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幻想桜

春だから桜という、安直な作品です。

陽光に照らされる

桜の海を見ながら

丘の上の桜の巨木に

背をもたれ


朱盆の杯に

なみなみと注がれた

澄んだ冷酒を

一人静かに呑み干す


理から外れた速度で

散ったそばから

咲いてゆくは

ただ幻想にのみ

存在することを許された

桜の木々の群々


澄み渡る空には

散り舞う桜の花びらが

軽やかに踊っている


呑み干した酒が

熱を帯びて

己が存在を感じさせる


朱盆に落ちる花びらは

どこか粋を思わせて

私は気にせず

冷酒とともに呑み込んだ


ふと目を閉じて

睡魔の波に

身を任せる


酒が感覚を狂わせたのか

しかし、この酒も

幻想に過ぎない


目を開ける

陽光は過ぎ去り

夜の冷たさが

桜の木々の群々を越えて

幻想の世界を満ちていく


自らに思い巡らすと

酔いがすっかり醒めていた

されど、これもまた幻想


空を見上げると

白銀に輝く月が

澄み切った夜空にのみ

姿を見せる

空中庭園を伴い

静かに佇んでいた


空中庭園のその一角

深緑に覆われながらも

目立つ拓けた場所に

一人の美女が微笑んでいた


月光に照らされる羽衣と

輝ける碧き中華風のドレスに

身を包んだ

白銀の長い髪をした

天女にふさわしい美女が

私に向かって

ただ微笑んでいる


私は天女に見取れていると

天女が口を動かした


天女に倣うかのように

私の口が独りでに動く


それは、「そ ろ そ ろ 目 を 覚 ま し て」だった


そろそろ目を覚まして?

私は天女の言葉を

く思い巡らしていると

一つの結論に至った


それは、直接的な意味だったのだ


この桜の幻想から

目を覚ますこと


私は意識して目を閉じ

数秒経ってから、開いた


すると、目の前には

満開の艶やかな紅桜が

月夜の中で

ただ、一本佇んでいる


先ほどまでの、桜の海は

この紅桜が、私に視せていたのだ


紅い桜の花びらで

私の心を鷲掴んで

その美しさで

見る者すべてを

魅了させていた


私もその一人


突如、突風が吹いて

紅桜が花びらを

大量に散らした


月光に照らされながら

散り舞う様を見た私は

再び、紅桜の美しさに

捕らわれてしまった


なんと美しいことか!


夜空の中に咲き誇る桜も

月光に照らされる桜も

風で花びらが飛ばされる桜も


なんと美しいことか!


幻想から解き放たれても

新たな幻想に

心を奪われたらしい


そういえば、近くにコンビニがあったな


酒とつまみを買い込んで

夜桜花見にでも洒落込むか


私はそう計画すると、

心に桜の美しさを

思い描きながら

コンビニへと歩み始めた――


《終》



最初に幻視したのとは、別になりました。


一応、天女が最初のイメージの名残になります。

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