道化(わたし)と狂気(ワタシ)
過去作品第八弾目です。
流れは記憶から引っ張り出したものなので、原文とは違うのはどうでもいい話ですね
1
狂気は
心傷負者にして
半身たる道化を
抱きしめる
心傷与者たちに
与えられた傷を
癒すために
これからも(現在も)
これまでも(未来も)
心傷与者から受けた傷が
癒せるようにと
解放されるようにと
願いながら
2
心傷与者は
自己の快楽のために
道化を傷つける
幾度となく半身を傷つける
心傷与者たちを
狂気は許せないのに
道化は心傷与者たちを
泣き笑うような顔をして
許してしまう
道化のほうが辛いのに
狂気はただ
道化を抱きしめることしか
できないことが
ただ悔しい
3
ある時、心傷与者たちは
狂気の半身である
道化を砕いてしまった
半身を喪った狂気は
道化を砕いた心傷与者たちを
完全に許せなくなっていた
喪った道化の代わりに
狂気は半身として
憎悪を宿した
そして狂気は
心傷与者たちへの
報復の意を決した
4
「助けてくれぇー!!」
狂気は心傷与者たちを追いかける
報復のために用意した
鈍色に光る
大鎌を構えながら
心傷与者たちは
叫び声をあげながら
憎悪を宿した狂気から
逃げ出そうと
足掻くように駆け出す
そんなこと
狂気は許さないのに
無駄な足掻きになることを
心傷与者たちは
知ろうとしない
「どうして、私たちを追いかけるんだ!?
私たちが何をしたというんだ!?」
心傷与者たちは
ただ喚く
自分たちの冒した罪を
否定するように
「貴方たちが狂気の半身を
砕いたから
狂気は貴方たちを
決して許さない
ゆえに狂気は
憎悪をもって
罪人である貴方たちに
報復する
ただそれだけのことよ!!」
我ながら愚かしい慈悲に
哀れな心傷与者たちに
冥土の土産のように
狂気の報復を
一息に叫ぶように伝える
「私たちはそんなこと知らない!!
お前が勝手にやっているだけだろう!!」
心傷与者たちは
自分たちの罪を
さらに否定する
「貴方たちに何言っても
無駄だということね
なら、地獄で自分たちの罪を
それに相応しい罰を受けるといいわ」
狂気は
大鎌を振り上げると
心傷与者たちの
生命の灯火を
かき消した
5
心傷与者たちへの
報復を終えた狂気に
心傷与者たちが砕いた
道化の代わりに
宿っていた憎悪は
心傷与者たちへの報復を
終えたことによって
消え去っていった
残ったのは
最初からの半身である
狂気独りだけ
そして狂気は
心傷与者たちの
生命の灯火を
かき消した大鎌を
自らの生命の灯火に当てた
心傷与者たちがいる
地獄へと向かうために
さようなら
狂気の半身であった道化
道化は楽園で
心傷与者たちのいない
平和な日々を過ごして
代わりに狂気は
地獄で心傷与者たちの
相手をしているから
道化に永久の
平安がありますように――
《終》
過去作品は次で終わります。