準備
涼とクララはあの後、リオンがメイド達に用意させた料理を御馳走になっていた。
クララは目の前の料理を勢い良く平らげていく。
「物凄い食欲だな……」
「おいひ~♪」
クララは口いっぱいに食べ物を頬張りながら喋る。
クララは十八歳とは思えないほどに子供っぽさを感じさせる。
「クララ……君って本当に18歳?」
「ほおらけろ?」
「食べるか喋るかどっちかにしてくれ」
クララは食べ物を飲み込んでから言葉を続ける。
「何でそんなこと聞くの?」
「いや、何て言うか……見てる感じ子供っぽいと言うか」
「むぅ~……わたしは子供じゃないよ! もう大人だし!」
クララは頬をぷくぅ~と膨らませ、涼を睨む。
「その姿で言われても……」
クララの身長は136センチなので178センチほどの涼から見ればかなり幼く見える。
そして食べている姿を見ると余計に幼く見える。
「はははは。クララさんは十分大人ですよ」
リオンがフォローを入れる。
「だよね。失礼だよりょーくん」
「はい……すみませんでした」
涼はクララに軽く頭を下げる。
「ドロレスさんの手紙に書いてありましたが、涼さん、あなたの居た世界にはどんな女性が居たのですか?」
リオンが優雅な手つきで食事を口に運びながら質問する。
「そうですねぇ……クララの年齢ならもっと身長が高くて160センチ以上ある人が沢山居ますし、胸ももっと豊満ですね。俺の世界で言うとクララは10歳くらいの容姿ですね」
「なんと……」
リオンは驚愕の表情を浮かべ手を止めて絶句した。
「そんな化け物と一緒にしないでよ」
「俺の居た世界の女の子を化け物呼ばわりか……」
「そんな大きかったら生活し辛いんじゃないの? 胸だって重そうだし」
「それが普通だからな。別に問題はないはずだ。俺は男だから、詳細は分からないけど」
「そんなものなのかなぁ」
クララはそう言うと再び食べ物に手をつける。
「それは一度見てみたいものですね。この世界にはクララさんのような女性が普通ですからね」
「俺としては大歓迎なんだけどな」
「ほほう。涼さんはクララさんのような方が好みだと?」
「いや、体型や容姿が幼ければいい」
「なんられ、おーほおりほらなんろかいっれらけろ、あれっれろういういり?」
「飲み込んでから喋ってくれ……。何言ってんのかまったく聞き取れない」
クララは頬張っていた食べ物をすべて飲み込むと再び口を開いた。
「何か、ごーほーろりとか言ってたけど、あれってどういう意味?」
「ああ、あれか」
「うん」
「俺の居た世界ではクララみたいな女の子に俺みたいな人間が近付いたら危険人物扱いされるからな。体型は幼いけど年齢的に大丈夫な女の子は法律には触れないから合法ロリ。大人が子供に手を出したら犯罪だからな」
言っておくが必ずしも危険人物扱いをされるわけではない。
涼は一度、道端で道を聞かれた小学生の女の子と話をしていただけで警察に声をかけられた経験がある為、こういう答えになったのだ。
因みに涼は黒髪でサラッと真っ直ぐに伸びたショートヘアーで黒いジーンズとワンポイントの長袖Tシャツを着ている。
「ということは、りょーくんは危ない人なんだね」
「違う!」
「違うんだ」
「俺が危ないって言うなら、俺からすれば、ここにいる国王の方が危険だからな!」
涼はビシッとリオンを指差して言う。
「私は危険人物ではありませんよ。至って健全ですよ。私からすれば涼さんのが余程危険に見えますけどね」
「まぁ……」
涼は返す言葉が無く、言葉に詰まる。
少し間を置いて再び口を開く。
「俺の居た世界では体型が幼い女の子を好きな人のことをロリータ・コンプレックスっていうんだ。」
「りょーくんもろりーた・こんぷれっくすなの?」
「否定はしない。というより出来ない。幼女好きだから!」
涼はクララの問いかけに即答する。
「私はドロレスさん一筋ですからね。私はそのロリータ・コンプレックスかもしれませんね」
「だね。ロリちゃんってロリとかロリータって呼ばれると怒るけどね。親しみを込めて呼んでるんだけど、何か自分には似合わないとかで嫌みたい」
「どゆこと?」
涼は話の内容が解らず首を傾げる。
「ドロレスさんは愛称でロリやロリータと呼ぶんですよ。なので聞いた限りですと私が当てはまるかと。まあ、この世界には涼さんが言うような小さい女の子しかしませんからね。それが適用されはしないでしょうけど」
「成る程。でも確かにこれを適用したら、この世界の人達全員がロリコンになるし無理だな」
「さて、話はこれぐらいにして食事をしましょうか」
「そうですね」
「はぁーい」
涼達3人は食事を再開した。
***
食事を終えた後、少しして、涼の住む場所の手配が出来たと連絡が入ったので、涼達はリオンに連れられて、その場所に向かった。
涼達3人は城を出て、最初に通ってきた道を戻り、再び噴水がある場所までやってきた。
そして北に伸びる道を歩いて行く。
北は商店街らしく、左右にお店が建ち並んでいる。
食後も随分と長く話し込んでしまった為、陽が傾きかけていた。
「ここです」
リオンに案内されたのは長方形の形をした2階建ての建物だった。
「この建物が涼さんの家です」
「ほぇ~。一軒丸々とは太っ腹だねリオンさん」
クララがキラキラした瞳で建物を見つめていた。
「いいんですかリオンさん」
「構いませんよ。住人が増えるのは喜ばしいことですからね。それにお二人は仲が睦まじいようですし、争奪戦で涼さんが勝ったの後のことも考慮しての手配です」
「あっ、りょーくんとわたしが結婚するの前提で手配してたんだ」
「えっ? マジで? 俺とクララが結婚すんの?」
「争奪戦でわたしをお持ち帰りできたらね~。嫌なの?」
「嫌な訳ないじゃん! 寧ろ大歓迎だよ!」
「そ、そう」
クララは隣で燃え上がる涼の気迫に圧倒され、少したじろぐ。
家の中は結構広く、3LDKだった。
家具なども揃っている。
キッチンは全体的に少し低めに作ってある。
涼が料理するには結構低い。
「これは女性に合わせて作ってありますからね」
「成る程」
「わたしが料理するのかぁ~」
クララは子供のようにキッチン立ってはしゃいでいる。
見た目が小学生のクララがはしゃいでいると子供にしか見えない。
「わたしをお持ち帰りしようとしてる人は多いみたいだから、りょーくんも頑張ってね」
「了解した!」
涼は内心、この世界の女の子は全員可愛いから捨てがたいと思ったが、この世界に来てからクララと共に行動している為、愛着が湧いているようだった。
見た目通り、子供のようにはしゃぐクララを見ていて余計に惹かれたのかもしれない。
クララの姿を尚も微笑ましく見ていた。
「さて、住む家も決まりましたし涼さんにも争奪戦に参加していただきます。初めてですから、私がルールなどをお教えしましょう。10日後に行われる予定ですから、そちらに参加していただきます」
争奪戦:ルール
勝利条件
女の子を捕まえられればOK。
手段は問わない。
敗北条件
男性の戦闘不能
「こんな感じでしょうか」
「簡単なルールだけど、戦闘不能って……。そんなに激しいんですか?」
「毎回、別の意味で死傷者が出ますね」
「それ駄目でしょ……」
「いえいえ、別の意味で、なので大丈夫ですよ」
「は、はぁ……」
リオンは笑顔でそう言うが争奪戦を知らない涼からすれば死傷者が出るのは恐ろしい他ない。
キッチンではしゃいでいたクララが話に入ってくる。
「そだね。別の意味で出るもんね」
「大丈夫かなぁ……」
「大丈夫大丈夫。特に問題ないよ」
リオンとクララは口を揃えて大丈夫というが、涼には不安でしかなかった。
***
家を案内してもらった後、涼達はリオンの城に戻っていた。
というのも、10日後に控えた争奪戦の準備の為である。
クララはローリータナベスタに戻ることなく、戻るのも時間がかかるから、もう少し一緒に居ると言ってついて来ていた。
王室の隣にある部屋で3人は争奪戦について話し合っていた。
「具体的にはどんな感じなんですか?」
「ローリータナベスタとコーレンスの間には草原や荒野がありますからね。そこで争奪戦を行います」
「ふむふむ」
「やり方は自由です。女性を抱えたりして持って帰ってください。武器を使うのもありです。ただし殺傷力の無い物が決まりです」
「死傷者が出るというのは?」
「それは、参加すればわかりますよ。争奪戦への参加は私に申請書を提出して下されば結構です。申請書と言っても参加するかしないかに丸を付けるだけですけどね。涼さんは参加ということで処理しておきます」
「助かります」
2人の会話を聞いていたクララは暇そうに足をブラブラさせていた。
「クララさん、暇なのでしたら何かお食べになりますか?」
「え! 何かくれるの?」
先程、物凄い勢いでご飯を平らげたにも関わらず、クララの食欲は収まるところを知らないようだ。
暫くして料理が運ばれて来るとクララは満面の笑みを浮かべ、料理に手をつける。
「むふふ~。おいひ~」
「す、すげぇ……」
涼は眼前で繰り広げられる光景に半ば言葉が出なかった。
ご飯を平らげていくクララはさながら、重力により無限に物を吸い込み続けるブラックホールのようだった。
あの小さな身体のどこに入るんだろうと疑問に思う。
「さて、大まかな手続きも終わりましたし、後は争奪戦当日までゆっくりと休んで下さい」
「わかりました」
「おいひ~♪」
涼は争奪戦に向けて英気を養うことにした。
相変わらず表現力が乏しくて泣けます……
暖かい目で見ていただければ幸いです。