始まり
俺は目が覚めると転生していた・・・。だが、神様に転生させてもらったというわけではない。気が付いたらそこに居たのだ。そして俺は気づいたのだ。あれ此処、前世で呼んでたラノベの世界じゃね?っという事実。
そして思った、今からいろいろ頑張れば、なれるのではないか?前世で密にあこがれていた主人公の前に初期で現れて圧倒的な強さを見せつけて終盤で味方になってすごくかっこよくなるそんな悪役に。
っというわけで、現在5歳修行開始だ。
一応この世界についてまとめておくと、ここは魔法が広まった現代の東京を舞台にしていて、主人公はひょんなことから学校の帰り道で傷だらけの少女を見つけて助けてしまう。それが、名家のお嬢様でその出会いから魔法使い育成のための名門の高校に通いだして魔法使いの犯罪を取り締まる組織に入ることになる・・・。
あらすじはこんなものだ。
というわけでまず作品の中でもかなり強い魔法使いになるべきなので修行だ、修行。
あ、言い忘れてたけど俺もかなりの名門の家です。しかも、作品のヒロインの一人である柊 雪花の兄です。
修行から三年、俺にはかなりの魔法適性があることが分かった。人は人属性の魔法しか使えないというのが原則だ。そして、柊家は氷属性の家系で俺にはその適正がずば抜けてあった。そのうえで、小さなころからの英才教育・・・加えて、修行。強くならないはずがなかったのだ。そして現在、俺は8歳にして当代最強だとか天才だといわれるようになった。
話が変わるのだが、妹が生まれてからというもの俺はキャラづくりに四苦八苦している。できれば、妹が物心がつく前に決めたい。と思っていたのだが、なかなか決まらずずるずるとここまで来てしまった。妹は5歳。このままではまずい・・・というわけで問題を整理してみよう。その一、まずこの作品のラスボスは公式チートというやつであまり派手なことをすると目を付けられかねない。その二、俺が敵サイドに行く理由を作らなくてはいけないということ。適当すぎると、悪役としてかっこよくならない、しかし作りこむには時間がない・・・。
困った・・・。
どうしたものか・・・。
さらに六年が経ちました。え、いきなりすぎるって?いや~いろいろあったんですよ。いろいろ・・・まあその辺は置いておいて俺は今から重要なセリフを言わなければならない。
「父上これまでです」
「なぜだ、緋色」
「これが俺の答えだ」
「フン、儂も置いたか・・・息子のたくらみすら読めんとは」
そう言い残して、力なく倒れていく父を見ながら、そろそろだと確信をもって外を見た。
「お兄様?」
「雪花か」
庭には、案の定彼女がいた。
「これはお兄様が・・・」
信じられないといった声を出しながら、数歩あとずさり座り込んでしまった。倒れ伏す父とその傍らに返り血を浴びた兄がいれば理解が追いつくだろう。
「昔、お前は言ったな。魔法で多くのものを守りたいと。教えてやる。お前の魔法では、誰も助けることなどできない・・・お前は、無力だ」
「兄さん、何で・・・こんな」
周りを見渡せば、辺り一面が凍っている。辺り一面銀世界・・・なんてきれいでもなく地面から生えた氷のトゲは多くの人間を刺し貫いている。氷も、地面も、赤い血で染まっており、振りだした雪をも赤く染めている。まさに地獄絵図。11歳の少女には、トラウマだ。しかし、ここで同情しては悪役の名折れ。
「フン、俺の目的のために行動しただけだ。いいか、雪花・・・俺に勝ちたくばつよくなれ。余計な感情など捨てろ」
決まったぜー。かっこよく決めたところで、逃げるとしますか。
「フッ・・・潮時か。雪花、俺が憎ければ恨め・・・そして強くなることだ」
そう言い残して、俺は屋敷を後にした。