EP1 プロローグから約2ヵ月後
国立晴嵐学園。
日本中どころか、世界でも有数の資産家や、政財界の子息・子女のみが集められており、一般的には超セレブ高校として有名な学校だ。
必要な偏差値はもちろん高く、入学金も一人当たりの平均が一千万を越しているという衝撃の事実を資料で見た時には、「馬鹿じゃないのか!?」と思ったものだが、実際にこの目で見てみると納得のいくものがあった。
機能性無視したかのようなバカでかい外観の校舎や、広大な敷地。厳重な警備体制と、学園のあちこちに仕掛けられた監視カメラ。挙句の果てには、学園専属のSPはいるわ、学食のレベルが高級ホテル並みだわと、考えられる限りの金の使い方をしていますと言わんばかりの設備だった。
極秘資料では、学園がさらに隠し玉を持っている可能性があると書かれていたが、これ以上はもうお腹がいっぱいである。
この度、お金持ちでも何でもないこの俺が、場違いにも入学することになったのは、学園の秘密を探るためだとか、子息の誘拐などではない。
害を及ぼすどころか、むしろ守りに来た存在だ。
学園に雇われているSPやカメラだけでは、個人情報の保護などの問題から、どうしても死角があり、それをできる限り埋めれるようにと、厳選な審査の下、俺のようなエージェントが選ばれるのだ。
ちなみに、エージェントは俺以外にも、各学年に10人程度はいるはずだが、お互いに素性は知らない。そのうち接触することもあるだろう。
そして現在。
桜の舞う入学式から2ヵ月経った。
エージェントとて目立たないようにと、野暮ったい伊達メガネを装着し、わざと陰気な雰囲気を出し、登校初日からずっと、自らクラスメイトに話しかけないように心掛けた。
おかげで今では、狙い通りの立派なボッチとなることが出来た。
学校生活を楽しめと言って頂いた司令官殿には申し訳ないが、俺はこのスタンスを崩すつもりはない。
青春など、俺には不要だ。
以上。定期報告を終了する。
「ふうー……」
定期報告書の作成を含む、一通りの作業を終えて、パソコンをシャットダウンしたところで、津田弘明は深くため息を吐いた。
任務にあたり、あてがわれたマンションの一室から、何気なく学園の方を見る。すでに日を跨ぎそうな時間帯のため、学園も完全に消灯しているようで、警備の人が持つライトだと思われる光が、ちかちかと瞬いている。
その光を見ながら再度この二ヵ月のことを思い返した。
入学当初には軽い派閥争いや、部活勧誘ラッシュが見受けられたものの、弘明が介入するほどの騒ぎや、事件は起きていない。
エージェントとしては、多少のやるせなさはあるものの、この学園に来る前は、訓練と勉強漬けの毎日だったため、偶にはこんな日々も悪くないかと思っている自分がいた。
「明日は休日か……」
学園が休日の時は、エージェントとしての任務も緊急時を除き免除されているのだ。
以前に何度かあった休日では、部屋にこもりパソコンをいじっているうちに、終わってしまっていたのを思い出す。
「久々に出かけてみるか」
学園を中心にした、周辺のマップはすでに頭に叩き込んである。
そこから、最寄りのショッピングモールまでのルートと、所要時間、所持金などから、明日のスケジュールを頭の中で組み立てていった。
文章の切り方苦手。全体的に硬いし、つたない。
いつか慣れるんだろうか。