第118話 暗闇からの出口
「3……2……1……!!」
その掛け声と同時にリンカは勢いよく扉を開いた。
廊下には何体ものゼロが歩き回っており、扉の開く音で彼らは一斉にリンカ達を見た。
「走るぞお前ら!!!!」
アンナの叫びと共に3人は走って部屋の外に飛び出した。
するとゼロは一斉に彼らの元へ近寄って来る。
3人はそれぞれ棒や箒、ゴミ箱を振り回してゼロを追い払おうとした。
「ぜ、全然効いてないよ!!」
リンカは棒を振り回し続けたが、ゼロはしつこく付きまとってきた。
「クソッ! こんなことやっても無駄だ! とにかく走るぞ!」
アンナはそう言うと、持っていた箒を捨てて走り出した。
「待って!! アンナさん!!」
リンカと日野も彼女に続いて走り出す。
3人はひたすら走ってようやくゼロを撒くと、階段の踊り場へと飛び込んだ。
「一階まで降りられればこっちのもんだ!!」
アンナはそう言って先頭を切って階段を駆け下りていく。
「あ、アンナさん! 待ってよ~!!」
リンカも走って階段を下りたが、その先には悍ましい光景が広がっていた。
そこには上の階とは比べ物にならないほど増えたゼロが人間を食い散らかしていた。
食事中のゼロがリンカ達の方を見た。
「お……おい、逃げるぞ!!」
アンナはリンカと日野の手を引き、再び階段を駆け上がった。
「でも、これじゃあ駐車場に行けないよ!」
「あいつらに食われたいのか!! それよりはマシだろ!?」
アンナは叫びながら走った。
「どこか別の出口はないのか!!」
「あ、あれ!」
日野が指を差した先。そこは壁が崩れて大きな穴が開いており、外へと繋がっていた。
「よし、お前達! あそこから飛び降りるぞ!!」
「え!?」
アンナは驚く2人の腕を引き、そのまま穴から外へと飛び出した。
「うああああっ!!」
2階から地上まで飛び降りた3人だったが、何とか着地し幸い怪我はなかった。
「いったたたたた……」
着地の衝撃で痛がるリンカだったがアンナは有無を言わさず彼女の手を引いて再び走り出した。
「止まるな! すぐに追いつかれるぞ!」
「えっ?」
リンカが後ろを振り向くと数体のゼロが分裂しながら追いかけてきているのが見えた。
「ど、どんだけいるの~!」
「こっちだ!」
駐車場に着いた彼らはそのままアンナの車に乗り込み、彼女はアクセル全開で車を走らせ始めた。
「うわっ!!」
彼女の車は襲い掛かってくるゼロを突き飛ばしながら構内を走り抜けた。
大学を出ると、ゼロの数はかなり少なくなっていった。
だが彼らは常に分裂を続けており、街中が覆い尽くされるのも時間の問題だった。
車のラジオからは正体不明の生命体が出現し人間を襲っているとしてニュースが流れてきていた。
「アンナさん、本当にみんな食べられちゃうのかな……」
リンカは分裂を続けるゼロを見て言った。
「さあな……。でもあたしたちはできることをやるしかない」
彼女は呟いた。
アンナの車は街を走り、リンカはその流れる風景をぼうっと見た。
必死に逃げてきた3人の荒い息が車内に響く。
あれだけ慌ただしく逃げてきたのが嘘なのではないかと思うほどに景色はゆっくりと流れた。
大学から離れれば、人々は何も変わらぬいつもの日々を過ごしていた。
彼らはこれから恐ろしいことが待ち受けているとは露知らぬ顔で街を歩く。
そしてリンカは空を見上げた。
飛行機が白いラインを引きながらゆっくりと空を横切るのが見えた。
そんな飛行機を見て、彼女は海外に出張中の両親を思い出した。
彼らは元気にしているだろうか。
「そうだ」
リンカは携帯電話を取り出すと、両親に電話を掛けようとした。
「ダメだ」
リンカは日野に電話を止められてしまった。
「何でですか?」
「リンカ、いいか? あたし達は教授の目的を妨害しようとしているんだぞ? 電話をするのはまずい。お前の親に迷惑をかけないためにもな」
アンナが言った。
「そんな……」
リンカは残念そうに電話を仕舞った。




