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本望じゃないのか


 それから、カミーユも同行という事で周辺に“賎しき者共”を秀人達は狩続けた。

 “賎しき者共”探査レーダーの巣がどんどん消えていくが、やはり幾つか現れるものもあり、そこら辺を今度調べていこうかという話にもなった。

 ついで、カミーユの言っていたとおり、何故か、その魔法陣の欠片を手に入れていることは異世界貿易会社ゴランノスポンサーは知っており、新たな調べるものが来るぞー、と目を輝かせていたらしい。

 本当に純粋の魔法や技術があの人達好きなんだなと思う、そんな一幕だった。

 そしてメアは、ついでだからと色々雑用を申し付けられて、早くノエル姫の所に戻りたいと王様に泣きついたらしい。

 しかし、じゃあこれをやったら、と新たの仕事を申し付けられてそれが終わってから戻ってくるそうだ。

 一応カミーユから、その魔道研究所へ行く地図はもらったのだが可哀想なので、待っていてあげよう、という話に秀人達はなった。

 更に付け加えるなら、神話の時代かと思うような地図で、正樹がうんうんうなりながら照らし合わせていたら、ミリーがやってきて、酷く鮮明な写真のようなものをくれた。

 どうやら魔族の衛星写真もどきらしい。

 それで何とか場所の特定が出来た。

 本当に魔族ってなんなんだろうと突っ込みを入れたかったが、秀人は黙った。

 この世界にはこの世界のルールがあるのだろう。

 とはいえ目の前でミリーが正樹に抱きつきながら、


「情報をあげたのだから、情報料を頂戴? 正樹の体で」

「ひいいいいいいい」


 悲鳴を上げて逃げていく正樹。それを追いかけるミリー。

 いつもの光景に嘆息しながらその日も、“賎しき者共”を狩りに行ったのだった。






 メアを待つついでに周辺の散策と巣の狩りも行った。

 その“賎しき者共”の種類に、最近色々と種類が増えてきた。

 お陰で秀人は、ご褒美なのだけれど、今はうんうんうなる羽目になっている。

 そこで正樹が部屋に駆け込んできた。


「ひいいい、鍵、かぎっ、かぎー、……よし、助かった……」


 焦ってドアに鍵をかける正樹。そしてすぐにスマホのようなものを取り出して、


「援軍求む。援軍求む。援軍求む。援軍求む。援軍求む。……撤退は許可できない、だと? ふ、ざ、け、る、なぁああああああ。うううう、もう嫌だ。もう……うっうっ」


 なにやら追い詰められたような正樹。

 流石に放っておくのもなんだったので、秀人は声をかけた。


「どうしたんだ正樹」

「秀人……ミリーにホテルに連れ込まれそうになった」

「……いつもの事じゃないか」

「うっかりミリーが可愛いなって思って見てたら、ホテルに連れ込まれそうになったんだぞ!」

「……ごめん。何が問題なのか分らない」


 本人達が愛し合っているというか、ミリーに絆されているから別に良いんじゃないだろうかと秀人は思うが、そこで正樹は沈痛な表情で、


「18歳以下の未成年者がそういう事したら罰せられるんだぞ!」

「……えっと、親の同意云々は別にして、確か、結婚できるのは男は18歳で女は16歳だったか?」

「うん。なのに……うっ、う」

「……要するに、正樹はミリーに絆されかけているのが怖いんだな」

「……はい。というか一人で抱えているのが辛いから、話聞いてくれ」


 あまりにも悲痛な表情で言われて、秀人は仕方がないとうなづいたのだった。






 ホテルに連れ込まれそうになり、正樹はその場から慌てて逃げ出した。


「待ちなさい正樹!」

「待てといって待つわけ無いだろううう、いやだああああ」


 そう叫び声をあげながら逃げ回って、そして気がつけばミリーの姿も見えず、そして声も聞こえなくなる。

 だがやはりどこかに潜んでいる気がして、正樹は警戒するように見回す。


「気のせいか……」


 そう一人呟き、正樹は宿へと歩いていく。

 宿は込み入った路地の中にある。

 しかも人通りがあまり多くは無く、薄暗い細い路地が幾つもある。

 そこを正樹は歩いていったのだが、そこで暗がりから細い手が伸びてきた。


「ええ!」


 普通、女の子に起るパターンじゃ無いのかと思ったら、ミリーだった。

 しかも体のバランスを崩して、正樹は路地で尻餅をついてしまう。

 そしてそんな正樹をミリーは壁に押し付けて、そのまま正樹を跨いで座り逃げられないようにする。

 しかもすぐに薄い光を通す程度の布を自分と正樹にかけた。

 じっと見つめるミリーの顔は真剣で、正樹は胸が高鳴ってしまう。

 そんなミリーが口を開いた。


「私、正樹の事、愛してる」

「あ、うん。知ってる。いつも聞いているから」

「私、正樹の事好きだよ」

「あの、ミリーさん、もしもーし」

「私、一所懸命我慢しているんだよ? 本当は正樹の事が欲しくて欲しくて欲しくて欲しくてたまらないのに、それでも我慢して……ねえ、正樹はいつか私の想いに答えてくれる?」

「えっと、それはですね……」

「私は、期待していい? いつか正樹が私を選んでくれるって。その可能性があるって、信じていい?」

「えっとあの……」

「ホテルに連れ込もうとしたの、いつもよりは連れ込まれてくれたよね。私は、期待していい?」

「う、え……」

「私、正樹の事が好きだよ? 愛してる。でも……正樹は私を拒んでばかり」

 

 そう悲しげな表情で俯くミリーに正樹は、酷く悪い事をしているような、そんな感情を覚えて、


「あの、そういうわけでは……」

「ずっと思い続けるのは辛い。でも、私正樹を諦める事を考えるともっと辛くて……」


 そういうミリーの瞳から、一筋の涙と……てに隠そうとしてる目薬が見えた。

 怖い。

 女って怖いと思いながら、正樹は、


「ミリー、目薬見えているよ」

「……残念ね。ちょっとは絆された?」


 ミリーがペロッと舌を出して、いい加減にしてくれと嘆息する正樹の頬に手を当てた。

 そのまま、ミリーは自身の白く細くて長い指で、正樹の唇をなぞって、


「そろそろ、キスの一つくらい私にしてくれても良いんじゃない?」

「……恋人じゃ無いのに出来ないよ」

「あら、キスすれば恋人なのかしら」

「そうじゃなくて……ミリーはもっと、自分を大切にするべきだ。こんな風に確かに自分からぶつかっていくのは良いけれど……僕みたいな異世界人を選ばなくたって、もっと良い相手が居るだろう!」


 つい声を荒げてしまう正樹に、ミリーは目を丸くして、それから本当に嬉しそうに笑った。


「正樹のそういう真面目な所、私は好きだよ?」

「……ありがとう」


 照れながら、どう答えたら良いのかわからずお礼を言う正樹。

 そんな正樹に、ミリーは今までに無い凶悪な笑みを浮かべて、


「……絶対に貴方を逃がすつもりなんて無いから。覚悟なさい?」

「ひいいいいいいいい」


 その笑みがあまりにも恐ろしくて、けれど鮮やかで、正樹は必死になって逃げてきたのだった。






「ということがありまして、もう僕はどうすれば……」


 そんな事を言われてもどうすれば良いのか秀人は分らなかった。

 どう考えてもミリーは諦める気配はないし。


「……そこまで女性に愛されるなら本望じゃないのか? 男として」

「人事のように言うな! うう。じゃあ参考までにノエル姫との付き合い方とか教えてというか……何に悩んでいたんだ? 入ってきたとき秀人は頭を抱えていたけれど」

「……思い出させないでくれ」

「……僕も恥ずかしい話を聞いてもらったんだから秀人のにも相談に乗るよ!」


 野次馬根性丸出しの正樹に、秀人は嘆息して、ポツリポツリと話し始めたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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