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バニラパンチ  作者: うみこん(宇宙みかんコンピューター)
最終章 世界
106/124

第106話 海賊団の秘儀!!

「ミル! 応答して!!」

 

 ニーナはインカムを使って何度もミルに呼びかけるが返事はない。


 その間も船は燃え上がり何度か爆発を起こしていた。


「ニ……ナ……。ニーナ……」


 すると途切れ途切れで無線から声が聞こえてきた。


「ミル! 聞こえた! どうなってるの?」


「おそ……われた」


 ミルはその一言だけ言って無線は再び切れてしまった。


 その場に居た全員が上空の船を見上げる。


 ロンドは船に近づこうとしたが、強力なシールドが張られているせいで中に入ることはできない。


「くそっ!! どうなってやがるんだ!!」


 彼らにはただ船員たちの無事を祈る事しかできなかった。


 その頃上空の船内では、皆が慌ただしく動き回りまさにパニック状態に陥っていた。


 指揮官だったニーナの連絡も届かず完全に指揮を失った状態で、保護しているセントラルの一般市民たちは船内に響き渡る爆発音に怯えて逃げ惑っていた。


 その船の中を荒らし回っていたのはたった一人の男。


 彼は暑い季節に似合わぬマフラーで顔を隠し、船内の通信網や操縦設備を次々と破壊して回っていた。


 船内に残されたミルは何とか敵を排除しようと、巨大な光線銃を持って彼の元へと駆け付ける。


「破壊活動はやめて、降参して!」


 船員たちの悲鳴が響き渡る船内。


 ミルは銃を男に向けてそう言った。


 だが男は黙ったままナイフを取り出すと、扉の蝶番を破壊しミルに向かって扉を倒した。


「うわっ!!」


 ミルは倒れてきた扉を支えて横に避けるともう男は居なくなっていた。


 そして彼女は再び男を追って船内を走り出した。


 地上ではロンドたちが慌ただしく船を取り戻す方法を話し合っていた。


「とにかく突っ込みましょう! 俺たちの船をあんなことにされて黙ってられません!! あんなに作るの頑張ったのに!!」


 フォックスは叫ぶ。


「ダメだ。あれはインフィニティシールドだぞ!? 絶対に破れないシールドだ」


 ロンドは言う。


 彼らがそんな話し合いをしばらく続けていると、突然後ろから何かが彼らを襲った。


「うわっ!!!!」


 ロンドたちはそのまま吹き飛ばされ、再びビルに突っ込む。


「痛ってええ……。俺は何回ビルに突っ込めばいいんだ……」


 ビルに開いた大穴から外を見ると、そこには空に飛び上がってきたサイファーが居た。


「あの程度で俺が死ぬと思ったら大間違いだ」


 サイファーは言った。


「それに、どうやら俺の方に運が回ってきているみたいだしな」


 サイファーは上空で炎上する船を見ながら言う。


「ロンドさんやばいですよ! このままじゃサイファーに船まで乗っ取られちゃいます!! そうなったら……」


 ピッカーが言った。


「ああ、わかってるさ。今いい方法を考え中だ……。うーん」


 ロンドは腕を組んだまましばらく唸った。


 だがそんなロンドに向かってサイファーは杖からエネルギーを放ち攻撃を仕掛けてくる。


「ちょっと待てよ!! 今考えてるんだ!!」


 ロンドはビルの中で走って逃げながら叫んだが、サイファーは攻撃の手を止めなかった。


「ああ!! もういい!! 思いつかない!!」


 ロンドは叫んだ。


「じゃ、じゃあどうするんですか!?」


「お前達……全員で突っ込むぞ!! そこでエネルギーを一気に放出してサイファーを倒す! それしかない!」


 ロンドは言った。


「わかりました!!」


「よし。チャンスは一度きりだ。俺たちはこの攻撃に全てを懸けるんだ!! ここで倒せなきゃ、俺たちの負けだ!!」


「了解!!」


 皆は答える。


 ロンドは走りながらトラップの翼を起動させ、飛び立つ準備をした。


「行くぞ!! 準備は良いか!? ロンド海賊団!!」


「はいっ!!」


 全員の返事を聞くとロンドはビルの窓から飛び出した。


「おりゃああっ!!」


 彼の目指す先にはサイファーが居る。


「真正面から向かってくるとは、血迷ったか!! ぶっ殺してやる!!」


 サイファーもそう言ってロンドの方へと向かって飛んでくる。


「サイファー!!!! 残念だがそれはこっちのセリフだ!! これで全て終わらせる!!」


 ロンドはそう叫ぶと全身から光を放ち始める。


「な、なんだ!?」


 サイファーは突然の強い光に目を覆う。


「行くぞ!! 海賊人間大砲だアアアアア!!!!」


 ロンドが叫ぶと、武器や狐に変身していた海賊団の面々が一斉に元の姿へと戻った。


「よっしゃあ!!」


 彼らはさらに強い光を放ちながらそのままサイファーに向かって飛んでいく。


「な、なにっ!?」


 かなりのスピードで飛んでいたサイファーは突然のことに対処できず、そのままロンドたちの元へと突っ込んで行ってしまう。


「食らえええええええええええええええ!!!!」


 ロンドたちは叫びながら光を放つ。


 地上から見ていたニーナ達には真っ白に輝く光で何が起きたか見えなかった。


 だが彼らがぶつかり合った瞬間、激しい爆発音と辺りのビルや瓦礫を全て吹き飛ばすほどの途轍もない衝撃をはっきりと感じた。


「う……うわっ!!!!」


 その衝撃は地上に居たニーナやアルルまでをも吹き飛ばし、彼らの放つ光は次第に消えていった。


「ど……どうなったの……?」


 吹き飛ばされたアルルは起き上がって辺りの様子を眺めた。


 上空に居たはずの彼らは地上まで落ちてきていた。


「いったたたた……」


「全員、生きてるか……?」


 ロンドは横になって倒れたまま聞いた。


 彼らは全員ボロボロの状態だったが何とか死んではいなかった。


「なんとか、大丈夫です……」


 だがもう彼らには戦う力は残っておらず、力を使い果たし起き上がる事すら出来ないでいた。


「サイファーは、死んだんですかね……?」


 ピッカーは聞いたがその問いの答えは誰にも分からなかった。


 サイファーの姿が見当たらないのだ。


「どこ行ったんだろう……サイファー……」


 アルルがそんなことを呟いていると、空に浮かんでいた船がビルに突っ込み、その瓦礫が隕石のように周りに落ちていくのが見えた。


 そしてその巨大な船体はそのまま地面を抉りながら地上へと着陸した。


「お……俺たちの船が……」


 フォックスはそんな船の様子を見て悲し気に言った。


「また修理し直せばいいじゃない」


 クリスは言った。


「ニーナ、船の様子を見に行かない?」


 アルルは足を引きずりながらニーナに近づくと、彼女に手を差し伸べた。


「うん。ありがとう」


 ニーナはアルルの手を取った。


 だがその瞬間、近くで何かが崩れたような音がした。


「な……なに……?」


 その音の出元はニーナ達の目の前にあった崩れかけのビルだった。


 気が付けばそのビルは大きな音を立てながらゆっくりと彼女たちの元へと倒れてきていた。


「ニーナ!! アルル!!」


 海賊団の面々は叫ぶが彼女たちを助けに行くほどの体力が残っていない。


「に、ニーナ!! 逃げなきゃ!!」


 アルルはそう叫ぶが、彼女自身もニーナも全身ボロボロで走って逃げる余力がもうなかった。


 必死に逃げようと彼女たちは足を引きずるが、倒れてくるビルは次第にスピードを上げて彼女たちの元へと近づいてきた。


「も、もうだめっ……」


 もう逃げられないと確信したアルルはその場で立ち尽くしてしまう。


「ニーナ……ごめんっ」


 アルルは涙を流しながら言った。


「あなたが謝る必要はない」


 ニーナはアルルの手を握って目を閉じた。


 ビルは彼女たちの真上に覆いかぶさり、巨大な陰を作る。


 もうだめだ。


 そう思った瞬間、彼女たちの体に一瞬だけピリッと電撃が走った。


 彼女たちは気が付くと、ビルから離れた場所にいた。


 ビルはそのまま地面に倒れ、窓ガラスが一斉に割れる音が聞こえた。


 ニーナが振り向くとそこにはビビエルが立っていた。


「ビビエル……っ!!」


 ニーナは状況が理解できずしばらく立ち尽くした。


 だがアルルはビビエルを見るなり彼女に掴みかかった。


「あなた私達を助けるなんてどういうつもり!? 罪滅ぼしだったら意味ないから。私はあなたがやったこと忘れてないよ」


 アルルは言ったがニーナが彼女を止め、アルルは手を離した。


 ビビエルはそのまま何も答えず、彼女たちから離れて歩いていく。


「残念だけど、サイファーはまだ死んでない」


 ビビエルは呟いた。


 すると倒れたビルの近くにあった瓦礫の山が突然崩れ始める。


 そしてその中からゆっくりとサイファーが姿を現した。


「く……くそっ!! まだ死んでなかったのか……」


 ロンドは悔しさに地面を殴る。


 彼らにはもうサイファーを倒せる手段は残っていない。


 彼が生きていた時点でサイファーの勝ちなのだ。


 だがさすがのサイファーも相当のダメージを受けているようで、フラフラとした足取りでビビエルに向かって近づいて来た。


「おいビビエル。残念じゃないだろう? お前は俺の生還を喜ぶべきだがな。何故そいつらを助けた? お前はそっち側に寝返ったのか?」


「サイファー。私は裏切ってなんかない」


 ビビエルは言った。


「ほう? まあお前はこれまでよくやってくれたからな、褒めてやろう。だから俺を今すぐ医務室に運べ……。褒美は弾んでやる」


「ごめん。それはできないや。言ったでしょ。私は裏切ってなんかないって。そう…………初めからずっとね」


 ビビエルはそう言って何かのスイッチを取り出した。


「なんだそれは? いいから早く俺を運べ。さもないと……」


 サイファーが話している途中でビビエルはそのスイッチを押した。


「う…………うあああああああああああっ!!」


 サイファーは突然体を震わせ、全身からエネルギーを放ち始めた。


「ど、どうなってるんだ!! ビビエル!!!!」


「言ったでしょ? 私は初めから裏切ってないんだよ。私はず~っとあなたが弱るこの瞬間を待ってた。あなたとその杖は強力なエネルギーで結ばれているから簡単には切り離せない。だからあなたの体に反発エネルギーを発生させるナノ装置を長い時間をかけて注入していったんだよ。私はその為にずっとあなたの元に居た」


「な……なんだと!? ふざけるなあああああああああ!!!!」


 サイファーはそう叫びながらエネルギーをさらに放出する。


「ごめんね。お姉ちゃん」


 ビビエルは一瞬だけ振り向いて言った。


「ビビエル……」


 ニーナは呟く。


「あ、謝ったって許せないから!! ルアルの命を奪ったのは事実なんだから!! ちょっと!! 何とか言いなさいよ!!!!」


 アルルは叫ぶ。


 すると彼女は後ろから服の裾を引っ張る誰かに呼び止められた。


「お姉ちゃん」


 アルルはその声に急いで振り向いた。


 そこに立っていたのはルアルだったのだ。


「え!?!?」


 アルルは突然のことに驚いてその場に倒れてしまう。


「お姉ちゃん、僕死んでないよ?」

 

 ルアルは言った。


 だがアルルは理解が追いついていないようで、まんまるとした目でしばらくルアルを見つめると叫んだ。


「…………お、おばけだ!!!!」


 だがルアルはそんなアルルの手を掴んで彼女を立ち上がらせると、そのまま抱き着いた。


「サイファーにビビエルの事を信用させる為に今まで隠れてたんだ。ごめんなさい……」


 ルアルはアルルに抱きついたまま言った。


 アルルからは返事がない。


「あと、ただいま」


 ルアルが呟くとアルルは彼の背中にそっと手を回した。


「おかえり。ルアル」

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