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訪問者3



叔父さんが来てくれる。

そう思うだけで不思議と悲しみが薄れていくーーーー





次の日、俺は思ったより早く目が覚めた。

眠気もあまりなく、久しぶりにスッキリ起きれた。


リビングに行き、お湯を沸かして紅茶を淹れる。ばあちゃんは紅茶が好きで、色んなフレーバーの茶葉を買っていた。朝と言えばコーヒー、のイメージだけど、日頃の習慣からか朝には気がつけば紅茶の棚を開いていた。



ピーンポーン



「はーい」

返事をして玄関の扉を開くと、叔父さんがいた。


「おはよう。秀一君。良く眠れた?」

「うん。スッキリしてる。・・・と、中で紅茶飲まない?今ちょうど淹れたばかりだから。」

「本当かい?それならお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。」



叔父さんはソファに座り、俺は紅茶をティーカップに注いで叔父さんに渡して向かいに座った。



「・・・ふぅ。本当に秀一君の紅茶は美味しいなぁ。」

「・・・・・・ありがとう」

叔父さんが微笑む。叔父さんは朝から美形だ。この笑顔に慣れる日は来るのだろうか。



「早速だけど、出かける準備出来てる?」

「うん。ほとんど完了してるよ。昨日のうちにある程度やっておいたから。」

「それなら大丈夫だね。今日は僕の家に行った後、奥さんと一緒に昼食食べて、学校の手続きをするから。」

「うん。わかった」

昨日、叔父さんと話して学校は転校することにした。

ばあちゃんとの時間を大切にしていたから、深い付き合いをしてる友達もいない。せいぜい教室で話す程度だ。このばあちゃんとの思い出の詰まった家を守りた

かっただけで、学校に未練はなかった。


時期が半端だが、芸能活動するなら、友達は出来たら、程度でいいと思った。



支度が出来たので、家の戸締りをし、玄関を出る。家の前には叔父さんのと思われる青い車が・・・


「叔父さん・・・これ、もしかしてフェラーリ?」

「わかった?一目惚れしちゃってね。実はもうすでにもう一台車があって、別にいらなかったんだけど、これだけは我慢出来なくて、奥さんに頼み込んで許してもらったんだ。」

「もう一台車あるの?!・・・叔父さんて、もしかしてお金持ち?」

「僕の仕事は・・・とりあえずまずは家に向かおう。向こうで色々教えるよ。」

そう促され、助手席に乗り込む。


車が動き出し、少しずつばあちゃんの家が遠ざかる。思えば、叔父さんと出逢ってまだ2日目だ。なのに

凄く安心していられるのは、俺の、必ず守れるかどうかも分からないはずの約束を守ると言ってくれた時の叔父さんの表情が、凄く真剣だったからだろうか。


車の揺れが心地良く、車内を流れるクラシックにいつの間にか微睡みへと誘われていったーーーーーーーー







「秀一君?」

返事が無く、横目に秀一君を見ると、寝入ってしまったみたいだ。

朝、秀一君はスッキリしたとは言っていたけど、恐らくはおばあさんが亡くなってからあまり寝れていなかったのだろう。秀一君の目の下には薄っすらと隈が出来ている。


「辛いよな・・・」

秀一君は兄さんと義姉さんを早くに亡くして、義姉さんの両親に育てられたと人づてに聞いていた。仕事の関係上、兄さん達が亡くなったときは秀一君をあづかるには少し無理があった。俺はまだ結婚していなかったし、幼い秀一君を一人家に置いておくのは無責任な気がした。

幸いなのは、おばあさんが秀一君をとても大切に思っていてくれたことだろう。擦れていない、素直な子だ。もう少し甘えてくれても、反抗されてもいいぐらいだが•・・・

「ゆっくり家族になればいいよな。」

秀一君はこれから芸能界で活躍していくだろう。厳しい世界だけど、秀一君ならあっという間に登り詰めるに違いない。秀一君にはかけがえのない物を見つけて欲しい。


「秀一君を守ってくれよ。兄さん・・・」

穏やかな彼の寝顔をみつつ、その幸せを願わずにはいらなかった・・・


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