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Cross-Psychic Child-  作者: 悠木おみ
prologue
3/5

彼と彼女の関係

「叫んだって、何も変わらないことくらい理解しているのだろう?」

 感情のこもらない冷たい声で告げられた言葉を理解する前に、少女は言葉を告げた少年を睨み付けた。

「……」

「俺を睨んだところで、何が変わるわけでもないだろ」

 肩をすくめて呆れたような声を出した少年に、少女は少年と同じくらい冷たい、泣き叫んで掠れてしまった声で零した。

「あんた、やっぱり“潜研”の人間よ……能力の開発専門で、人の気持ちなんてこれっぽっちも理解してない」

「なら、お好きなように」

 少女の言葉に特別反応を示さず、少年は呆れたように溜息混じりにそう告げると、その場を後にした。

「人でなし」

 少年の背中に向かって、少女は吐き捨てた。少年は、その言葉を耳にしても眉一つ動かすことなくその場を後にした。




××××




「また、やってる」

 泣き崩れる少女を放って歩いていた少年の背に、先ほどの少女とは異なる少女が声をかけた。

 夕暮れの空に、少女の漆黒の髪がふわりとなびく。染めているのだろうか、髪の一部、毛先に程近い場所は日の光を受けて金色に輝いていた。

「……リサ」

「不器用ね、タツキ」

 くすくす、といいたいことだけを告げてリサはただ笑った。

「彼女、知り合い?」

 ひとしきり笑って気が済んだのか、目尻にたまった涙を拭いながらリサは首を傾げた。

「……」

「潜在能力開発研究所のことを知っているようだったから」

 眉を寄せた少年―樹生の様子に気づいたのか、リサは敢えて言葉にした。

 それでも樹生のほうに視線を向けないあたり、彼女がその話題に対して、それほどの興味を抱いていないことが伺える。

 口調も、答えるも答えないも樹生の自由だ。そんな風に言っているかのようだ。

「俺は知らない……潜研には、あの程度の女なら吐いて捨てるほどいた。男のほうも」

「ま、そうだけどね」

 興味なさ気に告げた樹生の言葉に、期待をしてはいなかったのか、リサは肯くと樹生に視線を向けた。

「でも、それが“任務”に支障をきたすとしたら話は別。……言わなくてもわかっていると思うけれど」

「当たり前だ」

 淡々と告げるリサの言葉に、樹生も当然だといわんばかりの態度で頷くと、二人そろってその場を後にした。



 ただ、その場所には少女の泣き声だけが残った。

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