1話
なろうの機能が理解できていないのでいろいろ不手際が多いと思います。
何文字くらいが読みやすいとかもわかりませんし仮投稿という体でご理解ください。
~?年 ???~
「お…くだサ…」
声が聞こえる。
それと同時に背中に感じる硬い感触。
寝ていることは分かるけどなぜベッドじゃないところで寝ているのだろう。
「おき…くだサーイ」
意識が覚醒し、脳が聞こえた言葉を理解する。
聞き覚えのない声が、私に起きろと言っていることは分かる。
誰だろうと記憶をたどってもこんな胡散臭い喋り方をする知人はいない。
女性の声、年のほどは20代前半といったところ。
「どなた…ですか?」
声帯が震え声が出るが聞き覚えのない声だ。
でも私の思い通りに出ると言う事は私の声なのだろう。
「Wow!!起きていたのですネ!!意識はハッキリしていますカ?体に痛みはありますカ?それからそれから…」
「ちょっと良い…ですか」
私の問いに答えることなくまくし立ててくる相手に少し苛立ちを覚えながらさえぎる。
「Oh…申し訳ありまセン。何分このような蘇生は初めてなものデ…」
「蘇生?」
喋り方も気になるが普段は聞きなれない言葉に引っかかる。
「Yes!!苦労しましタ…こんなに特殊な蘇生をすることになるとは露ほど思っても見ませんでしたからネ…」
溜息の深さから苦労が感じられるがそんなことはどうでも良い。
顔も知らない、女性『おそらく』は蘇生と言った。
この状況からして恐らく私を蘇生したのだろう。
しかし状況が一切つかめない。
混乱はしていないが困惑はする。
「どうしましタ?」
うなる私に不思議そうな声をかける女性。
「これは…一体どういった状況なので?」
額に手をやりながら再び問いを投げる。
そこで違和感を感じた。
妙に毛深い。
額か手のひらか分からないけどふっさふさだ。
「アァ…なるほど?そうですネ、まずはご自身の状況を理解していただくのがよいでショウ。」
理解するも何も全身ふっさふさなこと以外わからない。
「なんで私、毛むくじゃらなの?」
女性は答えてくれるだろうか。
いままでの会話から私が求める答えが返ってこない気はしているが、聞かないわけにはいかないだろう。
「とりあえずこちらを向いテ、目を開けてくださイ」
足音が聞こえ何かを引きずる音が聞こえる。
「私は目が…」
「大丈夫でス、そのあたりも織り込み済みで調整していますかラ」
一層訳がわからないけど目を開ける以外選択肢はなさそうだ。
何を期待する訳でもないが起き上がり目を開けた。
「え…なんで…」
目が見える。
光が網膜に焼き付き脳が色を認識した。
薄暗い部屋の中に金髪でメガネ、満面の笑みを浮かべた女性がいる。
「私ではなく、鏡をどうゾ?」
そう言われ反射的に女性の隣の鏡を見た私の目には今まで見たこともない生物が映り込んでいた。
全身を金色の体毛に覆われた人型の生物。
顔の中心には黒い鼻が、その上には茶色の目が二つこちらをのぞいている。
何より目を引くのは頭頂部に垂れ下がる二つの耳。
力んでみると少し動く。
「なかなかキュートですヨ?」
「………」
開いた口が塞がらないとはこのことだろう。
両の掌は毛が薄く、爪は人間のものだが、その他の場所は毛むくじゃら。
「もちろん尻尾も生えてますよ♪」
少し茶化した様に言われ、振り返ると尾てい骨から見事に尻尾が生えている。
まごうことなく犬のそれ。
試しに左右に振ってみると弱々しいが動く。
「体の機能に不全はありませんカ?」
歩み寄ってきた女性が体のあちこちに触ってくる。
「これは…」
やっと絞り出した言葉に女性が反応する。
「蘇生の際に彼女の意思を尊重したのでス。彼女…ブランさんの事は分かりますネ?」
ブランという名前に反応し尻尾が動く。
「ブラン…あの子は…どうなったの?」
かえってきた答えは意味不明な物だった。
「あなたを蘇生する際に彼女の体を使用しましタ」
蘇生する際に使用?
謎は深まるばかりだ。
困惑する私に向けて女性が説明を始める。
「あの日、あなたは空の割れ目から落下した建造物により圧死しましタ。」
なぜか鮮明に光景が思い出せる。
見ていたはずがないのに。
「その際、生きている状態で初めて濃厚な"マソ"に触れたのがあなただったのでス。」
女性は続ける。
「人類で初めて"マジュツ"に覚醒したのがあなただったのでス。」
マソ?マジュツ?知らない言葉の羅列に混乱する。
「前代の私は、あなたを保管しましタ。」
「待って…理解が…追い付かない…」
説明を遮り情報を整理しようとする。
「アー…簡単に言うとですネ?世界で初めて魔法を使用できる人間だったあなたを、むざむざ殺してしまうのは勿体なかったって話でス」
滅茶苦茶簡略化してくれたようだけど、半分くらいしか理解できない。
「要するに…私は…魔法が使えるよう…になって」
とぎれとぎれだが確認する。
「Yes」
なぜ英語なのだろう。
「それが…人類初めて…だった…?」
「そのとおりでス」
にこやかに答えるあたり間違ってはいなさそうだ。
「で…その…貴重な体を…保管して…モルモットにしたと?」
「そこはNoでス」
意外な答えが返ってくる。
「あなたの体は研究材料として使用していませン。」
「じゃあ…なんで…私はこんな体に?」
「そこでブランさんの登場でス。」
彼女の説明は要約するとこんな感じだった。
あの日、圧死した私のそばにはブランが寄り添っていたそうだ。
私とブランの死体は損壊が激しく、肉塊と化しておりどちらがどちらか判別がつかなかった。
私の体には魔術を使用する際に使用する回路が発現しており、時間はかかったが選別自体はできた。
しかし人体の修復はできなかった。
そこでブランの肉体と私の肉体を組み合わせ、そこに魂を注ぎ込み今の私ができたらしい。
この話を聞いたとき私は複雑な感情だった。
「ブランさんの肉体には回路がなク、修復は簡単だったのですガ、あなたの体は無理でしタ。」
彼女はそれまでのふざけた口調ではなくまじめな口調に変わっていた。
「ブランの意思を尊重したって言ってましたけど…どういうことですか?」
他にも引っかかる点はあるが一番最初からあった疑問を解決したい。
「実験的に行ったブランさんの蘇生が成功した時には、その時の技術であなたの修復が困難なことは分かっていましタ。」
こちらを見つめ語る彼女からは何とも言えない感情が見て取れる。
「そこで私はブランさんをに二つの道を提案しましタ。」
ここで私の修復ができる技術まで発展するのを待つか。
いままでの事を忘れ、この世界で自由に生きるか。
「ですガ、技術の発展には多大な時間を要しまス。あなたの寿命が尽きるまでに蘇生がかなうかどうかわかりませン。」
私がそういった時、彼女はなんて言ったと思いますカ?
女性はこちらに聞いてくる。
なんとなくわかってはいたが首を横に振る。
「そしたら彼女…『私の体を使えば彼女は蘇生できますか?』って…」
苦笑しながら続ける。
「彼女は折角拾った命をあなたのために投げ捨てると言いましタ。正直、私には全く理解できませんでしタ…」
そういった彼女の目には涙が溜まっている。
私は何も言えない。
「バカな動物だ、と一蹴することもできましタ。でも…」
そこで涙をふき彼女は震える声で続ける。
「私は彼女の意思を尊重しましタ。」
なぜとは問わない。
「彼女と過ごした時間は短かったでス…」
ですガ…独特な喋り方も気にならないくらい私も真剣に聞き入っていた。
「ですガ…彼女があなたをどれだけ愛していたか知るには十分な時間でしタ。」
その言葉で私は涙を抑えきれなくなった。