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短編集一作目です。

「ここは……どこだ」


彼は気がつくと

覚えのない見知らぬ

深い森の中に

佇んでいた


それも

寝る前に着ていた

パジャマと

裸足のままでだ


〈……フフフ……〉


緑葉が覆うような

木々の天辺から

無邪気に笑う

少女の声が

彼の辺りに響いた


「……誰かいるのか?

いたら姿を見せてくれ」


自分以外の声

誰かがいるという安心感

彼の問いに答える

少女の声


〈……あたしは声だけの存在

ゆえに姿は見せれない

ここはあたしの作った

一つの箱庭

あなたを誘い招いたのは

あたしの疑問に

答えてもらうため〉


姿の見れない理由

彼が今いる場所

招かれた思惑


「……理由は分かった

で、疑問とはなんだ?

この場合、問題を答える解答なのか?

それとも

アンケート的な感じの

私の回答になるのか?」


彼は再び問う

少女の意図を探るための

新たな問い


〈……疑問はあたしがあなたに抱いたもの

あなたのことを

知るためのものだから

解答でも回答でも

どちらでも構わないわ〉


少女の答えは

彼の答え方を

やりやすくするためのもの


「なら、早く始めてくれ」


〈そうね、始めましょうか

あなたの作風は

どういうものなのかしら?〉


少女の問い

それは彼が

物語を紡ぐ者であることを

知っているから

問えることだ


「……私の作風か

私の作風は詩の形式で

物語を紡ぐことだ」


〈……今と昔で違うところは?〉


「……昔は長文の文章が書けたが

今は長文が書けない

だからこそ

詩の形式で

物語を紡ぐだけだ」


〈そう、長文が書けないから

詩を使って紡ぐのね〉


「そうだ。万物の基本である

流転に沿い

かつて有った力に

縋るのではなく

今有る力を探り

見つけ出し

物語を紡ぐ糧にする

それだけのことだ」


彼は言った

強い決意を込めて

声だけの少女に言った


<それがあなたという

作家の在り方を

思い描いたものなのね


あたしがあなたに

問うべき疑問は

もう無いわ>


「疑問が無いということは

私はここから

出られるということか?」


<ええ、そうよ

あなたはただ

瞳を閉じて眠るだけ

それだけであなたは

この箱庭から出られるわ

朝の光と供にね>


疑問の終わり

箱庭から出る手段

それを聞いた彼は


「そうか、教えてくれて

ありがとう

また会えるか分からないから

ここで言っておく

お元気で」


お礼と別れの

言葉を言って

目を閉じた――


チュンチュン

鳥の鳴き声が

朝日が差し込む中

心地良く響く


「……あぁ、朝か

それにしても

不思議な夢だったな

まさか夢の中で

インタビューみたいなことを

やらされるとは

まぁいい

早く着替えるようか」


目覚めた彼は

ベットから起き上がると

パジャマ姿から

仕事用の作業着に

着替え始めた――


《終》

作中の彼のモデルは私自身です。

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