風に乗ったたんぽぽ
この季節は ありふれた言葉ですが、出逢いと別れの季節ですよね………
別れは悲しくて寂しいものですが、心に残した思い出は いつも私の中に宿っています。
たまには 励まされ、たまには 答えをくれる思い出は そっと置いとくつもりです。
嫌な思い出は ぽいって捨ててしまう私はだめでしょうか?
(;>_<;)
土の中からもぞもぞ……
もうお外に出ても大丈夫かな?
ちょっとだけ頭を出してみて……うー、寒い!
もう少し待ってみよ。
もう一回、えいっ!
あったかい~
ぽかぽか…
たんぽぽは芽をだしました。
夏でも秋でも冬でも良かったんだけどね、やっぱり春の風に乗って旅にでたいからね。
可愛い黄色い花が咲きました。
花びらが1枚散り2枚散り……そして全部散ってしまいました。
花びらが散ったところから ぷくぷくっと膨らみはじめて、ふわん!綿帽子に変わりました。
まんまるい真っ白な綿帽子です。
春の風がそよそよ………
「もうすぐ、みんなともお別れしないといけないね」
「いやだよ、みんなともっといたいよ」
「寂しいけど旅も楽しいよ、きっとね!」
「でも…」
「みんな、どこで花を咲かせたいの?」
「僕はね海が見える所に咲きたいんだ。海にいる生き物を1度でいいから見たくてね」
「私は山よ。空気の澄みわたる所がいいの」
「私はね、人が沢山住んでいる所よ。だって、綺麗な花を咲かせたら見てほしいでしょ」
「私は、学校!子供達が沢山いるところだったら、私が綿帽子をつけたとき、きっと誰かが、 ふー!って息を吹き掛けて、飛ばしてくれるわ」
「僕はね、空高く舞い上がり、雲の上に咲きたいな」
「私は この場所がいいなぁ、この場所にいて、またみんなが種になったとき 帰ってくるのを待ってるわ」
「じゃあ約束しようよ。みんなが綿帽子になって、種を風に乗って飛ばす時、ここに戻ってこよう」
「そうね。そうして、ここに綺麗な花を沢山 咲かせましょう」
「どの風に乗っていこうかな?」
「強い風じゃないと遠くまでは行けないかもね」
ヒュー!風が吹きました。
「まだまだ、もっと強い風じゃないと……」
ヒューヒュー!うーん、まだ、こんな風じゃだめだよ。
ビュービュー!春一番の強い風がたんぽぽの綿帽子に直撃しました。
「あ~、僕もう離れちゃいそうだよ~」
ヒュー!風がたんぽぽに息を吹きかけました。
「うわ~、みんなさようなら、僕は旅に出るね。そこでまた綺麗な花を咲かせるからね。みんなも頑張って、いい場所を見つけてね」
さようなら……
ビュービュー!ヒューヒュー!ヒュー
さっきよりも強い風が吹きました。
「あー、私ももう離れるわ。みんな、頑張って綺麗な花を咲かせてね!さようなら……」
とうとう強い風は たんぽぽの種を吹き飛ばしました。
ふわふわ ふわふわ……
みんな、風に運ばれて行きました。
「うーん、うーん!」
そう、ここで花を咲かせたい種は 必死で土にしがみついていたのです。
風が止み、ここに残った種はそこで芽吹き、しっかり土に根を下ろしました。
さてさて、他の種達は何処に行ったのでしょうか?
「うんしょ、うんしょ、もう少し、もうすこし!やったぁ、やっと到着したよ」
そこは綺麗な青く澄みわたる海の岸でした。
「うわー、綺麗な海だなぁ。あっ、お魚が跳ねた。あれー、あれは?大きい魚?前に鳥さんから聞いた鯨だ!うひゃー、願いが叶ったよ!飛ばないように、根を降ろそう」
そうして、1つの種は岸の間にある土に根を張りました。
「もっと、もっと、まだまだ……もっと高く……ふぅ~、ここだ!あっ、こんにちは。僕はね、あっちから飛んできたんだ!君はどこから?」
「こんにちは。私は、あの山からよ」
「ここは空気が美味しいね」
「そうね。この山には沢山の種が飛んでくるわよ」
さてさて、まだまだと一生懸命飛んでいる種がいました。
「早くしないと風が止んでしまうよ~、うんしょ!うんしょ!」
そろそろ風が止みかけたときです。ふわっ、ふわふわ…
「ここは…やったぁー!雲の上に到着!ここならのんびり花を咲かせられそうだよ。」
この種は 見事に雲の上にたどり着いたのです。
あちこちの学校を捜していた種は…
「ねえねえ、みなとちゃんのランドセルにたんぽぽの種がついているわよ」
「うわ、可愛い!じゃあ、ここに置いてあげようか」
そう言って子供達は1つの種を砂場の角に置いてくれました。
「きやー、願いが叶ったわ、ようし!子供達の為に綺麗な花を咲かすわよ!」
「うわぅ、うわっ、踏まれるよ~」
人混みに落ちた種は アスファルトばかりで土をなかなか見つけることができません。
「あったぁ、ここなら皆に見てもらえるよ」
人に沢山見てもらいたい種は 歩道の角にアスファルトに空いた穴を見つけました。少し窮屈だったけど、そこに根を下ろすことにしました。
そうして、どの種もそれぞれの場所で花を咲かす事ができたのです。
「まだ、みんな帰ってこないかなぁ?少し寂しくなってきたわ」
そう、ここに残ったたんぽぽは綿帽子になり、みんなの帰りを待っていました。
風が吹き始め、強い風がヒューと吹きました。
「みんなさようなら、私はまた、ここに種を下ろすからね、旅を楽しんできてね」
この場所に残ったたんぽぽの綿帽子は、一粒の種だけを残してみんな風に乗って飛んでいきました。
まだまだ、風は強く吹いています…
「登る時は大変だったけど、降りるのは楽だなぁ。それー!到着。ただいまー!」
「あっ、お帰りなさい。楽しい旅はどうだった?山はどんな所だった?」
「うん、色々な花が沢山咲いていたよ。それにね、僕と同じ花も咲いていたよ」
「それそれー、うひゃー、風さん、後少し………海の風は冷たいなぁ、ようし、到着!ただいまー!」
「お帰り、海まで行けたかな?」
「うん、それがね、鯨まで見れてね、もう嬉しくて………」
「話しを聞かせて」
お魚の事や鯨の事を話していると………
「うわー、いててっ、ここは?あっ、帰ってきたぁ~」
「お帰り」
「余りにも高いところだったんで、降りて来るのが怖くなってね。そしたら鳥さんが飛んできて背中に乗せてくれたんだ、土を見て安心したら 鳥さんの背中から滑っちゃった」
「雲の上に行けたの?」
「うん、行けたよ。ふわふわしてて、とても気持ち良かったよ」
「いいなぁ、あんな高いところから無事に帰ってこれてよかったね」
そよそよ風が吹いています………
「あー、楽しかったぁ」
「お帰りなさい」
「もう、みんな帰ってたんだ、私ね子供達が手に持ってて、もっと一緒にいたくてね なかなか飛べなかったの」
「学校に花を咲かせたの?」
「そうよ、それも毎日子供達に出会えるお砂場よ。私が綿帽子になったら一人の子供がね、この綿帽子可愛いから持って帰るって言いだしてね…でもね、途中で風が吹いてしまってね、飛んでしまったの。でもね、その子がね、私に言ったの!また綺麗な花を咲かせてね~って!」
「良かったね」
「ふえ、ふう、あ~、やっぱり広い土はいいわね」
「あら、お帰りなさい。良かった、無事だったんだね、人混みは危険だから心配してたんだよ」
「ありがとうね、人が沢山いるところはね、土があまりなくてね、アスファルトの小さく空いた穴を見つけてね、やっと根を下ろせたの。でもね、花を咲かすのが大変で、固くてねなかなか芽をだせなかったの」
「そっか、でもよく頑張ったね」
「うん」
また、この場所でたんぽぽ達は綺麗な花を咲かすことでしょう。
〇〇おしまい〇〇
読んでくださり ありがとうございます。
窓を開けると春一番かな?と思う強い風が吹いているのですが、やはり、とても寒いですよね。
皆様も、この季節の変わり目、お身体に気をつけてくださいね。




