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これは、某大賞に応募した、本作の修正版です-6

 次の日の朝。

「秀人、あーんして」

「あーん、ぱくん」

「どう? 美味しい?」

「あ、うん。ノエル姫も食べるか?」

「うん。あーん」

 朝食の時間、秀人はリゾットのようなものを、ノエル姫に食べさせられていた。

 なので、秀人もノエル姫に食事を食べさせる。

「美味しいか?」

「うん、秀人に食べさせてもらうと美味しい」

「俺も、その……ノエル姫に食べさせてもらうと、もっと美味しい気がするな」

 言ってしまって、秀人は自分が何だか凄い事を言ってしまった気がした。

 そんな顔を赤くする秀人に、ノエル姫が面白そうに笑って、

「秀人顔が赤いよ? どうしたの?」

「う、うう……勘弁してください」

「どうしてなのかなー、ふふふ」

「……楽しそうですね、ノエル姫」

「楽しいよ。だって秀人とご飯食べているし」

「いえ、あの……おい、正樹、何て顔で俺を見ているんだよ」

 そこで、秀人が、くわっと目を見開いて秀人を見ていた。そんな正樹がそのままの表情で、

「リア充め。僕なんてそんなイベント、ゲームでしかした事がないというのに」

「いや、そんな事を俺に言われても……」

「秀人! はい、あーん」

 そういって、またノエル姫に食べさせてもらう秀人。そこで今度はメアが、

「姫様。そんな異世界人に熱を上げられては……」

「いいの。秀人がここにいる時間の少しを、私が貰ったんだもの。……終わりが来るって分っている分、精一杯いちゃいちゃしたって良いじゃない」

「姫様……分りました! このメアも、全力で応援させて頂きますわ!」

 メアが応援側に回った。

 正樹はそれを、相変わらずの表情でじーと見ていたのだが、普通に無視されて秀人達がいちゃいちゃしだしたので、この表情をしているのも面倒になり食事を再会し始めたのだった。


 乗合馬車に乗って移動中。

「多分、今回、8つくらいかな」

 と正樹が言った。多すぎるだろうと思って、秀人が突っ込みをする前に呼び寄せ装置を使っていないのに遭遇する。

 仕方がないので秀人は剣を持って、“賎しき者共”に躍り出る。

 一度目はそれほどの数ではないがそこそこ量もいたので、その集団に飛び込んでいくと、

「私も援護するわ!」

 そう嬉々として叫ぶノエル姫が、貰ったばかりの弓を引く。

 その弓矢は、狙いを定めるかのように“賎しき者共”に当り、その半径1メートル程度の“賎しき者共”を炎や電撃で焼き尽くす。

 ただ、氷で相手を凍らせる魔法は、確かに“賎しき者共”倒されるのだが、物によっては氷が解けると同時に再び襲ってくるため、秀人が直接壊す必要があった。

 その取りこぼしや、一番初めに凍らせたけれど、その氷が解けて襲ってきた“賎しき者共”は、メアが短剣で真っ二つに切り裂いて倒していた。

 怖いメイドさんだったんだと、メアの事を秀人と正樹は思ったのだが、ノエル姫はそれがいたく気に入ったようで、

「メアって強いんだね! これからもよろしく!」

「はい、姫様と、あの、ちょっと詰めの甘い奴らのサポートをさせて頂きます!」

 とか、メアがちょっと格好良い仕草で言っていた。

 それは良いとして、五番目の遭遇だが……秀人は目の前に広がる敵を見て、 

「おい、正樹。蛇みたいのが百匹以上いるぞ? そんな大きな巣なのか?」

「うん、結構大きいね。なるほど、これくらいか……」

「いい加減魔法を使うぞ。少し量を減らしてから、個々に対応しないとやっていられない」

 その返事を聞く頃には、秀人は魔法を使うための箱に手を触れる。

 幾つもの選択肢から、以前見つけておいた炎の魔法を選択して攻撃する。

 秀人のかざした手の少し前方で大きな魔法陣が展開され、そこから炎が噴出す。

 その炎の影響で様子が秀人達からは見えない。

 けれどこれで倒されたかどうかは分らないので、自分の手元から放出される魔法ではなく、少し離れた場所から攻撃できる魔法を秀人は探し、それは雷撃の魔法だった。

 加えて、ノエル姫に、

「ノエル姫、今の魔法でどの程度減らせるか分らないから、弓で援護して欲しい。それに、その弓の機能で、もしもある一定の方向に進むようであれば……」

「そこに、“賎しき者共”がいるって事ね! 分ったわ!」

 そう答えて、すぐさまノエル姫は弓矢を何本も連続して引く。

 その弓矢は空高くに飛び上がり、すぐに何かに狙いを定めたかのように、地面へと落ちてくる。

 同時に“賎しき者共”の悲鳴がそこかしこで聞こえる。

 その声が予想よりも近くて、すぐに秀人は雷撃の魔法を発動させる。

 五つの魔法陣が秀人から10メートル程度離れた宙に浮かび上がり、そこから雷が降り注ぐ。

 けれどその手前あたりで、弓の矢は下に落ちてきている。

 その炎の攻撃と、雷撃の魔法の間で取りこぼした“賎しき者共”いると判断した秀人は、この魔法が切れると同時に再度発動させようとする。

 すぐにその時はやってきた。

 ふっと消えた炎の先には、先ほどよりも大量の“賎しき者共”が群れている。

 そして彼らはこちらへと近づいているのだ。

 これでは倒す速度より“賎しき者共”がこちらに来る方が早い。

 なので秀人は炎での攻撃を取りやめて、一気に彼らの傍に躍り出る。

 同時に、氷の魔法を連続で発動させる。

 “賎しき者共”を倒すと同時に、一番近い“賎しき者共”の動きを封じる狙いだった。

 案の定、戦闘がつまり動けなくなる“賎しき者共”は、その先頭の“賎しき者共”を飛び越えようとしたり横から回り込もうとするも、動きは格段に遅くなる。

 取りこぼしはメアたちに頼むとして、秀人は自身の剣を取り出した。

 “賎しき者共”を、剣で殴り込みをかけながらすぐさま氷の呪文を唱える。

 そこでノエル姫の弓矢が、凍らせた“賎しき者共”に当る。

 どうやら凍らせてしまった場合、それも敵と認識してしまうようだった。

「ノエル姫、今は弓矢を止めてくれ」

「分った!」

 凍らせた“賎しき者共”の隙間から道が出来て、新しい“賎しき者共”が這い出てこようとしていたので、秀人は即座に、そこに氷の魔法をかけて塞ぐ。

 そんな今しがた凍らせていた“賎しき者共”の上を踏み潰しながら駆けて、秀人は取りこぼして襲ってくる“賎しき者共”を薙ぎ払いながら、凍らせていく。

 それを繰り返していくうちに、ほぼ全ての“賎しき者共”を凍らせるか打ち払う事ができた。

 そして、今度は凍らせて動けなくなっている“賎しき者共”を、地道に剣で止めをさしていく。

 一通り細切れにしてから、もしもの事を考えて秀人は炎の魔法でそこら中の“賎しき者共”を灰にしておく。

 それで、ようやく終わると、再び拍手喝采で秀人は迎えられた。

 それに秀人は、照れながらお礼をいい、それから、

「ノエル姫も、メアさんもありがとうございました」

「ふふ、これからもよろしくね」

 そして、そうお礼を言われるとは思わなかったメアは、

「……大した事はしていないわ」

 ちょっと驚いた顔をして秀人を見てから、ぷいっとそっぽを向いた。

 これは、デレのないツンデレかと秀人が思っているとノエル姫が抱きついてくる。

「秀人、格好良かったよ!」

「ノエル姫の援護も助かりました」

「本当! 嬉しいわ! でも、弓矢が半分くらいになっちゃった。補給しないと。タナカマサキ、これ、補給できそうな場所有る?」

 そう問いかけると田中正樹は“賎しき者共”探知レーダーから顔を上げて、

「多分、ノエル姫のお母様と会う町まで行かないとないよ」

「そっか……今回は、量が多いから仕方がないね」

「そうだね。でも、今までのデータで……今みたいな“賎しき者共”の巣に、数地点の反応の大きさと量を観測した所、レーダーの距離に対しての、“賎しき者共”の個体数の数値が暫定的だけれど出せそうなんだ」

 そう、嬉しそうに正樹が顔を上げた。それに秀人が、

「“賎しき者共”の個々の魔力って似たようなものなのか?」

「大体はね。たまにめっちゃ強いのもいるけれど、それはたまにだから。そうすればいいかも。あと、今ので傍にあった八つの“賎しき者共”が消えたから、そこも修正すれば、もう少しふるいわけができるかも」

「そうか。良かったな」

「うんうん、ただこのレーダーを修正して向上させるには、やっぱり開発部まで行かないと無理だからもう少し先かな」

 そんな事を話し、秀人達一向は再び馬車に乗り込んだのだった。


 さてさて、そんなわけで次の町へとやってくると、夕暮れ時になっていた。

「これじゃあ、秀人と遊びに行けないわね」

「え?」

「なによ。空いた時間はデートしてくれても良いじゃない」

「あ、はい。そうですね、はい……」

 それに、秀人は焦って答えた。

 先ほど戦闘していたりしたので、意識を少し他の方に移していたのだが……そうなのだ。

 秀人はこのノエル姫と恋人になったのだ。

 そう思った途端、昨日の夜、悶々としていたのと同じ感情が浮かび上がり、秀人は顔を赤くした。

 いつも同じ風なデートばかりだと飽きられてしまうかもしれないし、けれどこの世界のデートってどんなものか秀人には分らない。

 元の世界であれば、映画館とか、遊園地とか色々思いつくのだが、この世界の娯楽ってなんだろうとしばし考える。

 やっぱり公園デートと喫茶店で話をするのが、妥当だろうか。

 でも、あまり同じパターンだと飽きてしまうだろうし、もっと違うコースを考えたり、やっぱり女性をエスコートすべきなんだろうか……と、秀人は真面目に延々と考えた。と、

「秀人ってばぁ!」

 気がつけば、すぐ傍でノエル姫が秀人の顔を覗き込んでいた。

 あ、可愛い。

 そのノエル姫の顔を見て、秀人はそう思ってしまった。

 先ほどから秀人が答えないので、少し頬を膨らませているのも可愛い。

 ではなくて……答えないとまずいと秀人は思って、

「えっと、はい。すみません」

「……どうしたの? やっぱり秀人は私とじゃ迷惑?」

「いえ、あの、その……」

「……もしも無理に合わせているんだったら私……」

「いえ、その……ノエル姫が可愛いなと思って見とれていたというか、すみません! 俺、恋人とかの経験は初めてで……ノエル姫?」

 そこでノエル姫の様子が何処かおかしい事に秀人は気づく。

 ノエル姫は顔を赤くして、口が少し半開きでとても驚いているようだった。

 そして、そのまま秀人にノエル姫は抱きついてきた。

「秀人、可愛い! もうなんでこんなに可愛いの!!」

「え! ノ、ノエル姫」

「男ってこんなに可愛い生き物だったのね! あ、でもさっきの“賎しき者共”と戦う秀人も強いっていうか男らしかったし……もう、大好き!」

 そうぎゅうぎゅう、ノエル姫は抱きついてくる。

 もう勘弁してくださいと秀人は思った。

 今現在、ノエル姫の胸が顔に当っているのである。それもむにゅむにゅと。

 大好きと繰り返し言う事にノエル姫は夢中になっていて、秀人のその惨状というか、ご褒美に気づかないのだ。

 正直秀人も、こんな可愛い子にこんな事をされるのって天国だろうかと思った。

 そこで、ノエル姫はようやく秀人に抱きつくのを止めて、

「それで、どうする? 明日のデート」

 そして、ここまでされたのなら、男としてノエル姫のエスコートをすべきと秀人は思った。

 なので正樹に、

「……俺はこの世界の文字が読めるんだよな?」

「そういう翻訳機能は付いているよ。つまり本屋に寄りたいって事か」

「察しが良いな。ノエル姫、俺が、明日のデートコースを決めます。ノエル姫が楽しめるように頑張ります!」

「私のために?」

「はい!」

 ノエル姫がとてもとても嬉しそうな顔をして、秀人に少し恥ずかしそうに微笑んだ。

 やっぱり笑った顔が可愛いなと思いつつ、秀人は馬車が町に着くなり本屋へと飛び込んだのだった。


「なるほど、この建物か。ふむふむ。あ、ここの花が今の時期見ごろだ……」

 ガイドブックを五冊ほど購入し、ついでに傍で売っていたペーパーナイフも買った。

 そして現在、秀人は宿のベットの上で、ペーパーナイフでページを切り分けながら、ぶつぶつと独り言を呟きながら読んでいた。

 夕食を食べた後のこの時間、ずっと秀人は悩んでいた。

 その一方で、正樹がスマホもどきを見て心なしか顔を蒼白にしながら秀人に、

「程々にした方が良いよ」

「……わかっているさ。ここが異世界だって事くらい」

「いやまあ、女の子に追い掛け回されるのも大変だよって話」

「……女の子とそういうイベントがないんじゃなかったのか?」

「……僕にだって好みがあるんだよ。僕は大人しくて清楚な子が好きなんだ。間違っても初対面で、男を捕まえて婿にしようとする女の子は嫌なんだ」

「どうしたんだ急に」

「……なんでもない」

 そのまま黙ってしまう正樹。それを詳しく聞きたい衝動に駆られはしたが、秀人は頑張って自分の好奇心を押さえ込み、

「……ノエル姫とかの武器も含めて、こんなチートっぽいものばかりで良いのか?」

「僕達は勇気と努力では勝てない事を知っているんだ。要は現実主義者だって事さ」

「夢も希望もないな」

「夢見がち過ぎても困るだろう?」

「……やっぱり夢を見るなら物語の中か……でも俺、ノエル姫との今は、凄く幸せだ」

「いいんじゃない? お互いが好き合っているんだし」

「そうだな……所で、正樹ならデートに何処に誘う?」

 それに正樹は少し考えてから、

「共感できる場所かな」

「共感?」

「そう、好きな子が楽しいと思っているのを自分も楽しんで、ついでに好きなこの笑顔が見れる所、かな」

「なるほど。共感できる場所か。でも、ノエル姫って何が好きなんだろうな」

「さああ。基本的に女の子は可愛かったり綺麗だったりするものが好きだから、それを選んだらいいんじゃない?」

「そうか。可愛くて綺麗なもの……お花とかかなやっぱり」

 そう今のをヒントにページをめくる。

 結局三箇所ほど決めて、そのページの端を折り、秀人はその日眠りに付いたのだった。


 次の日の朝も、ノエル姫といちゃいちゃしながら過ごした秀人なのは良いとして。

「今日のデートコースは何処ですか?」

「えっと、まず、ミランダさんの花園……」

「……食べられない花……見るだけの花、綺麗な花、女の子が好きなお花……うう、でもどうだろう。花を見て喜んでいる私ってどうなんだろう……私なんかに似合うのかな……」

「ちなみに花摘み体験もあるみたいですよ。ノエル姫が花を摘んでいる姿とか、俺は見て見たいです」

 美少女が花畑に座って花を摘んだりしている……ノエル姫でイメージすると可愛らしい。

 一方、そう言われたノエル姫は、少し黙って自分に似合わないのではと悩んでから……それでも大好きな秀人が望んでいるし、

「……一応、花輪は作れるから、まあいいか」

「作れるのですか? ノエル姫」

「その程度は。作ってあげようか? 秀人に」

「それなら二つ作ってお揃いにしませんか?」

 好きな彼女とお揃いの物とか、秀人は憧れるから、試しにお願いしてみた。

 そんな秀人のお願いはノエル姫にもとても素敵に思えて、

「……じゃあ、秀人は花を摘むのを手伝ってね」

「はい!」

 面白そうに笑うノエル姫に、元気良く秀人は答える。 

 ちなみにメアは、今回はこの二人をこっそりつけようと思っていた。

 もちろん姫様に秀人が不埒な真似をしないようにである。

 けっしてちょっと秀人に気があるとかそんな理由は多分まったくなく、姫様にお仕えしたいという感情からである。 

 そこで、部屋の中を落ち着きなさげに動き回る正樹に秀人はようやく気づいた。

「どうしたんだ正樹」

「……今日一日、僕はちょっと雲隠れしてくる」

「なんで? 上司からのお叱りとか?」

「……もしどこかで僕の事を聞かれても、秀人は知らないと答えてくれ。というか、何でばれたんだ」

「正樹?」

「じゃあ頼んだ。自体は一刻を争うから!」

 顔を蒼白にして、慌てるように正樹は逃げていった。それを秀人は見送り、

「どうしたんだ一体。……まあいい、では、ノエル姫行きましょうか」

「うん。というか私は知っているのよね……正樹が何で逃げたか。ふふ、行こう、秀人。どうせ正樹は逃げられないだろうし」

「は、はあ」

 何かわけ知り顔のノエル姫に、秀人は首をかしげたのだった。


 ミランダさんの花園に着きました。

 一面に花咲く、赤、青、緑、白、ピンク色、水色の花。

 残念な事に、摘んだものを買ってお持ち帰りする類の花摘みであったらしい。けれど、

「わー、綺麗! それに甘くていい匂いがする!」

「喜んでいただけましたか?」

「うん。この花が素敵かな……あの花にしようかな……秀人はどんな花輪を作って欲しい?」

「そうですね。白とか淡い色の花輪が良いかな」

「分った! じゃあ、その色の花を摘もう!」

 はしゃいで花園を駆けていくノエル姫。

 軽やかに飛び跳ねるその様は、蝶が花の蜜を求めて舞うようにひらひらとして、秀人には可愛らしく目に映る。と、

「もう、秀人も手伝って!」

 頬を膨らませて秀人に言うノエル姫に、秀人は慌てて花を摘む。

 そのまま何輪も摘んで、抱えるくらい沢山の花を持って行き会計を済ます。

 後はそのまま花園の空いているベンチを探してそこに腰掛ける。

「ちょっと持っていてもらえるかな、お花」

 そう手渡された花を抱えていると、一輪ずつノエル姫が取り出して、器用に花を編んでいく。

 小さく微笑を浮かべて、少し頬を赤くして、花を編んでいくノエル姫。

 その細くて白い指の器用さに、秀人はやっぱりノエル姫は自分で女の子っぽくないと言っているが、十分に……。

 そこでノエル姫が、顔を上げて秀人を見た。

「? どうしたの? じっと見て」

「いや、上手く作るなと思って」

「私だってやれば出来る子なの。待ってて、すぐに出来るから」

 ノエル姫は花を編んでいき、言っていた通りにすぐに花輪が出来た。

 それを秀人の頭に乗せて、

「はい、出来上がり! よし、次ぎ行くか!」

 と、また編んでいく。そして秀人の手に一輪の花を残して、全てを使い切って花輪を作り上げる。

「出来たー! ……どうしたの? 秀人」

「その花輪、渡してもらえないか?」

「いいけれど……」

 秀人は出来上がったばかりのノエル姫の花輪をもらい、そしてノエル姫の頭にかぶせる。

 ノエル姫が顔を赤くした。

「な、なんで……」

「作ったのはノエル姫だけれど、俺の分は頭に乗せてくれたじゃないか。だったら俺も、ノエル姫にかぶせても良いんじゃないかと思って……その、理由はそれだけで……ああ、そういえば一輪余っていたな」

 秀人はもう、熱に浮かされたようで自分のいっていることが少し分らなくて、そして調子に乗ってしまっていた。

 だから、残っていた花を一輪取り、ノエル姫の髪にさした。

「うん、やっぱり可愛い」

「……もう、秀人ったら……ぎゅっ」

 ちょっと甘い声で怒って、ノエル姫が秀人にくっついてきて、そのままどちらともなく手を繋ぐ。

 そのまましばし、静かな時が流れるも……。


「た、たすけてえええ」

 そんな正樹の声で、二人は慌てて顔を赤くして手を放したのだった。


 ノエル姫と秀人の前を、一人の女の子に追い掛け回される正樹が走り回っていた。

「もう嫌だ! 諦めてくださいぃぃぃぃぃ!」  

「諦めて欲しかったら私のお嫁さんになりなさい!」

「だから、僕この世界の人間じゃないです! 元の世界が故郷なんです!」

「四六時中一緒にいろなんて言っていないじゃない! まあ、いられるならいたいけれど!」

「やめて……別の恋人探してください!」

「男なら女の子に好かれて嬉しいでしょ! 特に私みたいな美人に!」

「僕にだって好みがあります! 僕は贅沢で、美味しいものしか食べたくないしその逆は嫌なんです! というか、何でここまで追いかけてくるんですか!」

「全ては愛ゆえなの!」

「愛って言えば全てが許されると思うなよおおお、うぎゃあ!」

 そこで正樹は女の子に体当たりされて、そのまま地面に転がった。

 けれどその痛みに呻きながら、必死に正樹はその女の子から逃げようとする。

 そんな正樹に、女の子は舌なめずりをするように唇を舐めて笑う。

 そこで、ノエル姫が、

「ミリーちゃん?」

 そう、女の子らしき名前を呼んだのだった。


 その言葉に振り返った正樹に抱きついている女の子は、ノエル姫を見て、

「あら、ノエルちゃん、お久しぶり。……そういえば勇者様が来たんだって?」

 そこで彼女は秀人の方を見て、ぱあっと、目を輝かせた。

「何だか強い魔力を感じるわ! 貴方も私のお嫁さんにならない!」

「えっと……え?」

「素敵な男性を捕まえるために私は日々努力しているの!」

 その話を聞きながらミリーとやらを秀人は見て、にっこりと微笑む。

 ノエル姫とはまた別のタイプの美少女だ。

 そして彼女にとって正樹は素敵な男性という事になる。

 世の中色々な女の子もいるし、それに綺麗な女の子に好かれるなら別に良いように秀人は思うのだが……。

 というよりも、正樹が贅沢すぎるような気が秀人にはした。

 とはいえ今の発言を聞いていると、二股宣言に聞こえるが……いいのか?。

 そもそも嫁って何だ嫁って。婿だろ? と、秀人は悩む。

 そこで、ノエル姫が焦ったように、

「ひ、秀人は私の恋人なんだから、手を出しちゃ駄目!」

「ええ! ノエルちゃん、恋人が出来たの? うわー、羨ましい……私なんて全然正樹は相手にしてくれないどころか逃げ回りやがるし……」

「……ミリーちゃん、秀人に手を出さないなら私もお手伝いするよ?」

「えっ! 本当? だったらこいつ連れて、何処かのホテルでも……」

「分ったわ! じゃあ私、足を押さえるわね!」

「やめてー!!!!!」

 正樹が涙ながらに叫んでじたばたする。

 それに手伝いにいこうとしているノエル姫を、流石に可哀想に思ったので、

「ノエル姫、流石に正樹が気の毒です」

「なんで? やっぱり愛は素晴らしいいものだと思うの。だからミリーちゃんのお手伝いをしたいの」

「……正樹が嫌がっていますから」

「……嫌よ嫌よも好きのうちだって、ミリーちゃん前に言っていたけれど」

「……えっと、ミリーさん、そういう事されると正樹に余計に嫌われますよ」

 その言葉にミリーがはっとしたように秀人を見て、それから正樹を見て、

「でも、最近の男子って自分から女の子に声をかけられないから、女の子からアタックしないと手に入らないでしょう?」

「……正樹、正論を言われているような気がするんだが」

 それにしばし正樹は考えてから、

「……尻に敷かれて首根っこつかまれそうなんだもん。もっと大人しい子が良いです」

「正樹、女の子が大人しいはずないからね? 大人しく装っているだけなんだから」

 夢の無い説得力の有る発言に、正樹は必死になって抵抗する。

「でもこの世界のどこかで僕を待っていてくれる、大人しくて清楚な女の子がいる気が……ぎゃああああ」

 そこで正樹は、ミリーにぎゅうっと捕まれた。

「いい加減諦めて私のお嫁さんになりなさいよ!」

「嫌だぁあああ」

 正樹がじたばたじたばたしている。  

 それを見ながら、そういえば、異世界人なのでそこそこ魔力が強いはずなので、その力を使って正樹は逃げられるはずだと秀人は気づいた。つまり、

「正樹は、自分から捕まっているんだな」

「本当! だったらそう言ってくれれば良いのに! さあ行きましょう旦那様!」

「秀人の裏切り者おおぉぉ」

「いや、だって、本気になれば振り払えるだろう? 異世界人で正樹だってそこそこ魔力はあるんだろう?」

 そんな秀人の言葉に正樹は少し黙ってから、

「……女の子に暴力はふるえないじゃん。男として、最低だし」

「やっぱり正樹、好きだわぁ! 優しい男って好き!」

「放せえええええええ」

 ミリーは顔を赤くして、嬉しそうに正樹に抱きついた。

反対に正樹は焦ったようにもがいて、けれど心なしか頬が赤い。

 そんなミリーにそういえばと秀人は思い出して、

「所で、俺に嫁になれってどういう意味ですか?」

 その言葉に、ぴたっとミリーは動きをやめて苛立ったように、

「……貴方も私の事、男らしいって言いたいの?」

「え? だってさっき俺に嫁になれって、言っていたじゃないですか」

「だから、お嫁さんだってば」

「お嫁さんですよね?」

「だから、嫁だってば……分らない人ね!」

 そう怒り出すミリーに、秀人は少し考えてから正樹に、

「正樹、嫁と婿の変換が逆になっているみたいなんだが」

「……なるほど。それで、ミリーは嫁って言っていたのか。はあ、もしかして女の子に囲われる羽目になるんじゃないかと僕は不安だったけれど、この可能性はないのか……」

 何処かほっとしたような正樹。

 それにミリーは正樹に向かってにっこりと微笑み、

「別に私は、正樹を囲っても良いけれど?」

「放せぇぇぇえええ」

 正樹がもがいた。

 とはいえ、嫁と婿が逆となると、プロポーズする時、彼女に向かってようは『僕のお婿さんになってください』となるわけである。

 もしかしてというその時にそうなれば、往復ビンタの応酬を受けるのは仕方がない。

 しかもされた男も、どうして彼女がそんな行動に出たのかわからないという……恐るべし、誤変換、そう秀人が考えて、ついでに先ほどの二股発言についても聞いておこうと思った。

 もしかしたら誤変換かもと思って秀人は、

「何で俺にも二股宣言したのですか?」

「うちの国の法律で、女は男三人と結婚できるの。女性の個体数が減っちゃってどうしようもなくて」

「……そうなんですか」

「それにうちは不景気でね。技術の頭打ちなんて言われていたけれど、そんな簡単な問題じゃなかったのよね」

 そう、ミリーが疲れたようにポツリと呟く。

その話に、良い事思いついたというかのように正樹が顔を上げて、

「僕、一夫一婦制が好きなんです!」

「あら、正樹が私の事を最後の女にしてくれたら良くってよ?」

「いやあああ、止めぇええ」

 ふふっと笑って病んだように正樹を見つめるミリー。

 正樹は更に顔を白くしてじたばたしている。

 そしてその話を聞いていて秀人は気づいた。

「ノエル姫、この国は女性は何人でも結婚できるのですか?」

「うちは違うわ。でも、ミリーはそうね。魔族……それも、魔王の娘だから」 

 ノエル姫は、秀人の質問にあっさりとそう答えたのだった。


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