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謎の階

「じゃあ私が武器庫に案内するわ」


 そう言い出したノエル姫に彼女の父親は真っ青になって、


「……ノエル、ノエルは私の大切な娘なのだ。悪さをしないでくれ、頼むから」

「別に武器庫の案内するだけなのに、何故お父様はそんなに不安そうなのですか?」

「……今まで何回入り込んで、あそこから武器を持っていった」

「……そのような事もありましたが、過去です。今日はただご案内するだけです」

「……そうすれば、堂々と武器が見る事ができるからな。……はあ。駄目だと言って、こっそり忍び込まれて武器を持っていかれるよりは今行かせてしまった方がましか」


 そう嘆息する王様に、ノエル姫は嬉しそうだった。そして、


「じゃあ私が案内するわね! 何処にどんな武器や防具があるのかは私は全部把握しているから、頼りにしてね!」

「……はい、ありがとうございます」


 そう秀人は答えながら、このお姫様、活発だなー、と思っていたのだった。






 城の一角にある、白くて青い屋根の建物が、武器庫らしい。

 しかも地下10階まであるとか。

 その代わり見た目はごく普通の二階建ての、ちょっと大きめな体育館といった風情である。

 やっぱり地下深くの方が、外に出すのは危険な武器……みたいなものがあるのではないかと秀人は思っていると、


「地下三階までしか使っていないの。それで、どんな武器が良い? やっぱり剣とか?」

「そうだな……槍がいいな」

「槍? 槍が良いの?」

「だって敵にあまり近づかなくても良いじゃないか。離れた場所で相手を倒せるなら、その分僅かな時間でも判断するのに回せるだろう?」

「なるほど。でも嵩張るわよ?」

「背に腹は変えられないさ。安全第一主義なんだ」


 そう答えるも、ノエル姫はやっぱり剣の方がいいと思うんだけれどな、とか、秀人にお似合いの剣がとか、どうせ勇者なんだし、やっぱり剣じゃないととか、色々言っていたがやっぱりやりだよなと秀人はマイペースに選んでいた。

 ちなみにそんな秀人にノエル姫が途中頬を膨らませて怒っていた。

 美人はどんな顔をしても可愛いな、と、ほのぼのしながら秀人は歩いていて、そこで一向に田中正樹が話に入ってこない事に気づいた。

 くるりと後ろを見ると、少しは慣れて歩いているその姿を見つける。


「おーい、正樹、俺、槍にしようと思うんだが」

「あ、うん。僕はそれでいいと思います。槍は地下じゃないし」

「……地下?」

「あ、いや、地下には剣が一杯あって……そうだ、槍を使って回り込まれた時用に、短剣を用意しませんか」

「そうだな。それもいいな」

「でしょう! 短剣はこの階にありましたし、じゃあ……」


 そんな何処かほっとした正樹に、秀人はにっこり笑ってノエル姫を見ると、彼女も微笑んでいた。

 秀人の意図が分ったらしい。けれど一応秀人は声を出して、


「ノエル姫、ちょっと地下に見に行って見ようか」

「そうですね。私もそういう気分だし」

「やめてぇぇぇぇ」


 そんな叫ぶ正樹を尻目に、秀人達は地下へと向かったのだった。






「そういえば最近、地下からうめき声や話し声が聞こえるとか言うお化けの噂があったわね」

「……それと正樹がどう関係しているんだろうな」


 服を引っ張られながら、正樹は地下は駄目ー、とか叫んでいるが、やがて地下八階に差し掛かった所で声が聞こえた。


「だーかーら、ここをこうしないと。で、こうしてー」

「しかしこうしたほうがこうでこう……」

「いやだが……おや、正樹さんに、皆さん……って、ノエル姫! 早く迷彩モードに……」


 三人の男が焦ったようにじたばたしていた。けれどそこで、パタンと動きを止めて、


「今更隠しても仕方がないな。我々三人は、異世界貿易会社ゴランノスポンサーの社員でして、ここでちょっと強めの剣とかを作っていたのです」

「何故こんな所に」

「君は誰かね? ……もしや君が秀人君か?」

「ご存知なのですか?」

「さっき連絡が来たからね。ようやくまともな異世界人召喚ができたって」

「ですが、まったく関係のなさそうな俺にやらせなくてもいいのでは?」

「いや、今までで一番の成功例なんだ。君みたいにこちらで使える魔力は我々はそんなに多く無くてね……」

「百歩譲ったとして、俺は魔法の使い方も分らないんですよ?」


 そこでしばし三人が顔を見合わせて、ぽんと手を打った。


「じゃああの試作品が使えるんじゃないのか? 自動魔法装置“ネコネコ12.5号”」

「魔力を加えるだけで、発動するからな。便利だぞー。あと、試作品の剣、短剣と槍も持っていけ」

「これ、キーホルダーになっていて、普段は飾りだから邪魔にならない。ズボンのあたりにでもつけておけ」


 そう言って、変なキーホルダーを渡された。

 秀人はそれを見ながらどうしようかと思うが、三人は人の良い笑みを浮かべながら、


「「「自信作だからな。頑張れよー」」」


 見かけは普通っぽい魔法のかかった剣やら槍やらのレプリカにしか見えない武器を見ながら秀人は悩む。


「いいのか? これ」


 その問いかけに嘆息しながら正樹が答える。


「彼らが良いといっているからいいでしょう。それとばれてしまいましたが、そこで目を輝かせているノエル姫。丁度良い廃墟が無かったのでこっそりここをお借りしていました」 

「それはかまわないわ。だから私にも何か頂戴!」


 そんな事どうでもいいから何かくれと言い出すノエル姫。けれど、


「んー、お姫様に簡単に使える武器は何かあったか?」

「銃とかどうだ? 離れた場所でも、力が無くてもバンバン撃てるし。引き金引くだけで簡単だし」

「だが玉が百発しかないぞ?」

「それで良いです! それ下さい!」


 一生懸命なノエル姫。

 それにしょうがないなといったように、彼らはノエル姫に銃を渡す。

 やけに嬉しそうなノエル姫を見て、秀人がふと不安にかられて、


「あの銃はどういったものなのですか?」

「あれは、適当に引き金を引けば、ランダムに炎の塊やら雷やらの魔法が飛び出すんだ」

「ランダム、ですか?」

「試作品で、こんど、ランダムに使ったらどうかというのを試そうとしている最中だったんだ。もっとも調べた結果暴発やらなにやらは起こらなかったから大丈夫だろう」

「……そうなのですか」

「引き金を引けば勝手に発射される、いわば水鉄砲のようなものだから、女の子でも簡単に使えるし、後ろの方から援護が出来るだろう」

「あの、ノエル姫は、俺と一緒に旅を出るのですか?」


 そんなささやかな秀人の疑問に、全員が沈黙した。

 そして、逃げ出そうとしているノエル姫に目を向ける。


「危険だからやめたほうが……」

「私が貰ったんだもん。渡さないわああああ」


 そう、俊敏な速さで階段を上っていってしまった。

 それを見上げながら、そこにいた彼らがにこやかに秀人の肩を叩く。


「あのお姫様の事だから、絶対についてくるから頑張れ」


 そう言われた秀人は、武器の管理ってこれで良いのかなと思いはしたが、それはあくまで秀人のいた世界の一地域の倫理観なのだと思って、秀人は考えるのをやめたのだった。


 そして、貰った武器が予想以上に凄い事に秀人が気づくのは、もう少し後だった。


次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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