」


 あまりに簡潔な返事だったのでベッキーはニーナに確認した。


「大丈夫」


 最後に一言そう言って彼女は居なくなった。


「やった!」


 ベッキーは勝利を確信し、小さくガッツポーズを取った。


 部屋に居た皆が動揺する声がざわざわと響いた。


    ◇


 ニーナが去った後、リンカ達は会議室を後にして広場に戻ろうとしていた。


 クラスの皆が集まっている可能性があったからだ。


 広場に向かっている途中でニーナの放送があり、事件の犯人が見つかるまでは学校は休校になることが告げられた。


 リンカ達が広場に着くと、予想通りAクラスの面々が集まっていた。


 だが何やら騒ぎが起きているようだ。


「お前おかしいよ!」


 少年がエリオに向かって言った。


「そうです!」


「私達より」


「お兄さんを取るって」


「言うんですの?」


 ペギーとロージーが交互に抗議した。


 彼女達だけでなく、皆がエリオを囲んで彼女に対して文句を言っていた。


「ど、どうしたの?」


 リンカがクラスメイトの一人に聞いた。


「サイファーがエリオちゃんのお兄さんなんじゃないかって噂が流れてて、みんなでそれを問いただしてたんだけど……。エリオちゃんはもしお兄さんがサイファーでも味方するって言い張ってるの」


「何度も言ってますけど、わたくしは絶対にお兄様を裏切りません。もしお兄様があなた達の敵なら、わたくしもあなた達の敵です。お兄様が人類の敵ならば、わたくしも人類全員敵に回す覚悟です」


 エリオが力強く言った。


「どうしてそんな酷い事が言えるの!? ペギーちゃんのお兄さんはサイファーに殺されたのよ!? それでも、サイファーの味方するって言うの? ペギーちゃんは友達でしょ?」


 少女がエリオを問い詰める。


「もしお兄様が本当にサイファーなのであれば、もちろん味方しますわ。わたくしにとってはお兄様より大事な人はいませんわ」


 エリオはきっぱりと答えた。


「あきれ!」


「ましたわ!」


 ペギーとロージーがエリオに近づいて言った。


 ペギーは今にも泣きそうで目には涙を浮かべている。


「あなたが」


「そんな」


「人だとは」


「思いませんでしたわ!」


「私達!」


「もう終わりですわね!」


「あなたとは」


「今ここで縁を切らせてもらいますっ!」


 ペギーとロージーはエリオに怒り、彼女に背中を向けてどこかへ去って行く。


 我慢できなくなって泣き出したペギーをロージーが慰めていた。


 エリオはその背中を寂しそうな表情で見つめる。


「おい、かわいそうだろ! ふざけんなよ! サイファーは人殺しなんだぞ? あいつの兄貴を殺したんだ! お前も人を殺すってのか?」


 少年がエリオの胸ぐらを掴んで言った。


「お兄様に命じられればなんだってやりますわ。あなただって殺せます」


 エリオは少年の手を払って答えた。


 皆はエリオのその言葉に怒りだし、彼女に暴言を吐き始めた。彼女に対して直接暴力を振るう者もいて、事態は収拾がつかなくなってきていた。


「や、やめて~!!」


 リンカが皆の間に割って入って止めた。


「いじめはダメ!」


「だってこいつが悪いんじゃないかよ~!!」


「そうだそうだ!」


「ダメなものはダメです!!」


 リンカはそう叫ぶと、そのままエリオの手を引いてミルと共にその場を離れた。


「ちょ、ちょっと、どこまで行くんですの……?」


 リンカは学園の中心である塔の真下に来た辺りでエリオの手を離した。


「あれだけあなた達に酷い事をしたわたくしを助けるなんて、あなたどういうつもりですの?」


 エリオがリンカに聞いた。


「私はただ困っている人が居たから助けただけ」


「それ、本音ですの? もしかして、わたくしをこれからバカにしようっていうんじゃないでしょうね?」


 エリオはリンカを問い詰める。


「そんなことしないよ。エリオさんは沢山酷い事をしたけど、だからと言っていじめていい訳じゃないでしょ?」


 エリオは一瞬だけリンカの方を見たが、すぐに目を逸らした。


「そうは言っても、あなた達はわたくしの事を恨んでいるんでしょう?」


「ううん。私は許すよ。元々私は特に何もされてないからね。酷い事をされたのはミルだし……。ミルはどう思う?」


 リンカがミルに聞いた。


「え? 私~? 許すも何も、もともと全然怒ってないよ~?」


「怒ってないのでしたらわたくしの足を踏むのはやめてくださる……?」


 エリオはミルに言った。


「エリオさんは許してほしいの?」


 リンカがエリオに聞いた。


「ふんっ。なんでわたくしがあなた達に許してもらわないといけないんですの? わたくしは貴族なんですから一人でも楽に生きていけますわ」


「そんなの嘘だよ。ペギーさんとロージーさんが去って行った時、悲しかったでしょ?」


「なんで悲しまなきゃいけないんですの? 同情なんて結構です。わたくしは、あなた達庶民みたいに暇じゃないので。こんなところでおしゃべりしている場合じゃないんですの。この辺で失礼しますわ」


「待ってよ!」


 突然去ろうとするエリオをリンカが引き留めた。


「エリオさんは逃げてるだけだよ」


 リンカのその言葉にエリオは踵を返し、リンカに詰め寄った。


「わたくしがいつ逃げたっていうんですか? 勝手に去って行ったのは向こうですわ。ペギーさんもロージーさんも、お兄様だって……誰だってわたくしの前から居なくなっていくんですわ」


「じゃあなんで引き止めなかったの? 引き留めてちゃんと話をしなかったの? エリオさんは怖がってるだけだよ。自分から歩み寄らなきゃ。間違ってたと思ったら謝らなきゃ。自分から行動しなきゃ人は去って行くだけだよ」


「謝る……? わたくしが?」


「そうだよ。ペギーさんだって、ロージーさんだって、ミルだって。謝ったらきっと許してくれるよ」


「うーん。まあ考えてあげてもいいよ」


 ミルは言った。


「……無理ですわ。やっぱりわたくしが謝るなんて考えられません。謝ったら負けです。王族の恥ですわ」


 エリオは腕を組んでそっぽを向いた。


「恥だなんてそんなことないよ。私は謝れる人って一番強いと思うよ? むしろ謝れない人が負けてるんだよ。自分のプライドにね」


「そんな……私が謝るなんて……」

 

 エリオはミルの顔をちらっと見た。


「ふ~ん、そうなんだ。エリオさんはプライドには負けちゃうんだ。な~んだ、期待外れだったな」


 リンカは煽るようにエリオに言った。


「わたくしは誰にも負けませんわっ!!」


 エリオは叫んだ。


「だったら、見せてよ。貴族の謝罪をさ」


 リンカが煽るように言う。


「わ……わかりましたわ。いいでしょう……。そこまで言うのならば謝って見せましょう。世界一、いや、宇宙一の謝罪を今からあなた達に見せて差し上げますわ!」


 エリオはぜえぜえと息を乱しながら言った。


「それでこそエリオさんです」


 エリオは息を乱したまま、ミルの両肩を強く掴んだ。


「ミル・クリスタルさん……わたくしの全力の謝罪で、絶対に許させて見せます。見ておきなさい」


「は、は~い」

 

 エリオのあまりの勢いにミルは少し引いた。


「ご……」


「ご?」


「ご……。ご……。ご……」


「がんばれ……エリオさん」


 リンカはエリオを応援する。


「ご……」


 そこまで言ってエリオはミルの肩から手を離した。


 下を向いてしばらく固まった後、彼女は覚悟を決めた表情で顔を上げた。


 彼女はすぅ~っと大きく息を吸い込んで、ぎゅっと拳を握りしめた。


「ごめんくださぁあああああああああああい!!!!」


 彼女は大声で叫んだ。


 木に止まっていた鳥たちは驚いて飛び去り、近くを歩いていた人たちは皆エリオの方を向いた。


「ごめんください……?」


 リンカは疑問に思ったが、肝心のミルは何故か胸を押さえて尻餅をついていた。


「す……すごい……」


 ミルは胸を押さえたまま、感激の表情を浮かべていた。


 彼女はそのまま立ち上がって、エリオを抱きしめた。


「エリオちゃん!! 私こんな感動する謝罪をされたの初めてだよ!」


「え、ええ。もちろんわたくしがやればこんなもんですわよ」


「いや凄いよ! 私、たまげたよ! おったまげたよ!」


「と、当然ですわ! わたくしの謝罪にはサルでもたまげますわ。それで……結局、あなたはわたくしのこと許してくださいますの……?」


「もちろんだよ! むしろ許すどころか、私の友達になってよ!」


 ミルはエリオに真剣にお願いをした。


「え、ええいいですわよ。わたくしの友達第一号に任命して差し上げましょう」


「やった~!! ねえ、一緒にご飯食べようよ! サンドイッチがあるんだ~。そうだ、塔の上で食べよう!」


「ええ! 行きましょう! 友達第一号のミルさん!」


 そう言って2人はその勢いのまま塔の中に入っていこうとした。


「お、お~い。私を忘れないで~~!!」


 リンカは二人の後を慌ててついて行った。

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