第120話 ソウルの力
迫りくる黒い生物の群れに襲われる仲間たち。
皆必死に戦っているが、圧倒的な群れの数に推し負けて、敵に囲まれつつあった。
だが、そこには記憶を取り戻したリンカがいた。
この世界の魔術の根源であるカーネル・ソウルの一部として生きている彼女には数十匹のゼロの群れなど敵ではない。
彼女は瓦礫の山の上に立つと、手をかざすだけでゼロの群れを吹き飛ばしてしまった。
「リンカちゃん……?」
「ど……どうなってるんだ!? 何が起きた!?」
突然の出来事に仲間たちは驚きを隠せない様子でリンカを見た。
だがリンカはそのまま何も言わず、両手を大きく広げた。
すると彼女の体はゆっくりと宙に浮き始め、そのままアンナの元へと飛んでいった。
皆は唖然とその様子を見上げていた。
「アンナさん!! もうやめて!」
アンナの元まで近づいたリンカは言った。
「なんだ? 今更、あたし自身にも止められやしないさ」
アンナは言った。
「私は記憶を取り戻した。なんでこの国ができたのか。あなたは誰なのか、私知ってる」
「ふんっ。今更記憶を取り戻したところで遅い。だが、それだったら私の目的も理解できるだろう? リンカ」
「分からない……。どういうことなの?」
「ゼロには人類を一人残らず殺すプログラムが組み込まれてるんだ。人類が滅び、そのプログラムが完了してしまったらどうなると思う?」
「ゼロが……消える?」
「そうだ。あたしは人類を滅ぼして、ゼロを消滅させる。そして元の世界を取り戻すんだ!!」
「そんなことをしたら、結局人類が滅亡しちゃうじゃない!」
「いいや。あたしはこれまで、次の世界に必要な人材を殺してその魂を集めてきた。ゼロが消えた後、全ての魂を開放して私は新たな時代を作るんだ!!」
「な、何を言ってるんだあいつは……」
下で見ていたロンドが言った。
「でも、アンナが言っていることが本当なら、もしかしたらお父さんはまだ生きているのかな……?」
クリスは呟いた。
「ダメだよ。私は許さない」
リンカは力強く言った。
「何故だ!! お前もあたしと同じ世界の人間だろう!? あたしの気持ちは分かるはずだ!!」
アンナはリンカに掴みかかる。
「それでも。今この時代に生きてる人たちの事を殺してまでやることじゃない」
リンカは言った。
「ふっ……。最初からお前とは分かり合えないってわかってたさ。だがもうどうしようもない。お前にあたしを止めることなんかできないんだよ!!!!」
アンナはリンカに杖を向けてエネルギーを放った。
だがリンカはその攻撃を片手で止めた。
「なんだと!?」
「アンナさん。そのオーブ、元々は私のエネルギーから作り出したものなんだよ」
リンカがそう言うと、アンナの持っている杖から3つのオーブがふわりふわりと浮いてリンカの元へと飛んでいった。
「だから、これが私の本当の力」
3つのオーブはリンカの体内に入ると、白い光を強く放った。
「な、なんだ!? リンカはなんでオーブを操ってるんだ!?」
地上に居た仲間たちもリンカを見守る。
「リンカちゃん……頑張って!」
ミルは呟いた。
リンカを包み込んでいた光が消え、彼女は新たな姿を見せた。
彼女は白く光り輝く大きな翼を広げ、アンナに向かって手を突き出した。
すると彼女の手から強い光が放たれ、その光に襲われたアンナはそのまま地上に叩きつけられた。
「貴様ァ!!!!」
アンナは再び飛び上がってリンカに襲い掛かるが、リンカはその攻撃を簡単にあしらった。
逆にリンカはその手からエネルギーを放出し、確実にアンナにダメージを与えていった。
「クソッ!! このあたしが……」
リンカはアンナの頬を殴り、空中で突き飛ばす。
「クリスちゃんの体から出て!!!!」
リンカはそう言って拳にエネルギーをため込むと、ダメージを受けて怯んでいるアンナに向かって一気に放出した。
アンナはもう一度強烈な勢いで地面に叩きつけられた。
「っ……!!」
アンナはもう声も出せないほどダメージを受けており、すぐには立ち上がらなかった。
すると、クリスの体から白い光が飛び出してどこかに行ってしまった。
リンカは地上に降り立ち、ロンドやアランも彼女の元へと駆け寄った。
「クリス!!!!」
心配して駆け寄った仲間たちだったが、クリスはすぐに起き上がって返事をした。
アンナはようやくクリスの中から消えたようだ。
「な、なにが起きたの……?」
「大丈夫だ。お前は気にするな」
ロンドは言った。
だが戦いは終わっていなかった。
クリスから飛び出したアンナだったが、彼女はあろうことかゼロの巨大な顔の中に入ってしまった。
「あたしは必ず世界を取り戻す。それがあたしの正義だ!!」
巨大な顔からそんなアンナの声が響き渡る。
「みんな、船の中に逃げてください!!」
リンカは言った。
「でも、リンカさんはどうするんですか!」
ハヤトは心配そうに言った。
「私は大丈夫。なんとかアンナさんを止めて見せる」
リンカはそう言って飛び立っていってしまった。




