10.選択
時は戦場にて名を上げる武士の時代。
馬に跨がって戦う武士に紛れ、闇を駆けし者たちがいた。
その名を、忍という。
闇にまぎれたその体、決して日の元に戻ることなし。
されどその血にまみれし姿、美しきには遠かれど、醜きには近からず。
〝忍ばねばならぬとは百も承知
ならば耐え抜いて見せましょう。己の心すら〟
生きねばならぬ、守らねばならぬこの時代。
己の心すら忍んで耐え抜くその生き様、まこと見事なり。
戦場に、城に、町に、そして闇に。
戦い、仕え、忍び、そして奪う。
そのどれもが一致しており、全ては異なる。
己に託されし使命、その名の通り命を使って。
黒き衣纏いしその姿、その内に秘める心は決して悟られてはならぬ、と。
その中に、歴史に語られぬ女忍あり。
されどその者女なれど、くノ一にあらず。
男に紛れた忍び装束、それは己を隠すお面なり。
流れる美しき黒髪、装束から見え隠れするしとやかな肌。
そのどれもが女としての道を楽にしたであろう。
しかし彼女は選ばない。
女としてではなく、一人の忍として生きることこそ覚悟なり。
その者、名を捨て自らをこう名乗る。
巴、と。
前の時代を駆けし女武将と同じその名前。
覚悟はその名前に恥じることなく。
瞳に宿るは覚悟の証。
背に背負いし己の罪と、
その手に抱くは後悔の念。
しかし彼女は止まらない。
武家の家柄でありながら、自ら選んだその道を。
後悔する日が来たのか、否か。
――知るは彼女の忍びた心の中に、のみ。




