4.出会い
初めての出会いはいつだったか。巴は忘れたふりをしているものの、実は鮮明に覚えていた。
あれは確か星明かりもないほどに暗かった日。指先が凍るほどの寒い冬のことだった。
巴は師匠に言われて外に出た。客人を招き入れろと、その言葉に首を傾げて。一体誰だろうかと思いつつ、客人と言っていたのだから客なのだろうとどこか自分でそう納得させた。もちろん、納得はしていない。
「……どなた、ですか。」
巴は思わず止まりそうになった心臓を急いで動かした。それは意識したものではないが、心臓は激しく動いていた。
そこにいたのは一人の少年だった。少年といっても、自分よりは年上だろう。彼は、何も持たず薄着のままそこに立っていた。虚ろになった目をあげて、巴と目を合わせる。そしてそのまま、体を倒した。
「わっ?!」
「――。」
そのまま巴の体にのしかかる体は、酷く冷たかった。生きているのかを疑うほど冷えたその体に、巴は顔色を変えて自分よりも大きな体を抱え込み走る。
「お師匠様!」
結果から言うと、その少年は自分と同じ存在だった。
逃げてきたのか、行く宛がなく彷徨ってきたのかは分からない。ただ、師匠が弟子と認めるのなら自分に異議を唱える権利などない。巴は、他人に思えないその少年に向かって声をかける。少年の目は、やはり虚ろだった。
「……名前は?」
少年が小さく顔を上げた。その顔はやはり色が悪い。巴は少年が黙ったままなので、仕様がないとばかりに自分の名前を名乗った。
すると、今まで黙っていた少年が少しだけ目を見開いて巴を見た。そしてそのまま、漸く開けた口から小さく一つ、言葉が漏れた。
「俺は、義仲。」
その時漸く瞳に宿った光が綺麗だと感じたことを、巴は口に出さずとも覚えていた。
何を捨ててきたのかなんてしらない。何を知っているのかなんてどうでもいい。ただ二人は似た者同士だった。二人は似た者同士故、すぐに打ち解けすぐに反りを合わせなかった。中身が似ているからこそ、外側が違うことで反発した。それはまるで、磁石のように。
「お前は理屈が多い。」
「お前は屁理屈ばかりだがな!」
そう言い合っては共に鍛錬に励む二人を、一人の男が見ていた。細められた目を開かずそちらの方だけを見ている。
見上げた空にはまだ太陽が登っていたが、その光は三人には眩しすぎた。既に闇になれ夜目の効く者にとってこの光は眩しかろう。
しかしその光は優しかった。誰かを癒すようにそのまま惜しげもなく注がれる。見返りを求めないその光は、闇の者にも平等に光を与えた。
男は思う。この二人がいつか闇を払う存在になることを。闇と共に共存しながらも光の中の暖かさを忘れないことを。
いつか来るであろう悲惨な未来を振り払い、男は声を張り上げて二人を黙らせる。その瞬間小さくなる姿に、男は思わず昔の姿を重ねたのだった。




