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「ピーンポーン」


・・・なんだ?とうとう引き取り先決まったのか。

でも出来ればこの家をはなれたくない。じいちゃんとばあちゃんの思い出がいっぱい残ってるんだ。


「ピーンポーン、ピーンポーン」


新聞の集金とかだったらいいなぁ。このまま居留守してたら帰ってくれないかな。


「ピーンポーン、ピンポンピンポンピーン『ああ〜〜〜!!』」


はいはい、出ればいいんでしょ、出れば。

「はー。どちらさまっ!!!」


秀一は瞑目した。目の前に驚く程整った顔立ちの男が立っていたのだ。髪は黒く短髪で、派手ではないが程よく遊ばせて整えられ、切れ長の目に高く通った鼻筋に薄い形のいい唇。街で探しても滅多にいない美形だろう。


「葛城秀一君かな?」

「・・・ええ、そうですけど、どちら様ですか?」

「自己紹介が遅れたね。私は酒井浩介。君の叔父だよ。」

「・・・叔父ですか。父の兄弟ですか?」

「察しがいいね。あまり驚いていないようだし。」

「これでも驚いてますよ。」

父さんの旧姓は確か酒井だった。父さん達は母さんの姓をとったので葛城だ。父さんの実家の話は小さい頃一言も聞いたことがなかったから何となく聞きずらかった。だから兄弟がいても不思議じゃない。

「それでその・・・酒井さんは何の用で俺の所へ?」

「その前に・・・この度は残念だったね。おばあさん。」

胸に痛みが走る。目の前が暗くなりそうなのを必死で堪えた。

「今日は君のこれからについて話をしようと思って来たんだ。長くなりそうだから、上がってもいいかい?」

「そうゆうことなら、どうぞ。」

俺は酒井さんをリビングへ案内した。ばあちゃんの家はなかなか広い。2階建ての一軒家で、寝るときは和室だけど、それ以外に書斎や俺の勉強部屋、客室があり、ばあちゃんの趣味のガーデニングで庭は綺麗な花がたくさん咲く。今は秋で花は咲いていない。

リビングにはピアノが置いてある。ばあちゃんはピアノが上手で、俺もばあちゃんから教わってた。

その横にはじいちゃんと、ばあちゃんの遺影がある。

酒井さんは遺影に手を合わせた。

「座ってて下さい。今お茶入れてきますから。」

「すまないけど、有り難く頂くよ。」



俺は酒井さんと自分の分のティーカップを持ってリビングに戻った。酒井さんは手帳を開いて何やら確認しているようだ。綺麗な人は何してても絵になるんだな、何て思いながらティーカップを差し出した。

「ありがとう。秀一君はお茶の入れ方が上手だね。凄く美味しいよ。」

美形に微笑まれて不覚にもドキマキした。頰が赤らむのがわかる。

「もしかして照れてる?」

酒井さんは悪戯っぽい笑みを浮かべてクスクス笑っている。確信犯かよ。分かって言ってるよこの人。

俺は何だか悔しくなってさっさと話を反らすことにした。

「それで、話って何ですか?」

「フフッ・・、うん。短刀直入に言うよ。僕が君を引き取りたいと思ってるんだ。」

「・・・そうなんですか。でも、俺はまだこの家から離れたくないんです。だから・・・。それに、今日初めてお会いしましたよね?子供一人引き取るのだって大変な事なのに。」

「そうだね。この家のことなら大丈夫。このまま管理して、秀一君が帰って来れるようにするよ。金銭的には全く問題ないし、君はまだ子供だ。大人に守られる権利があるんだ。君はおばあさんが亡くなってから泣いていないだろう?泣いていい。甘えていいんだ。」

視界が歪む。泣いちゃだめだ。なのに、どうして。

「秀一君。僕と家族になろう。」

涙が頰を伝う。拭っても拭っても止まらない。気づけば酒井さんに抱きしめられていた。

「・・・一つだけ・・・約束して。酒井さんは・・・死なないで。俺の前から・・・居なくならないで。」

「ああ、約束するよ。」

「う・・・うぅ・・・」

俺はそれからしばらく酒井さんに泣きついていた。涙が止まったのは昼過ぎだった。



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