第112話 みんなの為に
「なんで、なんで! 私はあいつに勝てないの……!!」
リンカは悔しさで地面を殴る。
「リンカ。落ち着くんだ」
彼女の心の中から聞こえてくる祖父の声がリンカをなだめる。
「でもおじいちゃん! 私は……!!」
「大切な人を失うことの辛さは分かる。だがな、失ったものはもう取り戻せない。分かるな?」
リンカが顔を上げると、そこにはぼんやりと祖父の姿が見えた。
リンカははっと息を呑んでしばらく彼の姿を見つめたが、再び下を向いて口を開いた。
「それでも私は彼を許せないよ……。私の大切な人たちを次々と……」
「リンカ、悔しいか? それでもお前は使命を忘れてはならん。失った人間より今いる仲間の事を考えろ。お前の後ろに大事な仲間がいるだろう。彼らを見てみろ。お前が守らなきゃ、誰が彼らを守るんだ?」
祖父はリンカの後ろを指さした。
リンカは彼の指さす方を向いた。
ボロボロになった仲間たちが、必死に立ち上がってリンカを助けようとしていた。
「みんな……」
「リンカさん!」
ハヤトが近寄ってきてリンカに手を差し伸べる。
彼女はハヤトの手を取って立ち上がった。
そして、ハヤトはリンカに抱き着いた。
「彼と戦ってるのはリンカさんだけじゃないです。1人で背負わないでください。僕たちもいます」
彼はそう言って何かを取り出した。
「それは……」
ハヤトはリンカと皆に取り出したものを見せた。
「それはまさか、魔剣アヴァリティア……」
アランが言った。
ハヤトが持っていたのは彼の兄が残した魔剣だった。
触れた者の魔力を吸収し、強くなっていく剣だ。
「リンカさん、出来るだけ時間を稼いでください。僕たちがこの剣に魔力を溜めます。大丈夫です。絶対に勝てます。リンカさんは最強ですからっ!」
ハヤトはリンカに微笑みかけた。
リンカはそんな彼をしばらく黙って見つめていた。
たった半年間会っていないだけだったはずが、その時リンカにはハヤトが前よりもずっと大人に見えた。
「うん……分かったっ!! 私やるよ!!」
リンカは頷くと、再びサイファーの方を向いた。
そこにはもう祖父は居なかったが、リンカはニコリと笑って言った。
「ありがとう、おじいちゃん」
そして彼女はサイファーの方へ向かって走り出した。
「また俺に殴られに来たのか? 木崎リンカ」
サイファーは言った。
「いいえ。私はもうあなたには負けません。負けられない理由をおじいちゃんが思い出させてくれました」
リンカはそう言って拳を握る。
「私はみんなの為に戦います。それに……みんなも私と一緒に戦ってくれてます。だから……」
彼女は右足を引いて構えた。
「あなたをぶっとばします!!」
彼女は目を閉じ、ふうっと深く息を吸った。
息を吸いながらゆっくりと拳を引いた。
そして次の瞬間、目を見開いて一気に拳を前に突き出した。
その拳は風を切り裂き、途轍もない衝撃波をサイファーに向かって放った。
「うあっ!!」
その強力な衝撃波はサイファーを襲った。
サイファーは両手をクロスさせて衝撃を必死に耐えた。
だが、衝撃波はあまりに強力でサイファーを体ごとじわりじわりと押し込んでいく。
「くっ……くそっ!!!!」
そしてサイファーは結局衝撃に耐えられず、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「うああああっ!!」
彼は再び地面に倒れる。
「焔流、爆撃烈波…………です」
リンカは足を引いて構えを解くと呟いた。
「くッ……調子に乗るなよ、木崎リンカ!! 全てのオーブを手にした俺に勝てる人間などいないっ!! そんな人間が居ていいはずがないんだァ!!」
彼はそう叫んでリンカに向かって再びエネルギーを放った。
だがそれをリンカは飛び上がって避ける。
「なにっ!?」
「残念だけど、私達ならあなたに勝てます!!」
リンカはそう叫びながら空中で回転するとそのままサイファーを踵で蹴り落とした。
「ぐはッッッッ!!」
サイファーはうめき声を上げながら地面に倒れる。




