第100話 ロンド海賊団、森に出る
「私達は船を近くまで移動させてくる!」
クリスはそう言ってピッカー達を連れて操縦室へと向かって行った。
「あなた達だけにこんなリスクを負わせる形になって申し訳ない」
ニーナは1人残ったロンドに言った。
「私がビビエルの事、諦めずにもっとちゃんと引き止められていればこんな事にはならなかった。アルル。私はあなたにも謝らないといけない。ごめんなさい」
「なんでニーナが謝るの? 私はあなたに何かされた覚えはない」
「でも……」
ニーナは口籠った。
「負い目を感じてるのなら、前を向いて。サイファーやビビエルを倒すことだけを考えて。その方が私は嬉しい。ルアルもきっと同じ気持ちなはず」
アルルは言った。
「ま、そういう事だ。何もリスクを負ってるのは俺達だけじゃない。サイファーに反抗してここに居るみんなが常にリスクを負ってるんだ。だから俺たちが居ない間、ここのみんなを頼んだぞ。2人とも」
ロンドはそう言ってニーナとアルルの肩を叩いた。
2人は黙って頷いた。
「ロンド! もうかなり近くまで来てるみたい。後は徒歩で向かえそうかも!」
操縦室から戻ってきたクリスが言った。
「よし! じゃあロンド海賊団、全員出発だ!」
「オー!!」
ロンドはニーナの方を見て合図をした。
するとニーナは転送装置のパネルを操作して、ロンドたちを地上に送り出す準備をした。
「ロンド海賊団。あなた達が私達唯一の希望。期待してる。だから、無事に帰ってきて」
ニーナはそう呟くと転送装置を起動した。
キーンという高音と共に船は揺れ始め、ロンドたちを青い光が包み込む。
「ロンド海賊団に任せとけ!!」
ロンドはそう叫ぶと共に船から消え、地上へと降り立った。
海賊団の5人は地上に降り立つと同時に辺りを見回した。
彼らが居るのは薄暗い森の中。
辺り一面に緑の木々が生い茂り、鳥や虫たちの鳴き声や草木の擦れる音が響き渡る。
「で、方角はどっちなんだ?」
ピッカーが聞く。
「こっちだよ」
クリスはそう言って先頭に立って進み始め、彼女に続いて他のメンバーも森の中を進んでいった。
「なんだか気味が悪いなぁ……おばけでも出るんじゃないか? メープル、お前は怖くないのか……?」
フォックスは怯えた様子で肩に乗せた狐に話しかけた。
日は暮れかけており、あまり光の入らない森の中は既にかなり暗く、不気味な雰囲気を醸し出していた。
さらに空には分厚い雲が覆いかぶさり、それが余計不気味さを強めていた。
「おばけなんて言わないでくれよ……。お、俺はホラーが大の苦手なんだ……」
トラップはそう言いながらフォックスの腕を掴む。
そんな彼らとは違い、ネックレスに導かれるまま必死に家を探すクリスはどんどんと先へ進んでいった。
空に立ち込める雲は次第にその分厚さを増していく一方で日は時間と共に暮れていく。
そのおかげで森の中は一層暗くなっていった。
「おいおい……。これ、どこまで進むんだ? もうそろそろ着いてもおかしくないよな?」
しばらく森の中を進んだものの、一向にそれらしき建物が見えてこない現状に彼らは次第に不安になってきていた。
「分からない。でもネックレスはまだ向こうを指してる」
クリスはそう言って足を止めず進み続ける。
「俺、つかれた……。休みたい……」
トラップが言ったが、皆彼の言葉は聞き入れずどんどん進んでいった。
「大体そのネックレスが指し示す先に家があるなんて単なる予想だろ? 俺たちを森の奥へと導いてそのまま取って食おうっていう算段だったらどうするんだ? ああ、本当にそうだったらどうしよう。ねえ、大丈夫だよね?」
トラップが言ったが皆は黙ったままだった。
ネックレスが指し示す先にブラックウォール邸があるという保証は全くない。それは皆分かっていることだった。
それでも彼らは望みを捨てずひたすら森の中を進み続けた。
だがそれまで一度も足を止めなかったクリスが突然足を止めた。
彼女はぼうっとネックレスを見つめる。
「どうしたんだ?」
ロンドがクリスに聞いた。
「分からない……。突然ネックレスが反応しなくなったの」
クリスのその言葉に全員が辺りを見回したが、そこには特に何かある様子もなくただた木々が並ぶばかり。
「ああ、もうおしまいだ!! 俺たちは騙されたんだよ、あのミルって女に!! くそ~!! 覚えてろよこのミルク野郎!! ギューギューに絞ってシリアルにかけて食ってやる!! 絶対おいしいからな!!」
フォックスは空に向かって叫んだ。
すると、ポツリポツリと空から水の雫が落ちてきた。
雨だ。
降ってくる雨粒の量は一気に増え、すぐに大雨となった。
5人は大きめの木の下に隠れてしばらく雨宿りをすることにした。
空を見ると、雲はいつの間にか黒みを帯びており、すぐに止みそうな気配もない。
「なんて日だ今日は! こんなんじゃ見つかりっこないよ! ロンドさん、今日は出直しましょう!! それがいい!!」
フォックスのその言葉にロンドはしばらく考えた。
「……確かに今日に限ってはフォックスが正しいかもな。まあ、チャンスは今日だけじゃない。クリス、今日の所は出直すぞ」
ロンドはそう言ったがクリスはどこか浮かない様子で黙ったまま返事をしない。
「おい、クリス。聞いてるのか?」
「待って……」
クリスはロンドを制止して何かに耳を澄ませている様子だった。
「今度はなんなんだ?」
するとクリスは突然雨の中に飛び出して走り始めた。
「おいっ! どうしたんだ!」
そんなクリスをロンドは走って追いかける。
さらにピッカーとトラップもロンドに続いて行ってしまったが、フォックスだけは肩に乗せた狐と共に木の下にとどまっていた。
「お、俺はオシャレさんなんだぞ……。びしょびしょになったら髪型が崩れるだろうが……。それにもし風邪をひいたら、もしかすると運悪く死んじゃうことだってあるんだぞ……。そうなったらみんな悲しむだろうが……。あとメープルも濡れるのは嫌だよな?」
フォックスのその問いかけに、狐のメープルはそっぽを向いた。
「バカ! お前が風邪で死んだって悲しむやつはいないね! もしそうなったら思い切り笑ってやる!」
ピッカーが振り向いて言った。
「な、なんだと!! あまりにもひどいんじゃないかそれは!!」
フォックスが怒って言った。
「ふっ。だったら追いかけてこい! こっちまで来れたら悲しんでやるよ!」
「分かったよ!! 行ってやるよ!! 行けばいいんでしょ!! 行ったら悲しめよ!? 泣けよ!?」
フォックスはそう叫びながら木の下を飛び出した。
雨の中全力で走る5人は遠くに何か木ではない物が見えてきていることに気が付いた。
「まさか!?」
5人はさらにスピードを上げ走り切ると、そのまま森を抜けて開けた場所に出た。
するといつの間にか雨は上がり、あれだけ分厚かった雲も何事もなかったかのように消え去っていた。
「あ……あれが」
「そう、あれがブラックウォール邸。私の育った家……」
彼らの前には壁一面黒く塗られた不気味で巨大な家がそびえ立っていた。
「本当に……あった」
呆然と家を見上げる一行だったが、クリスは躊躇なく家に近づいて行く。
「お、おい待てよ!」
彼らも慌ててその後に続いた。
「あ、そうだ」
クリスは言った。
「全員これをつけて」
彼女はそう言って腕輪を海賊団一人一人の両腕に付けていった。
「なんだこれ?」
ロンドが聞いた。
「もし何かあってもいいように、アンナの力を弱めるための装置を作ったの。だからそれをつけておいて」
クリスはそう言ってブラックウォール邸の巨大な扉の前に立った。
「準備は良い?」
クリスのその言葉に全員息を呑みながらも静かに頷いた。
ついに100話までいっちゃいました~(パチパチパチパチ)
ここまで読んでくれた人は本当にありがとうございます。
物語は段々終わりに近づいてきていますが、最後まで頑張ります。




