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鬼灯町の百鬼夜行◆祭  作者: 宵宮祀花
【伍ノ幕】 オニアソビ

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影が誘う小道

「―――それで、SNSで噂になっているらしくて……誰も全然本気にはしてなかったみたいなんですけど、懐かしいからやってみようって話になって……最終的には、確か十人くらいの集団になっていたかと……」


 昼休みに話していた内容が気になった千鶴は、あのあと自分の端末で神隠しに関する噂がないか調べていた。どうやらオカルト好きたちが話題交換するグループが存在し、そこで鬼ごっこに紛れる本物の鬼の話題を拾ったようだ。他にも全国各地の七不思議や心霊スポット、こっくりさんをやってみた結果などが投稿されている。


「わたしも気になって調べてみたんですけど、そういうサイトって意外と多くって……皆が見ていたのまでは見つけられなかったんですよね……ただ、似たような噂は色んなところで見つかったので、ネット上でも流行っているみたいです」

「僕も見てみよーっと」


 桐斗が自分の端末を操作して、適当な語句で検索をかける。大して絞り込まずとも、オカルト関連サイトは山のように見つかった。それこそ創作ネタを投稿する場所から、実体験を語る掲示板、地方ごとに噂を集めて心霊スポット地図を作っているサイトなど様々だ。


「黄昏時に影踏み鬼をすると本物が紛れてきて、本物の鬼に捕まると影を取られる……こっちのサイトでは帰りに人数を確認すると一人増えてるって書いてあるね。隠れんぼしてて誰も探しに来ないから外に出てみたら、全然知らないとこにいたってのもある」

「良くあるヤツだな」


 桐斗が見ているサイトは、恐らく鬼ごっこをしにいった彼らが見ていたものの一つに過ぎないのだろう。現に千鶴は、異なる文言で似たようなことを記している別の噂投稿サイトに遭遇している。尾ひれをつけながら、噂は無責任に拡散していくという図式をここでも律儀になぞっているようだ。


「これオフ会でやってみようって話もあるみたいですね……それこそ誰が紛れてるかもわからないと思うんですけど……」

「ま、知らなきゃそんなもんだよな」

「時代ってやつー?」


 柳雨が後頭部で手を組み、仕方ないといった様子でそう言うと、桐斗も頷いてそれに同意した。

 千鶴はいまの話が本当に起きるのだとしたら、遊びが始まる前に彼らを止めたほうが良いのではないかと思った。が、昼休みに話しかけてきた彼女の何気ない言葉に、その勇気も霧消した。決して悪気があって言ったわけではないとわかっているから、余計に言い出しづらくなったのだ。


 ―――自称霊感少女とか中二で卒業しとけって。


 それが一般的な反応だ。千鶴自身、自分が非現実的な存在を知っていなければ彼女と似たような反応をした自信がある。千鶴のクラスではないが、霊感があると言っている女子生徒を囲んで面白がっている様子を見かけたことがある。知らない人間の反応などそんなものなのだ。

 黙り込んで何事か考えている千鶴の目の前で、ひらひらと手が振られた。ハッとして顔を上げると、心配そうに覗き込む桐斗の顔が思いの外目の前にあって驚いた。


「大丈夫? 仲いい人でもいた?」

「あ……いえ、そういうわけではないんですけど……こういうときわかっててもなにも出来ないのって、歯がゆいなと思って……」


 どうやって危険を伝えればいいのか、いくら考えても空想上の不審者を作り上げて、危ない人が彷徨いているからというくらいしか思いつかない。もし本当のことを言おうものなら、痛々しいものを見る目で見られ、教室に居場所がなくなるのがオチだ。


「千鶴は優しいねー」

「そんな……そういうわけでもないですよ。わたしは普段、迷惑をかける側ですから、余計役に立てないのが気になるだけです」


 本当に優しいなら、自分の立場がどうなろうと伝えているはずだと、首を振る。


「そんなこと気にしないの」


 よしよしと宥めるように頭を撫でる桐斗の手は、子供をあやす手つきだ。ここにいる誰一人として、危険を危険と知らぬままに遊ぶ彼らを心配することもなければ同情することもない。人間に彼らの道理が伝わらないことを知っているからだ。


「でも、そんなに気になるなら、帰りにその公園寄ってみる? 覗くだけでも」

「そうですね……そうしてみます」


 もしかしたら、標的となるのは小学生くらいの子供だけかも知れない。影踏み鬼ならかくれんぼのように単独で物陰に行くこともないのだから、いなくなることはないかも知れない。そう希望を並べてみても、不安は拭えない。

 千鶴はそろりと立ち上がると、鞄を肩にかけ直した。


「それじゃあ、わたし、見に行ってみますね」

「僕もついて行くよ。公園は縄張りの真ん中だし」


 思ってもみない申し出に、千鶴は目を丸くした。


「いいんですか?」

「うん、一人で行かせるほうが心配だもんね」

「ありがとうございます」


 桐斗の動機はあくまでも千鶴の保護であって、遊んでいる生徒たちの心配ではない。それでも着いてきてくれることがうれしくて、千鶴は安堵の滲んだ声で礼を言った。


「じゃ、なんかあったらメールするね」

「おー行ってらー」


 軽く手を振りながら答える柳雨と、視線をチラリと寄越しただけの伊月に見送られ、桐斗は千鶴を伴って部室をあとにした。

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