最上階かも
灯った明かりを中に放り込んで、秀人は駆け出した。
それに付いていくように、ノエル姫、メア、ミリー、正樹の順にかけていく。
入った中の通路は大きく、左右に部屋が幾つもあるが、その暗い部屋に明かりを放り込むと何も声しない部屋とする部屋がある。
入ってきた明かりに反応して、“賎しき者共”が声を上げているらしい。
それを確認して、秀人はその部屋に飛び込んで処分していく。
そして暫く繰り返していくと、また大量の“賎しき者共”が現れて、ノエル姫に頼んで矢を撃って貰う。
再び矢が落ちた場所から煙が舞い上がり、今度は巨大化した猫が、“賎しき者共”を踏みつけて蹂躙している。
歩くたびに悲鳴を上げて倒されていく“賎しき者共”だが、それでも漏れてくる相手が居るので、それを秀人が大雑把に倒して、その数匹の取りこぼしをミリーとメアが処理していく。
そのまま一気に突っ切ると、壁に突き当たる。
そしてすぐ傍には上に上がる階段が存在していた。
「正樹、この場所……というか壁の向こうで何か大きな音がするんだが」
「そこは大きな広い空間になっていて、そこで魔法陣の実験をしていたらしい。ただ、そこで秀人達の藁人形の最終工程はやってもらっていたから……それを逃すために吹き飛ばしたときにどの程度、魔方陣も散らばったか分らないんだけれどね」
それを聞いて今度は秀人はミリーの方を向いた。
「この奥の広場から、その大きなものを呼び出そうとしている魔力を感じるのか?」
「……確かにそっちもあるけれど、上の方に変に強いものを感じるわ」
「正樹、ここは何階まであるんだ?」
その問いかけに、正樹は眉を寄せて“賎しき者共”探査レーダーから顔を上げる。
「上に五階かな」
「となると、ミリー、幾つ位上に感じる?」
「最上階かも」
それを聞いて、正樹がミリーが問いかける。
「ミリー、そんなに強い気配を感じる?」
「ええ? あら、正樹、私の事を疑うの?」
「いや……機械の故障かどうか迷っていて。……一万超えたんだ」
その意味を秀人は瞬時に考えて、
「今までは千もいっていなかっただろう?」
「うん、でも突然現れて……」
「じゃあとりあえず、最上階には俺一人で行く。正樹、この明かりってどれくらいもつんだ?」
「数時間は。はじめの魔力で形成されてだんだん小さくなっていくから……」
「じゃあこの明かりの半数を出口まで並べておくから、二十分立っても俺が戻って来れなければ逃げろ」
「でも一万程度じゃ、秀人の敵じゃないんじゃないか?」
「そんな高い数値今まで無かったんだろう? 念には念をって事だ」
そう言って秀人が駆け出す。
一方ミリーがその“賎しき者共”の探査レーダーを覗き込んで、一言。
「今まで計測した事が無いのなら、この値が正しいかどうか分らないんじゃない? 過大評価なら良いけれど、過小評価であったなら……」
「……しまった」
「秀人の判断は正しかったかも。ちょっと様子を見ましょう……もっとも、秀人くらい力があればすぐに戻ってくるわよ、だからノエルちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫」
そう心配そうなノエル姫に、ミリーは付け加え、メアも、
「そうです姫様。彼はきっと大丈夫ですから!」
それにノエル姫は頷いて、不安そうに階段を見上げたのだった。
秀人は流石に五階まで駆け上がると息が切れるなと思って、そもそもそういう風に思っているだけなんだよなと嘆息した。
そのまま奥の方まで明かりを飛ばしていくと、ほんの少し先に黒い塊が見えた。
今までの動物のようなものと違い、どろどろに腐った黒い大きな塊に幾つもの赤い目が付いている。
気色の悪いゲームに出てくるような化け物に、秀人は少し臆しながらも槍を構えて走り出す。
唐突に周辺に幾つもの秀人を包み込むような大きさの炎や雷撃……かと思えば、地面が凍って滑りやすくなる。
それらから身を守る結界のような魔法を、秀人は発動させる。
攻撃してくる魔法は、おそらくはかなり恐ろしいものだとは思うが……それらは秀人の結界の前で容赦なく消えていく。
そのまま槍で突いてやると、確かに穴は開く。
けれど引き抜いた頃にはすぐにくっついてしまうのだ。
「魔法攻撃で吹き飛ばしても良いが……そういえば武器に魔法みたいな効果を付加させるのって無いのか? ゲームみたいに」
そうすいれば切った範囲に魔法を撒き散らせる事になるから、爆風で魔法陣を周辺に放り出す心配は無いだろう。
そう思って秀人は魔法を使う装置に触れる。
だー、と上から検索していき、
『武器への炎の攻撃付加(小):使用している武器での攻撃の際に、武器に炎の効果を付加させて敵へのダメージを追加します』
それを選択する。途端に槍の周辺に炎が渦巻いていく。
その炎の魔法を先端部分に集まるように意識して、そのまま再び先ほどの“賎しき者共”に飛び掛る。
あちらの攻撃が一切秀人のダメージにならないので、秀人は落ち着いてその槍を使い“賎しき者共”を薙ぎ払った。
その過程で石のような物を日でとはなぎ払ったがこの時秀人は特に気にも留めなかった。
悲鳴を“賎しき者共”が上げて、切り裂いた場所から炎が吹き上がる。
もしかしたなら再生が遅れているだけかもしれないので、そのまま容赦なく秀人は“賎しき者共”に攻撃をして、そして完全に動かなくなったの確認してからようやく攻撃をやめた。
「やっぱり魔法攻撃を受けた所は再生しないのか……魔法により、存在が変質するから再生できないのか?」
イメージでいうと、焼いた肉と生肉のような……変質という意味で。
「でもこの方法は結構良いかもしれないな……あれ?」
そこでピシッと、秀人の槍にひびが一筋は入る。
「まさか、今の魔法の副作用か? ……この技は極力使わないようにしよう。武器がもったいない。でも、もうこんなのは現れない……よな?」
自分で呟いてみて、何となくそういうのが現れる気がしながら……そこで秀人はあるものをみつけた。
「石版? でも柄が書いてあって……もしかして、これが魔方陣なんじゃ……」
なので、秀人は、自身の顔が隠れる大きさのその石版を拾い上げて、ノエル姫達の待つ階下へと向かったのだった。
残り四話です。よろしくお願いします。




