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普通の女の子

 ミリーの何時に無く深刻そうな表情に、秀人が、


「どれくらいの大きさなんだ?」

「とても大きいとしか。でも、早めにそのまだ機能している魔方陣をそうにかしないとまずいかも」

「壊すだけで止まら……ないか。そうだな、魔法陣が機能した状態で破片になっても、それは機能し続けるんだったか?」

「そう、だから見つけ次第解除しないとね。魔力が複雑に干渉しあっているのを感じるから」


 それを聞いた正樹が慌ててスマホもどきで連絡を取っていた。

 そんな正樹を見ながらミリーに秀人は、


「でも、魔族は“賎しき者共”が何処から現れるのかも分るのか?」

「距離が近くて、その持っている魔力の量によるわね。そこら中に広範囲に散らばったら私だって分らないわ。既に機能が停止している場合だってあるし」

「なるほど。でも良く分りますね」

「魔族は繊細なの。でも、貴方や正樹が、それが分らないのも不思議よね」

「……きっと藁人形なので、感覚が鈍いのでしょう」

「その割には、正樹、前に私の胸に手が当った時……正確には当ててやったんだけれど、顔を真っ赤にして、『や、柔らかいものを押し付けるな!』って、逃げていって可愛かったのだけれど」


 ミリーの言うその情景が、ありありと目の前に浮かんで秀人は少しだけ正樹が気の毒に思う。

 いや、そういった事に対して、正樹も秀人も健全な男子高校生なので嬉しい事は否定出来ない。

 そしてそれが好意を寄せている相手ならば、嬉しさ累乗である。

 だが、嬉しいとはいえ、そういった事に耐性が無く、物語の中くらいでしか今まで無かった事を鑑みれば、刺激が強すぎるのではないだろうかと秀人は思うわけである。と、


「あら、貴方も同じ意見なの。初心ねー、まあ、正樹のそういう所が美味しそうなのだけれど」


 けれど連絡に忙しい正樹は、ミリーのその発言に気づいておらず、必死に連絡を取っていた。

 その様子を見て、ミリーはしょぼんと肩を落とした。

 どうやら正樹に相手にされないのは悲しいらしい。

 加えて正樹が絡まなければこの人、ただの普通の女の子ではないかと、秀人はミリーの認識を改めた。


「……まあいいわ。多分応援を待っているよりは、まず中に入って“賎しき者共”を少しでも多く処分して、その魔法陣の破片を探しやすいようにしないと」

「解除には時間がかかるのか?」

「数分程度はかかると思う。しかも集中するから、“賎しき者共”の襲撃があると面倒だから」

「分った。……そうなってくると……ノエル姫」


 そこで秀人がノエル姫を呼ぶ。やって欲しい事があったからだ。


「何? 私が手伝える事、ある?」

「ああ、所で弓矢は後どれくらいある?」

「えっと……250かな」

「……猫の矢、そんなにくれたのか、あの人達……100本以下になったら、使うのを止めて欲しい」

「……100本あれば、私の身が守れるだろうから?」

「ああ、ただ事態が事態だから、初めの内は弓で一気に“賎しき者共”を殲滅してそれから漏れたものを俺が叩いていく事にする」

「秀人の魔法で一掃した方が楽なんじゃない? ほら、以前山に穴を開けた……」

「その爆風で、魔法陣の欠片が散らばると回収がやっかいだから、威力を抑えざる終えない。確かにそれを一発でも撃てば、ここは跡形も無く消し去ることが出来るんだけれどな……」

「分った。任せて」

「よろしく。あと、ミリーさんとメアには、取りこぼしの処理をお願いします」


 ミリーとメアは頷き、後は秀人はどうしようかと考える。

 先日メンテナンスを受けたものの、剣ばかりに頼って負荷がかかりすぎてしまったかもしれない。

 そうなると戦闘中に折れてしまう可能性も否定できない。

 となると使っていない、そして当初考えていた槍を使う時が来たか! そう秀人は思う。

 槍であれば、攻撃範囲も広いので取りこぼしか少なくなるかもしれないし、範囲が広い分、対応までの時間を長く出来る。

 素人である秀人だから、その分普通の予想しか出来ない。

 本当にこういった力が無かったらどうなっていたんだろうとぞっとしながら、槍を取り出す。

 それと同じ頃に、正樹が顔を上げた。


「……援軍送っておいてくれるって。ただ先にこっちが先発隊で、ある程度“賎しき者共”を処理しておいてくれって。それと、ミリー姫とノエル姫は至急戻るようにと……」

「「嫌よ」」


 そう口をそろえる二人に、正樹は本当に深々と嘆息して、


「……ただ可及的速やかに行動を起こさないといけない関係上、説得が不可能な状態という現場の判断で連れて行くことになりました……後は自己責任だよ?」

「「はーい」」

 

 元気良く二人のお姫様は答えて、正樹は、ミリーにお礼といって抱き付かれそうになって、逃げ回っていたのだった。






 正樹が、捕まってミリーが抱きついて、それから。


「まずは、あの扉を俺が破壊するから、ノエル姫はすぐにあそこに向かって矢を放って下さい」

「入り口付近に集まっている可能性があるから……分ったわ」

「よろしく」


 そう言って、秀人は槍を取り出して、軽くくるくるまわしてみる。

 以前使用していた剣と同様に、重さに関しては軽く、振り回すには良さそうだ。

 そして、金属の扉が閉じられたそこに、秀人は駆け出す。


しゃっ


 風を切る音と共に、入り口の扉が幾つもの金属片となって重い音を立てて地面に落ちる。

 その入り口から建物の中は暗く、けれど幾つもの赤く爛々と輝く瞳が秀人達を見ていた。

 そこでノエル姫が矢を放つ。

 可愛いネコさんマークの矢が秀人の前に落ちて、以前と同じようにもわもわっと煙が現れ出でて、猫達が現れる。

 けれど今度の猫達は自分の顔に良く似た顔の縫いぐるみのようなものを何処からともなく取り出して、飛び掛ろうとする“賎しき者共”にぶつけ始めた。


にゃあにゃあにゃあにゃあ 

 

 猫の鳴き声の大合唱と共に、“賎しき者共”に猫が次々と投げ入れられて、その度に大きな爆発が起こる。

 一部、魔道研究所の壁がぼろぼろになっていたがそれは仕方がないとして……。

 その猫爆弾?攻撃が何時まで続くんだろうというくらい長い間続き、そこでふっと猫達が消えた。

 全部倒せたかどうか分らないので、少し待って様子を見る。

 けれど幾ら待てども音はしない。


「今ので全滅したらしいな。さて……じゃあ、明かりの魔法かなにか探すか」

 

 秀人は魔法が使える箱を使い、明かりの項目を探す。と、


『明かりの魔法:熱さを感じない、熱エネルギーの無駄となる熱を発生させない究極の光魔法! さあ、君も勇気を出して叫ぶんだ! シャイニーングッゥゥゥウゥウウ……』


 秀人はその説明を途中で読むのを止めて発動させた。

 ふわりと秀人のすぐ傍に光の玉が浮かび上がり、試しに、前へいけと念じると、ひゅんと飛んでいたった。


「頭にライトとか付けたり、懐中電灯を使わないのは便利だな。じゃあついでに……100個くらい作って飛ばしていけば問題ないだろう」


 そう呟くと同時に、秀人の周りにぽぽぽぽと灯りが浮かび上がったのだった。

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