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二人の想いの距離 前編

 世界は今日もここにあります。

 多分、これからも、ずっとずっと。

 変わるのは、見る立場だけなのでしょうね。

 だって、私は、かつて生きていたかもしれないんだもの。

 だからきっと、変化してしまう事を、充分に知っているんだと思います。


 とか、哲学的に考えてみたところで、間の抜けた顔だ~なんて、ディスプレイ越しに同僚の鷹穂ちゃんにからかわれちゃうんですけどね……。

「まったく、最近の娘は、生意気で困るなぁ。女の子なら、私みたいに、素直じゃないといけないのに」

 なんて、思ったことを口に出すというちょっとしたお茶目をしてみますけど、さっきよりも沢山のからかいの声があちこちから返ってきてしまいました。

 ぼんやり、と、お約束、という不可解……いえいえ、私には真意が分からない単語がちらほらと聞こえてきますが、きっと空耳でしょう。ええ、そうにきまっています。

 だって、お約束なんていったら、あの古典的な――なにもないところで転んじゃって、ニッコリと腹黒く笑うあのことなのですから。

 ……なんて失敬な! 私にそんな同性に嫌われそうな属性なんて、あるわけがありません。


 つん、と、口を尖らせ、同僚達の自己主張の激しいウィンドウを小さくして、お仕事用の表示を最大まで大きくします。今は業務中ですし、とても崇高な任務が目の前にはあるのです。勤務時間の半分が待機であったとしても……。


 巨大なビルを立体的に表示させますと、再生が始まった人のリストと部屋が立体的に映されます。必死になって輝点を探しますが、私のいる受付へと通じるルートには、まだ、どなたもいらっしゃらないようです。

 ちょっとしょんぼりして、お仕事モードから雑談モードに移ろうかな、なんて考えてしまうのですが、さっきの今ですと、特に鷹穂ちゃん辺りから、訳知り顔のニヤニヤ笑いを向けられてしまうのでしょう。

 それはそれでとても面白くありませんので、私は、取り合えず仕事をしているふりをしながら――少しだけ、さっきの続きを考えてしまいました。

 だからなのでしょうか? ふと、考える時間があるのは、今の私にとって良い事なのかな、それとも、悪い事なのか、なんて、より哲学的な疑問が浮かんでしまいました。

 答えは、出せません。

 多分、私には。

 でも、あるいは、あの人なら――。


 理系っぽさを感じさせないとある人の顔が脳内で再生されかけましたが、目の前の受付のデスクと一体化している量子コンピューターの端末から急に呼び出し音が響いて、私の意識を現実に戻してしまいました。


 惜しかったような、そうでもないような、ちょっとフクザツな気分です。

 まあ、思い浮かべようとしたのは毎日見ている顔なので、取り合えずはよしとします。

 それよりも、今は目の前のお仕事です。

 もう一度、この世界を訪れた方が――。

 短い時間を、大切に出来ますように御送りしなくてはいけません。


 その人を待つ、その人を大切に想う人のもとへ。

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