秋葉原ヲタク白書81 不滅の戦隊OG
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第81話です。
今回は、クエストというスタンプラリー型イベントでアキバ中が盛り上がる中、ゴール目前の参加者失踪が相次ぎます。
夫が失踪した戦隊ヒロインOGに依頼されコンビが調べると、何とクエストの裏に"官邸"の影と思惑がチラついて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 ヒロイン達のアキバ
「今宵は戦隊ヒロインが御帰宅してるのです」
「ええっ?またまた、お騒がせのアメコミ系…」
「あ、今回は御安心を。由緒正しく戦隊系ですから」
ココは、僕の推し(ているメイド)であるミユリさんがメイド長を務める御屋敷。
ヒロイン道を邁進する女子が多数集うコトから"星の探究者バー"とも呼ばれる。
「へええぇ。貴方がテリィたん?」
「あ、そーゆー貴女は確か…」
「人違いよっ!お忍びで来てるの」
うーん答が全く矛盾してるだろw
そもそも戦隊コスプレしてるし笑
「勉強戦隊"ガクシュウジャー"の"落ちこぼれピンク"では?」
「しっ!完全引退したコトになってるので」
「確か妊娠発覚で途中降板…」
戦隊スーツに顔出しと逝う中途半端なコスプレでイヤンって感じでポーズをとるピンク。
現役?時代のヤタラ元気でラジオ体操みたいなポーズとは異なり、妖艶な人妻の所作だw
「で、何しに来たの?今宵は戦隊スーツだとドリンク半額の"戦隊デー"とか?」
「ええっ?今宵は"ヒロインクエスト"でしょ?戦隊ヒロインOGが往年のコスプレで中年サラリーマンになったファンをお出迎えするイベントが発動中よ」
「へえぇ。ママキャバのコスプレデーみたいな感じ?」
"ヒロインクエスト"はスタンプラリーで、アキバのカフェ&バーを巡礼するイベント。
指定場所にコスプレ女子が現れ、次の場所をクイズ形式で教え全コンプリートを目指す。
「あ!いたいた!"妊娠ピンク"だ!しかも文秋砲で直撃される前の激レアバージョンだょ!あ、写メOKスか?」
「ちょっと!人妻よっ!お触りは禁止!写メはOKだけどショット毎に¥500。でもツーショならお得な¥1000よ!」
「待ってくれ!全然お得になってナイぞ、ピンク!」
ドヤドヤと御帰宅したヲタク達が、一斉に突っ込みを入れては、口々に不満の声を上げるが、ピンクの強気な営業姿勢は変わらナイ。
「文句アルならクイズを出してやらナイょ。クイズを解かなきゃ次の店がワカラナイだろ?コンプリート出来ないってワケさ。オッホッホ」
「あれ?スゴい意地悪だ。ピンクって悪の女幹部だっけ?」
「では、質問です!"落ちこぼれピンク"のシンボルカラーは?」
思いがけない幼稚園レベルの出題に、御屋敷に居合わせた全員が、ポカンと口を開ける。
「ピ、ピンク?」
「げげっ!何でわかったの?ヲタクって怖い」
「いや、何となく…」
御屋敷、いやアキバ全体に"何だかな感"が漂いかねない事態に全員の目が泳ぐw
ヤバい!イベントの危機だ!ざまぁ…じゃなかった一応ヲタクとして一肌脱ぐか。
「え、えっと!僕は通りすがりのヲタクだけど、ピンクの必殺技は確か…」
「ナイフ投げ」
「ええっ?マジ?そーだっけ?」
ココは可愛く桃色破拳が正解。
ナイフなんて良い子にNGだwププ
「テリィ様!ピンクは、もう何十年も世界一のナイフ投げ王者ナンですょ(もうソンな年齢なのかw)!」
「でも、ソレじゃ食べていけないから、戦隊ヒロインもやってるの」
「冗談でしょ?すげぇトリビア」
お?盛り上がって来たか?僕がミユリさんに目配せスルと、彼女は棚の酒瓶と酒瓶の間隔を開け、魔術師の助手よろしく頭を下げる。
「カモン」
"ヒュッ…ビィーン"
「す、すげぇ!」
ミユリさんが誘った次の瞬間、酒瓶の間を抜けたナイフが、壁に刺さり細かく震えてるw
瞬間の後、太腿のホルダーからナイフを投げたポーズをキメるピンクに全員が拍手喝采。
「うおー!ピンクはナイフ使いの暗殺者だったのか!妊娠だけが取り柄じゃ無かったンだ!」
「コレでOK?ミユリ、テリィたんを借りるわょ」
「OK。でも後で返してネ」
颯爽とお出掛けするピンクに全員が続く
ミユリさんがヤレヤレと逝う感じで呟く。
「彼女は、戦隊ヒロインで回り道しなければ、ナイフ投げでとっくに有名になれたのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
戦隊バー"ピンク基地"は、蔵前橋通りを越えた先にアル。
既にアキバ色は褪せ、古い中小ビルが雑然と並ぶ昭和な街。
あ、銭湯"秋の湯"の近くだ。
「実は旦那が消えたの」
「ええっ?そりゃまた、いきなりステーキ…じゃなかった、イキナリ重い展開だな…しっしっ!コレ、飼い犬?」
「こら、ププン。良い子にして!」
ビルと逝うより長屋の1F路面店で、壁に古い戦隊ポスター、飾り棚にホコリを被った特撮フィギュア、グッズ、カウンター奥にママ…
そうだ!彼女は"スナックのママ"なのだ!
そして、現年号は絶対"昭和"に違いないw
ソレなら店内に犬がいるのも許せる←
「ププンは人見知りなの。このエサをあげて。好かれるわ…何してるの?あ、貴方が食べちゃダメ!」
クエスト参加の太ったヲタクが、出されたエサをポイと口に入れ味わってから吐き出す。
「マズい」
床に吐き出されたエサを今度は犬が食べる。
何だか、トンでもナイ場に居合わせてるなw
「旦那の名はウォラ。戦隊女優として華々しくデビューした私を妊娠させた男。あの頃、彼は照明助手で、私達は付き合ってた。短くも美しく萌え」
「へえ。ソレで結婚を?まさか、今回の"ヒロインクエスト"にも参戦してるとか?」
「夫唱婦随よっ!元業界人の彼と、元戦隊ヒロインの私が組めば最強!」
「だ・か・ら!関係者の参戦は認められてナイの!ましてや夫婦で組むなんて以ての外よ。クエストの暗黙ルールを知らないハズが無いでしょ!腐女子なら」
「ハラン!黙って。だから、賞金が入るまでは、チャンと黙ってるツモリだったの!」
余計に悪いw
店の奥へ伸びたカウンターは壁際で直角に折れ、ソコで腐女子がワァワァと騒いでる。
しかし、ソコって…場末のスナックなら全国共通で"ママの男"の指定席ナンだけどw
いかんせん、腐"女"子だから"ママの男"の線はナイが、うーん、あの横顔は、確か…
「ソレで、貴女達は夫婦で私よりも先にステージ10へ進んだのねっ!ズ、ズルい!」
「私はいなかった。岐阜で姪っ子の挙式があったの。だから、ウォラは独りでクエストを回った。ホラ、式の写メよ。名古屋式だから叔父さんは、屋根に登って参列者に金貨を投げているわ。日付を見て。他に新幹線から見えた富士山の写メもある。で、昨日アキバに帰ったら旦那がクエスト中に行方不明になってた。だから、お願い!テリィたん。旦那を探して。貴方だけが頼りです」
そんな…突然スターウォーズのお姫様みたいなコトを逝うな。may the WOTAKU be with you!
「わかりました!では、テリィたんに"旅の仲間"をつけてあげましょう。では、良き旅を」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
とりあえず、僕は"旅の仲間"をミユリさんのバーに誘い、色々打ち解けようとしたら…
「テリィたん!私は今、リアルなテリィたんに会えて猛烈に感動してイルわ!ホントにうれP(死語)」
「もう3回も聞いたょ」
「だって、うれPくて。今の私達の状況は最悪だけど…テリィたんは最近、アメコミ系に走ったそうね。あ、ミユリさんのプロポーションが"未だ"崩れてナイからか!なるほど」
無邪気な顔して凶悪地雷をバラ撒くハランw
結局、特撮バー"ピンク基地"で、席だけ"ママの男"にいた腐女子を押し付けられるw
彼女の名はハラン。で、彼女は…実は僕のリアル"元カノ"ナンだ、話すと長いンだが←
そして、今回の僕の"旅の仲間"だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
学生時代、同じバンドのベースマンが実は熱心な自主映画マニアで。
ガヤで彼の映画に出たら当時"学生映画の女王"だった彼女と会う。
ま、つまり女優気取りのイカれた女子大生だったワケだけど、当時の"女子大生ブーム"にノッて彼女はちょっとしたヲタサー姫に。
ところが、アングラな人気の頂点で、彼女はベースマンと心中未遂、女だけが生き残る。
世間の厳しい目に晒された彼女が、胸の内を明かせるのは彼のミュージシャン仲間のみ…
で、当時"慰め王子"の異名のあった僕の出番ナンだが…ソンな経緯と全く無縁のミユリさんの両目から既にデス光線が迸ってイルw
うぅ致死量だ…
「えっと!ソレで、僕達は次も戦隊トリビアに挑戦するワケなのかな?」
「そう。さらなる難問が待ってるわ。クエストって、そーゆーゲームなの。戦隊クイズを解くごとにコスプレ女子が現れ、次のステージをクリアして逝く。私は、昨夜ステージ11まで進み、ソコで手掛かりが途絶えた。ソレで仕方なくステージ10"ピンク基地"まで戻ったら…テリィたんと再会したの」
「もともとピンクは、ステージ10のコスプレガールで、ココのコスプレガールはミユリさんだったンだ。全くピンクは掻き回してくれるょwで、その手下?のハランは、確かに僕の"元カ…じゃなかった!"単なる"知り合いだ。"おんぱ組.inc"への入隊を希望してイル」
「"おんぱ組.inc"?」
今まで厳しい顔一辺倒だったミユリさんも含め、御屋敷にいる全員が異口同音に尋ねる。
シメシメ←
「僕専用のアキバ顧問団だょ。困った時に、僕が知恵を借りる専門家の集団だ。そして、ハランは優秀な戦隊ヒロインヲタク。戦隊ヒロインに関する何かの時に…」
「テリィたんを手伝うのっ!」
「あらあら。サスガは元カノ。私のTOと早くも息がピッタリね?念のために教えて欲しいンだけど、ウォラが消えた夜の貴女のアリバイは?」
発言順は、僕、ハラン、ミユリさん。
因みに、ミユリさんは既に諦め顔だw
「容疑者?まるで私がウォラを神隠ししたような仰りようだわ。昨夜は、アニソンクラブでオールしてました。目撃者多数よっ」
「あ、そーだ全くミユリさんの逝う通りだっ!犯罪の可能性がアル。もし新橋鮫が御帰宅したら、一応、彼の耳にも入れておいてくれないか…で、クエストにはミユリさんも逝くょね?」
「私が御一緒では、テリィ様はレストランにお弁当を持って逝くようなモノでしょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中のアキバのどこか。
崩れかけた廃墟の最上階。
「これでステージ12クリアだ。来たぞ、ゴール。次のカフェはどこだ?えっ…」
そして、消息は途絶える。
第2章 クエストの迷宮へ
さぁ"ヒロインクエスト"に出発だ!
「先ず、君が手掛かりをロストしたステージ11に戻ろう。何か見落としがアルかもしれナイ」
「ハイ、選ばれし勇者様。ご案内するわ…ねぇ。まるで学生時代みたい。私達って、きっと"人生の旅の仲間"なのだわっ!」
「ん?"人災の仲間"?」
ミユリさんにフラれ、僕はハランを"旅の仲間"としてクエストに参戦スル。
僕は、意味なく賢者コス、ハランは…純白のフード付きミニ丈の王妃ケープw
で、ステージ11は、苦手な地下の箱だ。
恐らく昼間は御屋敷らしく手書きの萌え字で"愛chuこぉひぃ¥750"と張ってアル。高い←
ハランは、何処で手に入れたか鍵を持ってて勝手にガチャガチャやり地下へ降りて逝く。
「よく鍵が手に入ったな」
「このために今日、体験入店しタンです。さ、急いで」
「王妃が体験入店って萌えるね」←
最近の御屋敷のキャバ化は凄まじく、時間制フリードリンクで銘柄指定ながらアルコールもOKだから、最早"喫茶"などではナイ。
業態間の境界の曖昧化を受けて、メイドとキャバ嬢の境界も限りなく曖昧になっている。
体入は完全にキャバ用語でハランの如く本入店の気が無い嬢は"体入荒らし"と呼ばれ…
ま、いいや←
「手掛かりは、きっと奥の壁のペンキの下だ。一部だけ塗りたてで、恐らく24時間以内に塗ってる。塗ったペンキの下に秘密の数字が隠されてルンじゃナイか?」
「ええっ!テリィたん、スゲェ。何で一眼でわかっちゃうの。私の服の下も透けて見えてるとか?」
「…この地下室は、80年代"サンフランシスコバー"って逝うカフェバーだった。あの壁には金門橋のヘタな壁画が描いてあったンだ」
すると、80年代から何度も壁は塗り替えてるハズなのに、ナゼかハランのツボにハマる←
「やっぱテリィたんってスゴぉい!80年代からアキバに入り浸ってるナンて、流石は"賢者"ね!80年代と逝えば、コンパニオンと逝う言葉には、今のレースクイーンみたいな淫靡な語感があった時代ょね?お爺ちゃんから聞いたケド」←
「いや。君のハマトラ、今でも覚えてる…ところで、クエストって賞金とか出るの?」
「うーん。お金のタメじゃないの。でも、因みに賞金は170万7071円。コレって回文素数なの。知ってた?」
「タケヤブヤケタ、みたいな?で、でも、たかがクエストのタメに、誰がそんな賞金を?」
「タケヤブは単なる回文。私が逝ったのは回文素数なんだけど…で、あくまで推測だけど、クエストの賞金スポンサーは政府のGOTOセンター」
「え?政権のGOTOキャンペーンを仕切る大手広告代理店が作った社畜法人?」
「東京がキャンペーン対象外になったコトの代替措置らしいわ。だって、総額1.1兆円だモノ。どうせ特会ナンだし、何でもアリよっ」
「うーん。クエストの主催者も、もともと匿名がお約束なんだろーな。で、参加者も匿名なの?」
「ほとんどは。ってか、そもそもテリィも偽名でしょ?でも、実は"戦隊ヲタ"って狭いフィールドだから、コアなヲタのコミュニティーが出来上がってて。私でも10人ぐらいは、参加者の想像がつくけど、賢者のお役に立てるかしら?」
「モチロンだょ、王妃」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、壁のペンキの下から出たのは人名。
"バイロ"と逝う人の名前が浮き上がる。
因みに"バイロ"は、ハランが挙げる10名リストに名前がアル。
早速、特撮バー"ピンク基地"に取って返してママに話を聞く。
「あ!ピンクママ、セックスしたでしょ?」
「ええっ?!何ですって?!」
「私、匂いでワカルのっ。ママは、男とヤッた。御屋敷の空気にフェロモンがドバッと放出されてる。でも、良いコトだわ。愛の営みはヲタク脳を活性化させるっ」
ハランの先制攻撃にタジタジ。
やっと役に立ったょソノ性格。
「…で、何しに戻って来たの?アンタ達」
「多分ステージ12まで逝って失踪したママの旦那の関係で進展があったわっ。新たに入手した手掛かりから"バイロ"って戦隊ヲタクが浮上してる。確か、統計ヲタクで妄想型統合失調症。暴力沙汰を起こし、病院に3度ぐらい収容されている」
ええっ?!ソ、ソンな猛者だったの?!
「うーん。バイロか…確かに可能性は高そうね。でも、ホントに彼なの?今年もトラブルを起こして、今はネカフェにいるハズょ。私も一緒に逝こうか?」
「いいえ。テリィたんとテリィたん専用コンパニオンである私だけで十分なの。後で連絡スル。ママは、もう一度セックスを楽しむと良いわっ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ホテルみたいな完全個室。
ヤタラ豪華なネカフェだ。
東京オリンピックが延期…なのかな、もしや中止?でも、投資は回収されるのだろうか?
「バイロ、いる?」
「誰だ?」
「戦隊ヲタクのハランよ。聞きたいコトがあるわっ。鍵、開けて!」
「ま、待て!ズボンを履かせてくれ。ソレに鍵は"マスターキー"だ!」
ジッパーを上げる音…か?
僕は、ハランを押し倒す!
ドンッ!
次の瞬間、ショットガンの発砲音!
僕達の頭上でドアノブが吹っ飛ぶw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
駆け付けた万世橋が現場検証中w
「運が良かったな、テリィたん。実体弾で撃たれたのは初めてだろ?戦隊モノだと普通は光線銃だモンな」
「鮫の旦那、運じゃないょ。何やら重いモノを棚から下ろす音がした。聞き慣れたファスナーの音は、いつもなら楽器のソフトケースだけど、今回は…ガンケース?」
「部屋にいたバイロは、クエストだったか?宝探しをやる程度には正気だったようだが、カフェイン錠やドリンク剤で合法的にハイになってた。恐らく違法っぽい錠剤も少し混じってる。残念だが、非常口から出て目下逃走中だ」
個室のドアは、ノブの部分が丸くポッカリと穴が空いて、向こうが見えるw
ドアノブを鍵ごと吹っ飛ばすショットガンは良くマスターキーと呼ばれる。
もし、ノブを握っていたら即死w
ハランが腕をヒシと絡めて来る←
「よくもまぁショットガンなんかぶっ放してくれたモンだ。コレでアキバも世界の犯罪都市の仲間入りだゼ」
「いよいよ僕達も鮫の旦那と現場で顔を合わせる機会が増えるね。よろしくね」
「おいおい。ショットガンで撃たれたンだぞ。もう少しビビれょ。ヲタクだろ?」
新橋鮫は、万世橋の敏腕刑事でヒョンなコトから知合いに。で、彼には色々貸しがアル。
「で、部屋の壁一面に張ってあった数式の走り書きだけど…ウチのヲタクに検証させたいンだが、写メOK?」
「え?こんな数字の羅列に何か意味があるのか?ってかヲタクにわかるのか?」
「コチラの"鼻輪物語"の王妃コスプレをしてるハランは、理学部数学科の卒業で、筋金入りの数学ヲタクだ。因みに僕は経済学部で役に立たないw」
すると、傍らにいたハランが突然スルスルとコスプレを脱ぎ捨てアッという間に下着姿w
僕はブラボーを叫び、新橋鮫はガッツポーズをキメる…けど、ナ、何が起きたのだろう?
「あ、ごめんなさい!コレは習慣なの!私と数式の間に何もナイ状態にするのっ。すると、数式が私のお肌に直接染み込んで、地肌にうるおいをもたらすのよっ」
「おおっ!僕もうるおうぞっ!せっかくだから、その邪魔っけな下着も…」
「あら?コレはベルフェゴール素数だわ。Cicada3301なんかと同じ。バイロは、数学ゲームをやっていたのねっ」
下着はダメかw
「え?この走り書きが数学ゲームだって?」
「貸して。ベルフェゴール素数こそ、いわゆる回文素数よっ。666が13個のゼロで挟まれ両端に1が来る。名前の由来は地獄の悪魔…わかったっ!現場に隠された数字をその数で割ると次の座標になるわっ…」
その瞬間、下着姿のハランの肢体がパッと光り輝いたように見えた…が後で錯覚と判明w
「私達は、ゲームの最終ステージの鍵を手に入れたわっ」
「おおっ!じゃファイナルステージへレリゴーだ!」
「私達が1番乗り!クエストの優勝者よっ」
ネットカフェからファイナルステージへ急ぐ僕とハラン。
ゴールは間近だ。自然と歩調早まる中、せわしナイ会話。
「恐らくバイロとウォラは、ほぼ同時にステージ11に辿り着き、ソコにいたコスプレガールから、さっきハランが解いた数学問題を出題されたンだ」
「え?でも、ステージ11のヒントは、ペンキの下に描かれた"バイロ"の名前だったのょ?」
「いや。クエストでは、ステージ毎にコスプレガールがいて、次のヒントを出すのがルールだ。ホラ、バイロはヒントとして、トンでもナイ数学問題を出されて四苦八苦してたろ?」
「では、その数学問題を出題したステージ11のコスプレガールって…」
「コスプレ好きで、戦隊ヲタクで、回文素数にハマってる数学ヲタク女子ってコトになるンけど…あれれ?ソレってハラン、君なのか?」
「…テリィたん。いつから知ってたの?」
「ステージ11に逝った時、君はコスプレガールの話を一切しなかった。何か隠しゴトがあるナと感じた」
「あのね。そのトボけた顔でズケズケ真実を暴くのやめてくれる?」
「因みに、僕と君が学生時代に初デートした"サンフランシスコバー"は、六本木だ。アキバじゃナイ」
「…私がステージ11で出題したら、数学と無縁なウォラは、チンプンカンプンで即その場でギブアップ。でも、統計の心得があるバイロは、個室ネットカフェに持ち帰ったけど…あのメモを見る限り、問題を解く遥か手前で煮詰まってる。少し難し過ぎたかしら」
「と逝うコトは、バイロはファイナルステージへ進めてナイのか?」
「もちろん。だから、私達が間違いなく1番乗りなのっ」
そして、ついに僕達はファイナルステージへと到着する。
勝手知ったる我が家のように、鍵を開け地下へと降りる。
ソコは…ステージ11だった地下喫茶だw
第3章 "ピンク基地"の長い夜
僕のPCいっぱいにミユリさんが映ってる。
「テリィ様?」
「考えてるんだ。でも、通話アプリだと沈黙は不自然だょね。ごめん」
「こんな御時世ですモノ。仕方がありません」
「結局、ファイナルステージでは何もなかったンだ。ファンファーレもコスプレガールのお出迎えもナシ」
「まぁ。でも、ステージ12が11と同じだったなんて。ハランの計算間違いでは?」
「検算してもらった。始点が終点。"第2ファウンデーション"かょ」←
「ゴールが真夜中だったから、主催者側の準備が間に合わなかったのでしょう」
「クエストを主催してるGOTOセンターのスタンスに違和感がアル。誰かを炙り出すためにクエストを仕掛けた気がスル」
「ファイナルステージに肉迫したハラン、ウォラ、バイロの3人には、何か共通点でも?」
「ヲタク…かなwでも、僕達がファイナルステージに到達しても何も起こらなかった。主催者にもコントロール不能な何かが起きてるのカモしれない」
「もともとGOTOセンターには、誰が、いつファイナルステージに辿り着くのか、わからナイのですょね?余りに偶然の要素が多過ぎます」
「彼等は、何かを欲しがってるケド、持ち主がわかってナイって感じだ」
「GOTOセンター自身もクエストに参加してイルのかもしれませんね」
「ナルホド!その着想は…」
「ところで、ハランのブログを見つけました。スゴい内容で圧倒されました。強烈なので、テリィ様もゼヒご覧になって。彼女って、クエストするより、される側だってわかりますから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日の夜。
僕は考えられる手を全部打ってから、ハランを誘って"ピンク基地"にお出掛けスル。
クエスト終盤とあり、ステージ10である"ピンク基地"は大変な賑わいとなっているw
小さなジモティ系スナックは、店の外までコスプレしたヲタクでごった返す大騒ぎだ。
口々に自分の知ってる情報を繰り返し力説してはセッセと新たな情報と交換している。
店のアチコチで陰謀が語られ、お誕生会が始まり…や?プロポーズする奴まで現れるw
おお!正にクエストに登場スル"酒場"そのものだ。下手なコラボカフェも顔負けだ。
いつもの百倍儲かってピンクはホクホク←
「戦隊ヲタクのバイロのメモには、全て日時が書き込まれてて、ソレに拠れば奴は昨夜、ステージ11に辿り着いたらしい」
「ええっ?ステージ11?神業かょ?俺なんか未だステージ5だ」
「でも、ステージ11でコスプレガールが出した問題が超難問で、今、スーパーコンピュータを使って解析中らしいぞ」
あぁ何だかトンでもナイ話になってるょw
「でも、バイロって野郎は、元は統計ヲタクなんだろ?ギャンブルの勝馬予想とかやってた奴って聞いてるケド」
「ソレに、誰が見たのか知らんが、ステージ11のコスプレガールは"ピンク基地"の常連で、彼女は人間スパコンとも呼ばれる天才少女。超難問の解析は、彼女がやってるらしい」
「ええっ?こんなローカルスナックの常連なんて、どんなオバちゃんナンだょ?でも、そのオバちゃんが、ヒロインクエストの最後の希望なのか?」
シメシメって感じでママが火に油を注ぐ!
「そのウチの常連のコトを、バイロはショットガン片手に必死になって探しているのさ。ショットガンを抱えたサイコパスが彼女を店に呼び出し、ファイナルステージへの情報を聞き出そうとスルかも?!さぁ、次のステージ11の情報を握るコスプレガールはアタシだよっ!みんな、おかわりスル?あ、奥のアンタも?」
「ヲタクは、自分が恥をかかないタメなら、何でもヤル。バイロは、自分に解けない問題を出題したコスプレガールを殺す気ナンだ。あの"マスターキー事件"が何よりの証拠サ。ヲタクを突き動かすモノ、ソレは"恥"だ」
「そうそう。簡単な話ょね。"ピンク基地"に集まったクエスト参加者を寂れた場所へ連れて逝き、ソコで始末スル。そして、ヒロインクエストは、誰一人解けぬ謎のママ終了とスル気ナンだわ!バイロにとって、コレはクエストじゃない。罠なのよ!さぁ"ピンク基地"の次のステージには逝かない方が身のためよっ!おかわりスル?あ、奥のアンタもw」
傍のハランが小声で僕に囁く。
「要約すると、私はバイロに殺されるために必死にクエストをやってたってコト?」
「うーん。今回は良い教訓が得られたね。クエストはバカがやるモノだって…おや?新橋鮫からメールだ。GOTOセンターの裏に…え?何だ?マジかょ"官邸"が絡んでるらしい」
「ええっ?!ソレじゃ総理大臣がクエストを主催してるの?総理は、戦隊ヲタクに恨みを持ってる?幼い時に両親を殺されたとか?」
僕は肩をスボめてみせるしかナイw
「茶化スなょ。でも、官僚カモな。軍事利用出来る数学者を炙り出しては密かに抹殺してルンだ」
「令和の魔女狩りよっ!あぁ、回文素数の権威でアル私は、官邸が放ったスパイに尾行され、密かに闇に葬られるのだわ!」
「なるほど!情報機関にマヌケは多いが、死体の始末だけは上手いからな」
ココで、僕は店内の全ヲタクに話しかける。
「みなさーん。全員、ヒロインクエストの参加者かなー?」
「ほとんどがそう!ねぇテリィたん!クエストの優勝候補は誰?」
「ソレは…ココにいるハランに違いない」
すると、低いドヨメキが起こり、僕とハランを中心にした大きな人の輪が出来る。
ハランは…いきなり何?って顔して怒りの視線をぶつけてくる。因みに王妃コスw
「ハランって"戦隊ヲタクに寄り添う"をモットーにするネット活動家だょね?戦隊シリーズをバカにするエセ文化人や教育ママと戦う"リボンの騎士"だ」
「彼女は、数学ゲームもしててCicad3301を解いたと自慢してた。でも、ソレはウソだと証明されて、確かブログが炎上してたな」
「あぁ。アレはかなり醜い、低次元な争いだった。僕は今、彼女のブログに潜む、独特な数学的思考を調べているンだ。ソコに、ヒロインクエストの謎を解く秘訣が隠されてイルに違いナイ」
おいおい。ソンな手法がこの世にアルのか?
「必ず見つける。彼女は天才ナンだ。超弩級のな。あらゆる数学ヲタクを超える。エゴが強過ぎるのが難点だ」
「いや。ソコが可愛いンだょ!何しろ、日々世界中で数学は悪用されてる。ワクチンの販売や戦争正当化のための偏ったデータ。悪い奴らが数学を利用してルンだ。だから、彼女は戦うコトにした。そして、お尋ね者となったンだ」
「お尋ね者?」
僕がハランを見ると、今度は、彼女が肩をスボめてみせるw
「ヘラルドトリビューンのコピーがある。FBIが匿名ブロガーを手配したとの記事だ。何でも国防総省が開発中の戦闘機に関して、虚偽の性能数値が出回ってたらしい。彼女は、ソレをブログで公表した。友達から内部情報を得ての暴露だ」
「国防総省の機密情報をネットに?」
「そうよ!私はヘマをした。毎度のコトよ。だから、テリィたんにもフラれた」
驚いてハランを見ると、今度は彼女は両手で顔を覆いながら、大声を張り上げ叫んでるw
「何だって?またテリィたん絡みかょ。今度は女を泣かすなょ」
「そうょ!テリィたんは、アキバを選んだ。私は用済みなのっ」
「あ、ママ。紅茶を淹れてくれ」
ますます店内が盛り上がって、笑いの止まらないピンクが嬉しそうに答える。
「OK。萌え萌えキュン」
「教えて。私は学生時代にミスをした?なぜ挽回のチャンスをくれナイの?当時の私はアイドルだった。テリィたんでさえ、大勢の取り巻きヲタの1人だったわ」
「そりゃどーも」
「でも、お友達がいなかった。ソレに悩んでいた時に、お気楽ミュージシャンであるベースの彼やテリィたんに出会った。そして、ヲタクになれば悩む必要がナイと気づいたの。テリィたんからは、ホント多くを学んだわ。でも、そのテリィたんが今、私を人生の負け犬と思うのなら、もう…」
「いや。君の中のヲタクは、いつだって完璧だった。でも、女子大生だった君は、ヲタク以外の部分がドンドンしつこくなった」
「どーゆーコト?」
「人付き合いや就職の相談をして来たり、僕を卒業パーティのエスコート役に指名したり」
「だって…テリィたんしかお友達がいなかったのっ。あの学生時代の日々も…そして、今もっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ハランの居場所を知りたいそうだな」
「アンタは?」
「今からブラックメールを送る。発信元を辿ろうとか思うな。衛星回線にスクランブルをかけてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「deep throatの居場所を知りたいそうだな」
「ハイ、こちら110番。事故ですか?救急ですか?」
「今からブラックメールを送る。発信元を辿ろうとか思うな。衛星回線にスクランブルをかけてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ピンク基地"の1番長い夜も、ようやく終わりを迎える。
僕は、夜の闇へ消え逝くヲタク達をハランと一緒に見送る。
「"官邸"が、GOTOセンターを使ってまでクエストに関わる理由を考えてた。目的は何か。その時、ミユリさんが鋭いコトを口にした。GOTOセンターもクエストに参加してると」
「数学者狩りのコト?」
「違う。ターゲットはタダ独り。たった独りの情報提供者を"官邸"は追っていた。正体を隠し地下に潜伏、アキバのストリートでも匿名を貫き、万世橋にさえ追われる正義の"リボンの騎士"。つまり…君だ」
「"官邸"が私を探してたの?」
「去年、君は国防総省の機密情報をネットにリークした。しかし、通常の産業スパイだったらどーしたろう?内部情報を利用し、そこそこ稼ごうとしただろう」
「ソレでスパイは食べてイルのだモノね」
「しかし、君は数学者の良心に従い、自ら金のなる木を切り倒した。恐らく"官邸"は、数学界の"友好的なハッカーを探してルンだ」
「あらあら。私は何やら儲け損ねたみたいね。どーでも良いけど」
「"官邸"は、国防総省の1件の実態を調査し、彼女の存在を知った」
「そうゆう見方もあるの」
「普通に世の中の見方だ。しかし"官邸"にとり彼女の正体は不明。わかってるのは数学クエストが大好きなコトだけだ」
「そこでクエストを主催したと?」
「ところが、数学ヲタクでアルと同時にコスプレイヤーでもある君は、ステージ10のコスプレガールとして参戦を決めてしまった。"官邸"は、彼女が現れないとヤキモキしていたらしいょ」
「でも、私もヤバいわ。良心の数学ヲタクとは逝え、密告者だし、そもそもホワイトハッカーとして"官邸"に仕える気などサラサラないわ」
「万世橋には、ショットガンを持ってたバイロがサイバーテロリストだと細工しておいた。松住町架道橋下に誘き出されたバイロは、先程、特殊急襲部隊に逮捕されてる。その内バイロの化けの皮も剥がれるだろうが、ハラン。君は、とりあえずは安全のハズだ」
「ありがと」
「僕は、僕の勝手な理由で君を庇った。君には"おんぱ組.inc"メンバーとして、また力を借りるコトになる。よろしく頼む」
「テリィたん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「悪いケド、お前のカミソリでヒゲを…」
店の奥のドアが開き腰にバスタオルを巻いた湯上りの男が"ピンク基地"に入って来る。
「ウォラだね。テリィだ。はじめまして」
「おおおぉ。こりゃ失礼。未だ客がイルとは思わなかった」
「僕達の方は、君が隠れ家から出て来るのを待っていたンだょ」
ウォラは、火照ったカラダのママ、店のカウンターが直角に曲がった先の席につく。
ハイ、みなさん御一緒に!ソコは全国共通で場末スナックの"ママの男の席"だね!
「君が噂の"テリィたん"か。見かけによらズ、何でも見抜く男とのコトだが、俺だって、普段ならズボンを履いてるのだ」
「へぇ。ズボンを…ソレは見抜けなかった。ところで、ピンクならガード下の深夜スーパーに買い出しに逝った。彼女は、性的に大変満足した状態にアル」
「ただいま。あら…」
ソコへ買い物カゴを下げたピンクが御帰宅。
今が昼なら、ホントに近所のおばちゃんだw
「今、御主人に自己紹介を済ませたトコロだょ。このスナックは、実に快適だね。特に閉店後が」
「皮肉に聞こえるわ」
「皮肉だょ」
「何しに来たの?」
「バイロが今、万世橋で長々と話し込んでる。ソレを教えに」
第4章 戦隊OGはうつ向かない
翌日の戦隊バー"ピンク基地"。
「旦那が万世橋に連れてかれて帰って来ないのょ。テリィたん、何とかなる?あのね。神に誓って私達夫婦は、バイロと組んだりしてナイから!」
「知らないょ。でも、ソレなら回文素数の問題が解けなかっただけだから、罪にはならないでしょ?事情を聞かれて終わりでは?」
「そ、そうねwしかし、一夜明けて、どーよ?客は誰1人来やしない。戦隊ヲタクって薄情ょねぇ」
今朝方、GOTOセンターから唐突に"ヒロインクエスト終了"が宣言される。
結局、バイロの思い通り?優勝者ナシのママでクエストは闇に葬られるのか?
と、逝うのは表向き。実は…
「ステージ11の地下喫茶の壁ナンだけど、走査蛍光分光分析装置で調べたら、今の壁画の下から、別の絵が見つかったらしいのょね」
「おおっ!ソレって、サンフランシスコの金門橋の絵だろ?!」
「何ソレ?ディエゴ・ヤマダの萌え絵が出たのょ。前のビルオーナーが隠れ共産主義者で何も考えズに塗り潰してたらしいケド。美術鑑定士に拠れば、ビルの不動産価値の10倍の値打ちがアルんだって!」
何処でソンな話を仕入れたのかは知らないけど、ピンクママは、ヤタラと鼻息が荒い。
まぁこのママなら、ショットガン片手にバイロが押し掛けても平気で酒を売るだろう。
「とにかくね!コレからは戦隊ヒロインもOGの時代なのょ!」
「そ、そう…なの?」
「私だって、戦隊ヒロインを降板してからココまで長かったけど、何とか乗り越え、強くなれた。だから、戦隊ヒロインのみんなにも逝いたい。希望はある。ヤルべきコトをヤリ、自分を愛すれば立派な戦隊OGになれるわ」
「ヤルべきコト?」
「そうよ。最低、出産は経験して欲しいわ。出来れば、離婚もしなきゃ片手落ちってモノょ!」
僕は、ふとハランの横顔を思い浮かべる。
「心中の経験も欠かせないな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのハランは、御屋敷でカウンター越しにミユリさんと向き合っている。
「でも、テリィたんの推しに会えて嬉しいわ。貴女も"おんぱ組.inc"なのでしょ?恐らく数学に関わる案件は今回が初めてなのね。…何?」
「何が?」
「まさか、その手の案件は既にあったケド、テリィたんは、私に声をかけなかった?そうなの?」
「面倒くさい人ね。関係あるの?」
「あるわっ。私は、学生時代から彼にポイされたママだったか、どーかの瀬戸際なのよ?」
「最近だけでも、最先端スタートアップの天才プログラマー、月移民船団の軌道計算を行うロケットサイエンティスト、ソレから、人命を値段として算出する数式を持つ弁護士もいた。みんな、私の竿姉妹よ」←
「私の方が優秀なのに…」
「貴女は、昨日テリィ様とズッと一緒だったじゃない」
「私とは…近所のスナックで偶然再会したからょ。ソレだけ」
ハランは、小さな溜め息を漏らす。
「ミユリさん、1つ聞かせて。なぜココに?」
「ココ?ココは、私の御屋敷ょ?」
「そーじゃなくて。なぜ秋葉原に?池袋がダメでも、他にもあったハズ。なぜ秋葉原なの?」
「アキバが好きなの。貴女は?」
「わからない。でも、ミユリさんも、テリィたんに推されるために、多くのモノを捨てたょね。夢とか。ソレが不思議なの」
「夢を捨てたとは思ってナイわ。何かを得るタメだと思う。貴女は…テリィ様には何を求めるの?」
「私も…同じかな?確かに、何かを得るために彼とつきあっていたわ。あの頃」
今度は、ミユリさんが溜め息をつく番だ。
「テリィ様が、貴女との関係を再現するために、私を推してるとは思わないわ」
「そうね…だって、彼って私の手に負えない。昔も。今も」
「あら、そう?でも、いつだってテリィ様は、私の手のひらの上だけど?」
おしまい
今回は海外ドラマでよくモチーフになる"クエスト"をネタに、リアル元カノの数学ヲタク、戦隊ヒロインOGのスナックママ、その夫の特撮現場の元照明助手、ショットガン片手にクエストに参加する戦隊ヲタクなどが登場しました。
海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ第2波に緊張を深める秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。