第103話 援軍到着!! 決着か?
アルルは今までため込んでいた怒りや悲しみの感情を一気に開放し、一心不乱に敵をなぎ倒していく。
そうなったアルルはもはや誰も手を付けられず、彼女は一人だけで数十人もの敵を倒していった。
そうしているともはや敵はほとんど居なくなっていき、彼女たちも勝ちを確信し始めていた。
だが、それも長くは続かなかった。
突然遠くで大きな爆発音が聞こえたかと思うと、家が一軒丸ごとアルルの上空を飛んでいくのが見えた。
「ど、どうなってるの?」
何が起きているのかとニーナやアルルが確認しようとしたその時、彼女たちは何かの衝撃で吹き飛んだ。
「ぜ、全員船に退避して。繰り返す。全員船に退避して」
そんなニーナの声がインカムからは聞こえてくる。
「い……痛っ……」
アルルは吹き飛ばされた衝撃で足を怪我しており、すぐに立ち上がることができなくなってしまった。
彼女は倒れたまま、薄れゆく煙の中にこちらへ向かってくる一人の男を見た。
男はその手に奇妙な杖を持っている。その杖は赤、青、緑に光り輝く3つのオーブが埋め込まれ、ぼんやりと黒いオーラを纏っていた。
「サイファーっ!!」
サイファーの姿がはっきりと見えた途端、ニーナもクリスも再び彼の力で吹き飛ばされた。
そして彼は続けて、逃げていくニーナの他の仲間たちへも攻撃を仕掛けようとした。
だが突然、彼の横をブゥウンという轟音と共に1台のバイクが通り過ぎた。
「あなたが殺したいのは私。そうでしょ?」
ニーナはそう言いながらサイファーの周りをバイクに乗ってぐるぐると回り、彼の注意を引き付けた。
そのおかげで仲間たちは無事に船に戻れたようで、既に姿が見えなくなっていた。
「確かにお前の言う通りだ。俺が一番殺したいのは、お前だ!!」
サイファーはそう叫んでニーナに向かって杖を突き出した。
すると青い光が彼女を包み込み、そのままバイクもろとも吹き飛んだ。
「ニーナ!!」
アルルは足を引きずりながらニーナに近づいた。
「今の私達じゃ、彼には到底叶わない。今すぐ逃げなきゃ!!」
アルルは言ったがニーナは首を振った。
「あなたは先に逃げて。私がここで彼を食い止める」
ニーナはそう言って立ち上がると、再びベルトを起動して電撃を身に纏った。
そして彼女は高速移動をしながらサイファーに殴りかかる。
だがサイファーはその攻撃を軽々受け止めてしまう。
「お前が食い止めるだと? 冗談言うな」
サイファーはもう一度杖を振ると、突然ニーナの動きが止まり、彼女は宙に浮いてしまった。
そして彼女はそのままサイファーの元へと引き寄せられていった。
「俺はこの5か月間、必死にお前を探してきた。ここでようやくお前の顔が拝めた」
サイファーはそう呟いてニーナの腹を殴った。
「うっ!!!!」
そして彼はニーナの腰に巻かれていたベルトを奪うと地面に放り投げて踏みつぶした。
さらに遅れてやって来たサイファーの援軍がニーナ達を取り囲んだ。
「しかしあれだけ慎重なお前が地上にこんな拠点を残していたとは誤算だったな」
絶体絶命の状況をあざ笑うかのようにサイファーは言う。
「皆が環境の変化に堪えられるわけじゃない。地上でそのまま暮らしたいという人も大勢居た」
「では何故降伏しない? 降伏すれば快適な地上の生活を保障してやれるというのに」
「思いは人それぞれ。私はあなたの暴力的なやり方には納得できない。そんなあなたを野放しにしてればいつか必ずみんなが不幸になる」
「みんなを不幸にしているのはお前の方じゃないか? お前を信じてついて来た人間が今幸せだと思うか?」
「いずれ不幸になるよりはずっと良い。最後に1つ教えて。どうしてあなたはこんなことするの。みんなを支配して何になる」
「俺が目指してるのは絶対的な支配だ。これまでのこの国の有様を知ってるだろう? 力の弱い王が支配していたせいでセントラルとアウトサイドは分断されたまま。一部の人間だけが良い思いをしてきた。だが絶対的な力をもった支配者が居ればそんなことにはならない。だから俺がこの国を支配してやるんだ。その邪魔をする人間は誰であろうと殺してやる」
「いいえ。あなたは間違ってる。そうなったら力を持った人間だけが良い思いをする国になるだけ」
「俺も多くの犠牲を払ってここまで登り詰めてきたんだ。良い思いをするのは当たり前だろう」
サイファーはそう言ってニーナに杖を向けた。
「もういい。話はここまでだ。お前にはここで死んでもらう。まあ、精々地獄で悔しがるんだな!」
彼はそう言ってニーナに向かってエネルギーを放った。
「うああああああああああああああっ!!!!」
ニーナは宙に浮かんだまま叫び声を上げた。
それを見ていたアルルは必死にインカムに向かって呼びかけた。
「ロンド!! 早く来て!! ニーナを助けて!!」
だが彼らからの返事は一向に来ない。
その間もニーナへの攻撃は続き、彼女の叫び声もだんだん小さくなっていっていた。
「死ねぇ!! ニーナ・イェール!!!!」
サイファーは叫び、さらに攻撃の力を強めた。
ロンド達が来る様子もなく、他の仲間を呼んでもさらに犠牲者が増えてしまう。
だったら、もう自分が助けに行くしかない。
そう思ったアルルは必死に痛みを堪えながら立ち上がった。
「ここで負けたら、ルアルに示しがつかない。忍術の師匠として……そして彼の姉として……!」
アルルはそう言ってクナイを取り出し、両手に持った。
そして彼女は大きく深呼吸をする。
「行くよ……。忍法……大切断!!」
そう叫んで彼女は思い切り足を踏み込んだ。
だがその瞬間、踏み込んだ足に激痛が走り、あまりの痛みに彼女はそのまま倒れてしまった。
「また……。また……ダメだった……。私、忍者としても姉としても、失格だったのかな……」
彼女は倒れたまま涙を流した。
目に溜まった涙で視界が歪んでいく。
そんな涙の向こうにぼんやりと死にゆくニーナの姿が見えた。
そんな時、彼女の濡れた視界が一瞬キラリと光った。
すると突然サイファーが遠くへ吹き飛び、ニーナがそのまま地面に落ちたのが見えた。
「な、なに……?」
アルルは上体を起こして状況を確認した。
すると遠くから白く光り輝く5人組が歩いてくるのが見えた。
「ロンド……海賊団……!!」
「待たせたな、ニーナ……。行くぞ!! お前らあ!!!!」
「オー!!!!」
ロンド達が叫ぶと、彼らはニーナ達を取り囲んでいた大勢のサイファー軍に対し、たった5人で走って突っ込んで行った。




